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【世界少年野球推進財団】関東聾学校中学部野球大会に参加した子どもたちを対象に野球教室を開催

 

野球には「人と人をつなぐ」力がある


講師を務めた五十嵐氏の実戦的な指導に、子どもたちは吸収しようと、真剣な表情で向き合った[写真=BBM]


「WCBFみんなの野球教室」が10月1日、東京都葛飾区の奥戸総合スポーツセンター野球場で行われた。王貞治氏(ソフトバンク球団会長)が理事長を務める世界少年野球推進財団(WCBF)は国籍・性別・年齢の壁を越えた国際交流事業を通じて、野球の持つ「人と人をつなぐ」ことをモットーに活動を展開している。

 1990年から毎年夏「正しい野球の普及・発展」と「世界の子どもたちの友情と親善の輪を広げる」を目的とした世界少年野球大会を開催。WCBFは日本とアメリカのホームラン王である王氏と故ハンク・アーロン氏の提唱により創設された。今夏は千葉県成田市で第32回大会が行われ、来年夏の第33回大会は新潟県南魚沼市で行われる。

 同財団では世界少年野球大会のほかにも、全国各地で野球の振興・普及を目的とした野球教室を開催。今回は新たな取り組みとして、第55回関東聾学校中学部野球大会に参加する選手を対象とした野球教室が行われた。この日は同球場で同大会決勝が行われ、東京都立中央ろう学校が東京都立葛飾ろう学校を8対6で下して優勝。野球教室は決勝後、2校のほか約50人の中学生が参加。講師は緒方耕一氏(元巨人)、五十嵐亮太氏(元ヤクルトほか)が務めた。

「できた」という成功体験


緒方氏は大きなジェスチャーで分かりやすく、参加した子どもたちに技術を伝えた[写真=BBM]


 主催したWCBFは開催の目的をこう記している。

「障害の有無にかかわらず、誰もが同じフィールドに立ち、スポーツの楽しさや仲間と協力する喜びを体感できる機会の創出を目指します。本事業を通じて、子どもたちが基本技術をさらに磨き『できた』という成功体験を積み重ねることで自信を育み、競技への意欲や仲間とのつながりをより深めるきっかけになることを目指します。また、本教室を継続的に実施することで、障害のある子どもたちがより高いレベルでスポーツに親しみ、競技力の向上を図る機会を広げるとともに、共生社会の実現に寄与してまいります」

 開校式の後、ウォーミングアップを兼ねた「走塁」からプログラムがスタートした。緒方氏は巨人で2度の盗塁王を獲得した足のスペシャリスト。まずは、走り方の基本を指導し、盗塁のスタートの切り方を両足の置き方、体の使い方の順番を丁寧に伝えた。打撃、守備と移り、投げ方ではMLBでも活躍した五十嵐氏が体重移動を細部まで指導。投球・捕球・打撃などの基本動作を再確認し、競技力の向上につながる約2時間であった。講師2人の隣には手話を担当する先生が控え、子どもたちの集中している目が印象的だった。そして、明るく、楽しく、純粋に野球と向き合っている姿は、微笑ましい光景だった。


向上心と吸収力に驚愕


巨人で盗塁王2度受賞の緒方氏は5.5歩のリードを実際に披露し、スチールのスタートの切り方を指導した[写真=BBM]


 全メニュー終了後は子どもたちによる質問タイム。緒方氏と五十嵐氏は自身のプロ野球での経験を基に、分かりやすく答えた。講師2人は野球教室後に感想を述べている。

「子どもたちは素直で、私たちが伝えたことをすぐに実践するので、教えがいがあると言いますか、充実感のある時間でした。こちらが指導したい内容をすぐに理解し、その吸収力には驚かされました。今回の野球教室をきっかけに、何かコツをつかんで、さらに成長してくれると期待していますし、私たちとしても、楽しみが増えたような気がします」(緒方氏)

「聴覚に障害があるからこそ、強さを兼ね備えているというか、新たなことに挑戦しようという向上心を感じました。 理解しようとする力、私たちが言っていることを感じて、実践してみようという姿勢に研ぎ澄まされている子どもたち。緒方さんも言われたように『吸収してやるんだ』という気持ちが強いので、皆、すぐに上手くなるんです。表情からも上達したいという思いが伝わってきたので、やりがいがありました。冒頭で話したとおり、子どもたちには強さがあり、私自身も刺激になりました」(五十嵐氏)

野球を通じて広げる輪


速球派投手としてNPB、MLBで活躍した五十嵐氏は熱血指導を展開した[写真=BBM]


 この日はWCBF・王理恵評議員が主催者として視察した。成果についてこう語っている。

「世界少年野球大会を含め、さまざまな野球教室を見てきているんですけど、今回も野球の素晴らしさをあらためて感じました。初めて聴覚に障害のある子どもたちを対象とした野球教室を実施したんですけど、野球には無限の力があり、子どもたちの野球が好きという思いで、これだけ楽しそうにやってくれている。素晴らしい講師から習う機会もなかなかないと思いますので、今日学んだことを明日以降の練習に生かしてほしいと思います。開校式前の打ち合わせで講師のお二人と『どうやって伝えたら良いんだろう』という話をしたんですが、手話の方がうまく伝達していただきましたし、不都合なく、スムーズに進行できました。『みんなの野球教室』というタイトルが付いているように、誰もが参加できるこうした機会をWCBFとして創出し、野球を通じたこの輪をどんどん広げていきたいと思います」

 WCBFの事業について熱く語った。

「WCBFというものを知らない方もたくさんいらっしゃると思うので、こうした活動もしつつ、私もSNS等で発信し、まずは私たちの活動を知っていただいて、応援していただいたり、参加していただいたり、その輪を広げていきたいと思います。1回参加してくださった方は、この素晴らしさを肌で感じ、皆さんにも伝えてくださると思うので、多くの方に認知していただけるように、これからも努力してまいりたいと思っています」

野球への「恩返し」を継続する意義


野球教室後は集合写真。子どもたちにとって思い出に残る1日となった[写真=BBM]


 昨夏の秋田大会に続き、今夏の成田大会にスペシャルゲストとして参加したソフトバンク・城島健司CBOは、王理事長が1990年から開催してきた世界少年野球大会を継続していくことが「使命」であると語っていた。王理事長の次女である王評議員も、思いは同じである。

「福岡ソフトバンクホークスにおける父というのは、城島さんもよく分かってくださっていると思うんですが、もう一つのWCBFでの『王貞治』というものを見ていただき、そう言ってくださっているので、本当に心強いです。父にとって、野球はすべて。野球への恩返しを考えたときに、WCBFは父のライフワークそのものなんです。 だから、これは絶対に続けていきたいです。こうした野球教室も微力ながら、役に立てたらなと思っています」

 野球は「人と人をつなぐ」ことが、あらためて証明された。世界少年野球推進財団は今後も、子どもたちに野球の素晴らしさを伝えていくことを目的に、健全育成にも寄与していく。

取材・文=岡本朋祐
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