チーム2位の試合出場数

2年目の今季、打撃は前年並みの数字を残した渡部
西武・
渡部聖弥が「三塁手」として2年目の飛躍を遂げている。
ルーキーイヤーの昨年は2度の故障離脱があり、109試合で110安打、打率.259、12本塁打、43打点をマーク。三塁手にコンバートされた今季は3度の故障がありながら、シーズン2試合を残して127試合に出場し、121安打、打率.255、12本塁打、48打点を記録している。127試合は
カナリオの131試合に次ぐチーム2位。故障を抱えながらも、チームの中心選手としてシーズンを戦い続けている。
「ケガもあったんですけど、1年間戦い抜かないと話にならない世界なので。(故障をしても)早期に復帰して、なんとかチームに貢献できているかなとは思っています」
数字だけを見れば、昨年から大きく変わったわけではない。だが今季は、三塁へのコンバートによって、守備面で試行錯誤を続けた1年でもあった。
「考えることが多いですよね。レフトだと、ある程度やることが分かっている。ただ、サードは自分の思考じゃ追いつかないことがある。例えば走者が二塁にいるとき、無死、一死、二死で打球が飛んできたら、それぞれ自分が行くのか、ショートに任せてベースに戻るのかを判断しないといけない。また、打者が右か左か、打者走者の足が速いかによって、ポジショニングや判断も変わる。いろんなパターンがあるので、考えながらやるところが大変ですね」
外野とは違い、三塁は一つの打球に対して瞬時にさまざまな判断を求められる。走者の位置、アウトカウント、打者の左右、走者の走力などを頭に入れ、打球への反応と同時に次のプレーを選択しなければならない。渡部自身も、まだ課題は多いと感じている。
「細かいミスが多いですし、自分の中では全然できていないと思っています。感情が前に出てしまうプレーもあるので、もっと冷静な判断ができたら、プレーの幅が広がっていくと思う」
指摘された「しっかりステップを踏むこと」

シーズン当初から送球ミスは徐々に減っていった
その中で、今季大きな変化につながったのが送球面だった。担当する
黒田哲史内野守備・走塁コーチから繰り返し指摘されたのは、「しっかりステップを踏むこと」だった。
「シーズン始めは、捕球しても体勢が悪くて暴投が多かった。捕って余裕があるのに暴投してしまったり、ショートバウンドを投げたりして、凡ミスが多かったんです。でも、口酸っぱく『ステップをしっかり。走らずに投げろ』と言われて、そこから送球ミスはほとんどなくなりました」
黒田コーチは、これは渡部に限った話ではないと説明する。
「どんな野手でも、足が合わなかったり、足を使わなかったりすると暴投になるケースが多い。暴投を投げないためには、いいステップをしなければいけないし、そのためにはいいバウンドで捕らなきゃいけない。守備は全部がつながっている」
捕球、ステップ、送球。その一つひとつを一連の動作として身につけることが、三塁手としての基礎につながる。
求められる瞬時の判断力
コンバート1年目の評価について、黒田コーチは「今年はケガも多かったし、右手親指骨折など大きなケガをしながら試合に出てくれた。その中で結果も出してくれたのは評価していい」と話す。
一方で、まだ経験を積む必要がある部分もある。
「捕る、投げるに関しては、思った以上によくやってくれている。ただ、試合中の応用にはまだついてこられない。そこは経験して克服していくしかない」
その一例が、後半戦のあるプレーだった。三塁に走者がいる場面でレフトに飛球が上がり、バックホームしても間に合わないタイミングだったにもかかわらず、カットに入り、ホームへ送球してしまった。
「フライが上がっている間に、『このタイミングだとホームは無理だな』と判断するのは経験。そういう応用までできることが、これからの課題」
打球を捕って投げる。そこまでは技術として身につけられる。だが三塁手には、その一瞬の間に「どこへ投げるべきか」を判断する力も求められる。
渡部にとって今季は、三塁手としての土台を築いた1年だった。故障を乗り越えながら127試合に出場し、チーム2位の出場数を記録。守備の基本を身につけた一方で、状況に応じた判断という新たな課題も見えた。
打撃では昨年とほぼ同等の数字を残している。そこに三塁手としての経験を積み重ね、守備での判断力と対応力を身につければ、三塁手・渡部聖弥の価値はさらに高まっていく。2年目の今季は、その確かな土台を築いたシーズンだった。
文=伊藤順一 写真=BBM