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【世界少年野球推進財団】障がいのある子どもたちを対象とした野球教室開催の意義

 

元プロ2人の講師が熱血指導


関東聾学校体育連盟会長で東京都立中央ろう学校・金子猛校長は今回の野球教室開催の経緯を語った[写真=BBM]


「WCBFみんなの野球教室」が10月1日、東京都葛飾区の奥戸スポーツセンター野球場で行われた。王貞治氏(ソフトバンク球団会長)が理事長を務める世界少年野球推進財団(WCBF)は国籍・性別・年齢の壁を越えた国際交流事業を通じて、野球の持つ「人と人をつなぐ」ことをモットーに、さまざまな活動を展開している。

 同財団では今夏で32回を数える世界少年野球大会(来年夏の第33回大会は新潟県南魚沼市で開催)のほか、全国各地で野球の振興・普及を目的とした野球教室を行っている。今回は新たに障がいのある子どもたちを対象とした野球教室として企画。第56回関東聾学校中学部野球大会に参加する選手を対象とした野球教室が開かれた。この日は同球場で同大会決勝が行われ、東京都立中央ろう学校が東京都立葛飾ろう学校を8対6で下して優勝。野球教室には決勝後、2校を含む約50人の中学生が参加し、講師は緒方耕一氏(元巨人)、五十嵐亮太氏(元ヤクルトほか)が務めた。

聴力の障害による野球への影響


野球教室当日は第56回関東聾学校中学部野球大会の決勝が行われ、東京都立中央ろう学校が東京都立葛飾ろう学校を8対6で下して優勝した[写真=BBM]


 走塁、打撃、守備、投げ方を指導。基本動作を再確認し、競技力の向上につながる約2時間だった。講師2人の隣には手話を担当する先生が控え、笑顔が絶えない、明るく、楽しく、純粋に野球と向き合う姿は、微笑ましい光景だった。関東聾学校体育連盟会長で東京都立中央ろう学校・金子猛校長は今回の野球教室開催の経緯を語る。

「今年3月、世界少年野球財団さんが東京都町田市にある私立の聾学校であるライシャワー学園さんで野球教室を開催した縁で、実現しました。ライシャワー学園さんは関東聾学校中学部野球大会に参加した合同チームの1校。今大会は3チームの出場でした。5校の合同チームと葛飾ろう学校が1回戦で対戦し、勝者の葛飾ろう学校が本日、中央ろう学校と決勝を戦ったという形になります。本来は7イニング制ですが、3点を追う中央ろう学校が4回裏に5点を挙げ、1時間半という時間制限があるので、そこで試合終了となりました。全国規模での聾学校の野球大会というのはなく、また、それぞれの学校の人数、規模も縮小していて、単独でチームが組めない学校も出てきているのが現状です」

 実際、聴力に障害があると、野球のプレーにどれだけの影響が出てくるのか。金子校長はかつて、大田ろう学校の高等部で顧問の経験がある。

「例えば飛球が上がって、キャッチするときに、2人で声の掛け合いができないので、ジェスチャーなどの工夫が必要になります。また、相手チームの走者がスチールを仕掛けた際も音声による指示ができませんので、けん制の部分で少しハンディがあります。今回優勝した中央ろう学校は中体連の試合にも参加しますし、健常の中学生とも練習試合をします。見ていると若干、声をかけても指示が通らず、やや遅れてしまう部分はありますが、それ以外、打ったり投げたり、走ったりというのは健聴者と同様にできます。もちろん試合で勝つこともあります。彼らの中で、できることを全力でプレーしています」

 約2時間の野球教室の感想を聞いた。

「生徒たちは今日という日を大変、楽しみにしていました。貴重な機会をいただきました。聴覚に障害があるけれども、スポーツ、運動とかはまったく普通で、音声によるコミュニケーションが困難なだけで、あとは普通に野球も大好きな生徒たち。本当にありがたい場でした」

 講師の話に対して、真剣な表情が印象的だった。

「生徒たちは、目を輝かせながら聞いていましたね。普段の授業でもそうですけども、音声によるおしゃべりでうるさいという状態はほぼないんです。生徒たちのやり取りも手話が中心なので、普段の会話も含めて、視覚に頼るところが大きいです。一途な目で見るような視線。授業の様子も皆、こんな感じです」

共生社会の実現に寄与


講師の言葉に対して、真剣な表情で吸収する中学生の姿勢が印象的だった[写真=BBM]


 東京都立中央ろう学校の主将・天堂蒼太郎(3年)に感想を聞いた。

「元プロ選手に教えていただく機会は限られていますし、これまで疑問に思っていたことを質問でき、有意義な場でした。緒方さん、五十嵐さんも具体的に教えていただいたので、技術向上を目指す上での取り組み方についても理解を深めることができ、今後の活動に向けてもプラスになることばかりでした。自分の世界観が広がった気がします。自分の定位置はセンターなんですけど、ポジショニングや動き方が重要で、今回は多くを学ぶことができ、自分のプレーに生かしていきたいと思っています。今後は東京都立中央ろう学校の高等部に進学して、高校野球というステージで、今までの練習の成果を発揮していきたいと思っています」

 今回の野球教室の主催者であるWCBFの開催趣旨には、こう示されていた。

「障害の有無にかかわらず、誰もが同じフィールドに立ち、スポーツの楽しさや仲間と協力する喜びを体感できる機会の創出を目指します。本教室を継続的に実施することで、障害のある子どもたちがより高いレベルでスポーツに親しみ、競技力の向上を図る機会を広げるとともに、共生社会の実現に寄与してまいります」。目的を実現させる貴重な場となった。

取材・文=岡本朋祐
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