勝利を呼び込む左腕の熱投

どんな場面でもマウンドに上がり、熱い投球を見せる助っ人左腕だ
球団史上8度目のリーグ優勝を飾った
阪神だが、9月は7連敗を喫するなど苦しんだ。2位の
巨人が追い上げてくるなか、ターニングポイントになる試合が9月22日の
ヤクルト戦(神宮)だった。
この試合で阪神は2回までに6得点を奪ったが、最大4点のリードを守り切れず延長戦へ。同点の延長10回一死一、二塁のピンチで
ラファエル・ドリスが緊急降板したため、急遽登板したのが、
アンダーソン・セベリーノだった。2ボールからのスタートで
岩田幸宏に四球を与えたが、
田中陽翔を外角低めのスライダーで空振り三振に仕留めると、
鈴木叶を156キロの直球で空振りを奪って三球三振に。魂のこもった12球でサヨナラ負けの危機を乗り切り、ド派手なガッツポーズと雄叫びを上げた。直後の延長11回に
高寺望夢が決勝2ランを放ち、9対7で粘るヤクルトを振り切った。勝利を呼び込む左腕の熱投が話題になり、阪神ファンの心をつかんだ。
昨年は抜群の安定感を誇った救援陣だったが、今年は誤算が相次いだ。
石井大智が春季キャンプ中に故障で長期離脱し、
及川雅貴の状態が上がってこない。新外国人右腕の
ダウリ・モレッタ、
桐敷拓馬はファーム調整が続き、
湯浅京己も交流戦期間中に右足首を捻挫して戦列を離れていた。球団はこの事態を受けて即戦力リリーバーの緊急補強に動き、白羽の矢を立てたのがセベリーノだった。
6月下旬、阪神入団発表
ドミニカ共和国出身の左腕は2013年に
ヤンキースと契約してプロ入り。20年にホワイトソックスとマイナー契約を結び、22年にメジャーデビューを飾った。メジャー通算6試合で0勝0敗、防御率6.14で、マイナーは通算182試合登板で17勝21敗10セーブ、防御率4.34。今季はメッツ傘下3Aで18試合登板し、2勝0敗5セーブ、防御率1.31の好成績を残していたが、現地時間5月30日にメッツからDFAとなり、メジャー登録40人枠から外れていた。
異国の地から獲得のオファーが届き、期するものがあっただろう。6月29日に阪神入団が決まった際に、「私の人生の新しい章の始まりがとても待ち遠しいです。素晴らしいファンの皆さんの前でプレーし、素晴らしい日本の文化にも触れ、昨年に続いての優勝を勝ち取るために、全力でプレーします。アリガトウゴザイマス!!」と球団を通じてコメントした。
7月中旬から一軍に合流すると、ビハインドの場面で登板機会が多かったが、最速158キロの直球とスライダーの2つの球種で打者をねじ伏せた。21試合登板で1勝0敗2ホールド、防御率2.53。160キロを超える直球を武器にシーズン途中に抑えに抜擢された
工藤泰成、セットアッパーの
木下里都に比べると地味な役回りだが、チームにとっては大切な存在だ。
勝ちパターン以外の重要性
阪神は05年にリーグ優勝を飾った際、
藤川球児(現阪神一軍監督)、
久保田智之(現阪神ファーム投手チーフコーチ)、
ジェフ・ウィリアムス(現阪神中米スカウト)と強力なリリーバーで形成する勝利の方程式「JFK」が話題になったが、当時の
岡田彰布元監督は他のリリーバーの重要性を週刊ベースボールのコラムで強調していた。
「あの当時、JFKは革命的なんて表現もされたけど、確かに強力な3人やったし、あの3人に任せれば勝ちの展開を確実に取れたもんな。でも、それだけでは優勝できない。負けの展開や競っている展開で、いかに勝ちを拾えるか。拾った数字が優勝に反映するわけで、前もここで話したけど、05年にはJFKの裏にSHEがいたわけよ。Sが
桟原将司、Hが
橋本健太郎、Eが
江草仁貴。この3人が何とか粘って投げてくれて、競り合いをモノにできた。この勝ちと負けの差は、非常に意味あるもので、彼らは目立たなかったけど、リリーバーとしての役割、仕事をしっかりと果たしてくれた。そしてリリーバーの価値を高めた……という存在やったと思い返すよね。昨今の野球は、やはり後ろの強いチームが有利よ。そこがしっかりしているチームが上にいるし、そういう方程式は今後も変わらないと見ている」
CS、日本シリーズと戦いが続く中で、セベリーノは短期決戦でも試合の重要なポイントで登板することが予想される。来季の去就が注目されるが、今はチームを日本一に導くことに全神経を集中させる。
写真=BBM