「フリーアップ」で見た自己管理能力

明大・為永は早大3回戦の7回に同点タイムリー。一塁ベース上では淡々としていた[写真=矢野寿明]
この春の東京六大学リーグ戦は雨天順延がなかったが、秋は悪天候が続き、計5日間の中止に見舞われ、2カード(第2週の立大-法大3回戦、第3週の明大-早大3回戦)が積み残しになるという事態になった。第4週を終えた後、この2試合を消化し、ようやく通常の日程に戻った。第4週終了時点で、打率.438(16打数7安打)でトップに立つのは明大の1年生・
為永皓(横浜高)である。
「(首位打者は)あまり意識はしていないです」
1勝1敗で勝ち点をかけた早大3回戦(10月6日)の朝。神宮球場の外周でウォーミングアップしている為永の姿を見かけた。この日の明大の試合前の打撃練習は早大の後。球場入りするまでの時間は「フリーアップ」であり、調整は各自に任されていた。為永は体のキレを生むためのメニューを、黙々とこなしていた。1年生とは思えない自己管理能力の高さが印象的だった。通りかかった際には「おはようございます!」と気持ちの良いあいさつ。大一番を前にしてもバタバタせず、心身の安定が見受けられ、ゲームでの活躍を予感した。
「基本は高校までやってきたのをプラス、また大学で上乗せして練習をやっています。日々の練習をただやるだけではなくて、しっかり考えて、取り組んでいるのが、結果として出ているかなと思います。(守備についても)ただ守るだけではなくて、投手が投げるコース、打者の傾向で打球を想定して、次のプレーまでを想像して守っています」
天性のバットコントロール
早大3回戦。2点を追う明大は7回表二死満塁、為永が叩きつけた打球が先発・
高橋煌稀(3年・仙台育英)の横を襲い、二遊間をしぶとく抜けていった。気持ちが乗り移った打席で、値千金の同点2点タイムリーとなった。3回表の第1打席では、高橋の投じた威力あるボールをジャストミートしての右前打。5回表の第2打席は変化球を遊直も、バットコントロールの良さを見せた。どのコース、球種も対応してくる「恐怖の七番打者」である。しかし、明大は8回裏に
徳丸快晴(2年・大阪桐蔭)の2ランで勝ち越し(2対4)を許し、勝ち点を落とした。
試合後、為永は指名選手として、会見スペースに呼ばれたが終始、悔しそうな表情をしていた。適時打については「とにかく、こういう場面で打つために練習してきたので、あの場面は絶対、打てるという気持ちで立ちました」と答えた。今春の1回戦では、高橋から2ランを放っていた。「高橋さんは好投手なので、相性が良いとは思ってないですが、何とかああいうチャンスで打てて良かったなと思います」と淡々と答えた。
明大・戸塚俊美監督は為永について「本当に1年生にしては落ち着いてプレーしていてびっくりです。頼りになる選手です」と評価。すでに、中心選手の一人として認めている。
3人が目指す「通算100安打」

コース、球種にかかわらず、バットコントロールに優れている。写真は早大3回戦の7回に同点タイムリー[写真=矢野寿明]
名門・横浜高では3年春のセンバツ甲子園優勝、同夏は甲子園8強進出と大舞台を踏んできた。早大にはチームメートだった中堅手・
阿部葉太がおり、第5週で対戦する法大には遊撃手・奥村凌大が在籍している。2人もすでにレギュラーとして出場しており、為永にとって大きな刺激になっている。横浜高・村田浩明監督は卒業時、この3選手に対して「4年間で通算100安打」と期待して送り出した背景がある。
1年春から出場する為永は13試合で14安打(打率.341)、早大・阿部は19試合で13安打(打率.191)、法大・奥村は14試合で7安打(打率.206)。今後、4年間、トータルでの争いも見逃せない。為永は早大3回戦後に決意を述べた。5試合を消化して全試合でヒットを記録しており、すでにチームトップタイの7打点を挙げている。ドラフト上位候補の
榊原七斗(4年・報徳学園)、来年のドラフト候補・田上夏衣(3年・広陵)と同じ数字で、明大打線をけん引する。10月10日からは法大戦だ。昨秋以来の天皇杯奪還へ、もう負けられない。
「ここで負けてしまったんですけど、あとはしっかり全部勝つだけです。次の法政戦に向けてもう1回、全員で切り替えてやっていきます」
1年生とは思えないオーラがある。為永の気迫あふれる攻守のプレーから目が離せない。
取材・文=岡本朋祐