週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【東京六大学野球】「挑戦する価値は十分ある」と東大の3年生四番がプロを目指す理由

 

身体能力の高い俊足外野手


復帰戦となった早大1回戦[10月3日]の第2打席で二塁打を放った[写真=矢野寿明]


 待望の赤門主砲が戦線に戻ってきた。

 コンディション不良により出遅れていた東大・荒井慶斗(3年・宇都宮)が開幕3カード目の早大1回戦から「四番・右翼」に名を連ねた。同1回戦の第2打席では左二塁打を放ち、鋭い打球を披露した。「チームもなかなか点が取れずに負けていて、スタンドで見ていてもどかしさを感じていたので、ようやく吹き飛ばすことができた感じです」。

 東大・大久保裕監督は言う。

「開幕カードは体調不良、その後は背中を痛めていたんですが、1本が出て良かったです。強振しなくても、あのスイングスピードですから十分に飛んでいく。むしろ力まなくていいかもしれません。歴代の東大の右バッターでも、あれほど迫力のある選手は記憶にありません。打つだけでなく、足も速く(50メートル6秒1)、身体能力が高いんです」

「個性派」が育つ土壌


神奈川大学野球連盟選抜との交流試合[8月25日]で豪快な一発。横浜スタジアムに強烈なインパクトを残した[写真=大賀章好]


 荒井がインパクトを残したのは8月25日、横浜スタジアムで行われた神奈川大学野球連盟77周年記念事業の神奈川大学野球連盟選抜との交流試合だ。荒井は東京六大学野球連盟選抜の「五番・DH」で出場すると、5回表にバックスクリーンへ特大のソロ本塁打を放った。相手投手は2024年に育成ドラフトでソフトバンクから1位指名(入団辞退)を受けた桐蔭横浜大の大型右腕・古川遼であり、価値ある一発であった。明大・榊原七斗(4年・報徳学園)ら大学日本代表選手を擁する中で、赤門スラッガーが存在感を示したのである。

 荒井は高校の先輩であり、東大で1学年上の中山太陽が着けた、背番号「44」を今春から継承する。

「中山さんは2季連続でベストナイン(3年秋、外野手部門、4年春、一塁手部門)を受賞しており、憧れの先輩を追いかけたい。この秋は規定打席に到達できず、難しいとは思いますが、変わらずに1打席1打席を大事にして、チームの勝利に貢献していきたいと思っています」

 東大には現役合格。なぜ、宇都宮高から東大を志望したのか。

「先輩の阿久津(阿久津伶生)さんが東大で活躍し(入学当初はアメフト部に入部してRBで活躍。2年8月に野球部に転部し、3年春からレギュラー。2022年にプロ志望届提出)、ちょうど入れ替わりになるんですけど、冬のオフ期間には高校の練習にも顔を出していただいて、いろいろな話を聞いていました。チームとして高校2年秋、神宮球場に東京六大学を見に来る機会があり、身近な中山さんの存在もあり東大一本を志望しました」

 阿久津は俊足外野手、中山は左のスラッガー、そして、荒井は右の長距離砲。宇都宮高は「個性派」が育つ土壌にある。決して偶然ではない。篠崎淳監督の指導が合致したのだ。

「伸び伸びプレーできる環境がありました。短所をつぶすのではなく、長所を伸ばす方針です。自分で考えてやる文化が高校生のときからあったので、それがすごくいま、生きていると思っています」

好きな右打者はカブス・鈴木誠也


横浜スタジアムで放ったホームランボールを手に。大学卒業後の希望進路は「プロ」と語る[写真=大賀章好]


 東大では2年春から出場し、レギュラー奪取は3年春。苦しんだ時期もある。

「高校はそんなに強くないので、また、対戦相手のレベルもあります。入学以降、六大学は言うまでもなく強豪校出身ばかりで、新人戦(2年生以下でチーム編成するフレッシュトーナメント)でも対戦投手のボールが速く、差し込まれていました。速球への対応をポイントとし、パワーアップのため、1年冬にウエート・トレーニングに励んだんです。スイング力がつき、2年春から徐々に対応できるようになりました。多くの神宮での打席での経験が力になったことは間違いありません」

 好きな右打者はカブス・鈴木誠也。打撃フォームを参考にしている。東大では対戦投手を攻略するため、日々の練習でVRを活用。イメージを膨らませてから神宮入りしている。

「レベル高いので、初見だと厳しいですけど、事前に変化球の軌道などが頭に入っていると、かなり違うと思います。役立っています」

 教育学部では「身体教育学」を学ぶ。「体の使い方、睡眠が脳にどのような影響があるかなど、野球につなげられるような研究を重ねています」。進路について言及する。

「自分としては野球をやっている以上、できればプロ行きたいというのがあります。社会人野球での継続も選択肢の一つとして考えています。(左投手の)松本(松本慎之介、3年・国学院久我山)も目指しているので、これからも練習に励み、2人で行きたいです。野手で指名されれば、東大としては史上初なので、厳しいとは思うんですけど、挑戦する価値は十分あると思います」

 この秋の東大は「勝ち点3」を狙っていたが、開幕3カードで6戦6敗と苦戦が続く。10月10日からは立大戦。四番・荒井は早大との2試合で実戦感覚も戻り、爆発の予感がする。

取材・文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング