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【社会人野球】ミスターアマチュア野球・杉浦正則氏が侍ジャパン社会人代表監督として期待される手腕とは何か

 

オールプロにオールアマが互角の勝負


侍ジャパン社会人日本代表の新監督に杉浦正則氏[左]が就任する。アジア競技大会でもアドバイザーを務め、川口監督[右]をバックアップした[写真=BBM]


 国際大会を勝ち抜くためには、何が必要か。1992年のバルセロナ五輪(初の正式競技)で銅メダルに導いた山中正竹監督(全日本野球協会会長)は当時、常々、代表メンバーの前でこう話していたという。

「何があっても、驚いてはいけない」

 つまり、すべて「想定内」で行動するということである。海外での国際試合は、トラブルが付きもの。練習会場の突然のキャンセル、または場所の変更、移動バスが来ない、ウォーミングアップなしでのプレーボール、試合会場の整備が行き届いていない、試合開始時間の前倒し、後ろ倒し。ユニフォームを脱いだ後も環境が整っていない宿舎、日本人の口には合わない食事など、さまざまなアクシデントに直面する。日本が「スタンダード」と考えると、大きなズレが生じる。イレギュラーに対応できない選手は、コンディションの調整が難しくなり、野球どころではなくなる。ただ、勝負の世界に身を置いている以上、言い訳はできない。厳しい見方をすれば、日の丸を背負う資格はない、という判断になる。

 アジア競技大会で侍ジャパン社会人代表は銀メダルを獲得した。説明するまでもなくオールアマチュア。一方でライバルの韓国はオールプロ、台湾もプロ選手を加えてメンバー編成してきた。スーパーラウンドでは韓国、台湾に連勝し、1位で決勝進出を決めた。32年ぶりの金メダルを目指した決勝は惜敗(1対3)。プロの威信をかけて戦った韓国が、大会5連覇を遂げた。

 最後は「オールプロ」の意地に屈する形となったが、社会人代表は怯むことなく、ゲームセットまで、真っ向勝負を挑んだ。結果がすべて、は極論であり、今大会を通じて川口朋保監督が口にしていた「社会人野球の価値を高める」使命は果たしたと言っていい。

最高の教訓となった6試合


 かつての全日本チームは、社会人選手が主体だった。1999年のシドニー五輪アジア予選でプロ・アマ合同チームが結成。2000年の本大会もプロ・アマ合同で臨み、04年のアテネ大会以降はオールプロで挑んでいる。06年には第1回WBCが開催。プロの世界一を決める大会は今年3月で第6回を数える。社会人のフル代表は、4年に1度開催のアジア競技大会が国際大会の最高峰として位置づけられている(2年に1度、開催されるU-23W杯も社会人代表で編成)。

 今大会は日本開催。本来はホームアドバンテージのはずだが、すべてが恩恵にあずかったわけではない。条件は同じとはいえ、悪天候でのゲームを余儀なくされた。これも、国際大会の常だが、原則的に予備日は設定されておらず、大会期日内に消化しなければならない。また、今回は試合会場と宿舎の長時間移動にも直面した。ストレスが蓄積してもおかしくない状況も、選手たちは不満を漏らすことはなかった。川口監督は韓国とのスーパーラウンドでの勝利後、こともなげに言った。

「今日は天候、グラウンドコンディションがあまり良くなかったですけど、そういう状況でも、社会人野球は試合がある。慣れというのもある」

 試合に向けた基本的な心構えとして、相手チーム、審判員をリスペクトする。試合ではカバーリング、バックアップ、全力疾走の徹底。そして、1球への執念。常日頃から負ければ終わり、トーナメントの一発勝負を展開している社会人野球の結集力を、今大会であらためて示した。高い技術のある集団であるからこそ、微差が大差、つまり勝敗を分けるのは、最後は気持ちの勝負である。侍ジャパンにおける他のカテゴリーでも、社会人野球から学ぶことはたくさんある。侍ジャパンの各世代がさらなる強化を図る上で、アジア競技大会での計6試合は、最高の教訓となったはずだ。

国際大会の厳しさを知り尽くす


第20回アジア競技大会で日本は銀メダルを獲得した[写真=高野徹]


 10月1日、新たな侍ジャパン社会人日本代表監督として、杉浦正則氏の就任が発表された。92年のバルセロナ(銅メダル)、96年のアトランタ(銀メダル)、00年のシドニー(4位)と3大会連続での五輪出場。94年の広島アジア大会では金メダルを獲得している。日本生命のエースとしては92、97年の都市対抗優勝へと導き、MVPにあたる橋戸賞を受賞した。

「ミスターアマチュア野球」「ミスター社会人野球」と呼ばれた杉浦氏は日本選手団の主将を務めた00年のシドニー五輪では、野球日本代表の主将も担い、アマチュアとプロの橋渡し役を担った。01〜04年は日本生命コーチ、06〜09年同監督 (都市対抗出場4回、社会人野球日本選手権出場4回)、15〜18年は侍ジャパン社会人日本代表コーチ、24〜26年は侍ジャパン社会人日本代表アドバイザーを歴任してきた。国際大会の厳しさを、知り尽くしている。日本代表としてのプライドを背負ってきた。川口監督が地道に築き上げてきた「社会人野球の価値」をさらに高めるべく、杉浦新監督の手腕が期待される。

取材・文=岡本朋祐
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