魂を込めた34球

法大・助川は3点リードの9回表を三者凡退で斬ると、こん身のガッツポーズを見せた[写真=矢野寿明]
▽東京六大学リーグ戦第4週(10月4日)
法大5-2慶大(1勝1敗)
切り札の投入である。一塁ベンチの法大・
大島公一監督に迷いはなかった。前日の慶大1回戦を落としており、連敗は是が非でも回避しなければならない。
法大は1点を追う7回裏に逆転し、8回表からは右腕エース・助川太志(4年・茗渓学園高)を四番手のマウンドに送り込んだ。1回戦では先発して7回1失点で、103球を投じていた。
「監督からは8、9回に行くと言われていたんですけど、自分の中でちょっと前倒しになる可能性も考えながら、5回から軽く作って、7回ぐらいからピンチになったら行けるような準備をしていました。朝起きた時はある程度の張り感はあったんですけど、しっかりと準備すれば全然動けるような状態だったので、そこは自信を持って調整してきました」
この2回戦は先発の富田櫂成(帝京可児高)から秋田康介(大分舞鶴高)、菊地斗夢(旭川北高)と、1年生投手3人がつないできたバ
トンである。助川には、最上級生の意地があった。
ところが、いきなり出鼻をくじかれた。四番・中塚遥翔(3年・智弁和歌山高)に初球をとらえられ、右二塁打。「焦りました」。一死三塁から林純司(3年・報徳学園高)の左二塁打で追いつかれた。次打者・吉野太陽(4年・慶應義塾高)にも右前打を許し、さらに二盗もあり、一死二、三塁のピンチ。ここでギアが入った。後続2人を得意のスライダーで、三振に斬ったのだ。
「最後の2人に投げたような投球を、本来は最初からやらないといけない部分ではあったんですけど、ピンチの場面で自分の形を取り戻せたのは、不幸中の幸いという感じです」
気迫が打線に乗り移った。8回裏に代打・
只石貫太(2年・広陵高)の2点適時打で勝ち越し、なおも、代打・吉田大吾(2年・星稜高)の犠飛で加点。3点の援護をもらった助川は9回表を三者凡退で抑え、1勝1敗のタイとした。魂を込めた34球の救援登板だった。
4年生投手の代表として

助川[左]は勝ち越し打を放った2年生・只石[右]とともにポーズ。助川は今季2勝目、只石は2打点だった[写真=矢野寿明]
この日、法大は7投手がベンチ入り。学年の内訳は4年生1人、3年生1人、2年生1人、1年生4人。助川には先輩として、特別な思いがあった。
「自分たちの代はピッチャーがたくさんいるんですけど(12人)、故障に苦しんでいる選手が多いんです。そういうピッチャー全員の気持ちを背負って、自分はベンチ入りして投げています。4年生のピッチャーとして、恥じないような投球をこれからしていかないといけない」
高校時代は軟式野球部でプレー。一般入試で法大に入学し、いくつかの段階を経て野球部に入部した。甲子園経験者やスポーツ推薦組との競争を経て這い上がってきた努力の男だけに、その発言には説得力がある。大島監督が助川に託したくなる気持ちも十分、理解できる。
法大は5日に勝ち点をかけた慶大3回戦、7日には雨天中止の未消化分の立大3回戦(法大の1勝1分)が控える。さらに、10日からは第5週の明大戦と過密スケジュールが続く。現在、法大は早大との開幕カードでマークした勝ち点1。2020年春以来の天皇杯奪還を目指す上で慶大3回戦、立大3回戦は大きなポイントになる。まさしく、正念場を迎えている。
取材・文=岡本朋祐