来季に向け需要が高まる捕手

今季で8年目のシーズンを終えた太田
今秋のドラフトで、「大学No.1捕手」の呼び声高い青山学院大・
渡部海の評価が非常に高い。1位指名で複数球団の競合が予想されるが、FA市場でも捕手の需要が高まっている。その中で動向が注目されるのが、今季中に国内FA権を取得した
楽天の
太田光だ。
リーグトップの盗塁阻止率を2度記録するなど強肩に定評がある。課題は打撃だ。今年は100試合出場で打率.202、3本塁打、18打点。3、4月は打率.291と好スタートを切ったが、その後は好調を維持できず、6月を除いて月間打率が1割台だった。2023年はリーグトップの28犠打、出塁率.356を記録したことを考えると、もっとできる。
ただ、最も悔しかったのは自身の成績ではなく、チームが最下位に低迷したことに尽きるだろう。22年から4年連続4位とCSに届かないシーズンが続き、巻き返しを誓った今季だったが58勝84敗1分けと大きく負け越し。
三木肇監督はシーズン途中に成績不振の責任を取って休養し、
吉井理人監督が新たに就任してチーム再建に取り組んでいる。
「一番はチームが勝つこと」
太田は以前に週刊ベースボールの取材で以下のように語っていた。
「一番はチームが勝つこと。その上で先発投手に勝ちがついて、抑えにセーブがつくというのが捕手としては最高の形じゃないかなと思います。ただ、満足するということはないですね。そこは正捕手としてしっかりマスクをかぶった上で優勝ができたときなんじゃないかなと思います。すごくうれしかったのは2020年に
涌井秀章さん(現
中日)が最多勝を取ったときに『太田のおかげで獲れたよ』と言ってくれたとき。嘘でもうれしかったです。言われたからということではないのですが、年間とおしてしっかりバッテリーを組んで投手の結果が伴ったときは僕もうれしいですね。涌井さんは今でも食事に連れて行ってくれる優しい先輩です」
憧れの存在に挙げるのが、新人の19年にチームメートだった
嶋基宏(現中日ヘッドコーチ)だ。「納得せざるを得ないくらいの存在感がありましたね」と振り返り、「プレーだけではなく、チーム内での信頼がすごく大きいなと感じたので、そうなりたいなと思いました。最初は真似からになるかもしれないですが、いずれは超えられるように」と誓っていた。
8年間で優勝経験なし
嶋が楽天でプレーした13年間でBクラスが9度と、1つ勝つことの大変さをかみしめながらプレーしていた。その中で、プロ7年目の13年に球団創設初のリーグ優勝、日本一を達成したことは大きな価値がある。「その前に東日本大震災があって、何とか良いところを見せたいとか、なんとか復興の力になりたいと思ってやってきていましたので。そういう中で13年のリーグ優勝、日本一で皆さんの喜んでいる姿を見て、やってきてよかったなというのは思いました」と週刊ベースボールのインタビューで振り返っている。自身の人生観、野球観を変えた出来事が東日本大震災だった。
「これまではお金を稼ぎたいとか有名になりたいとか、プロ野球選手であればいい車に乗りたいとか、そういう自分のために頑張ってきていたんですけど、自分のためにやって成功する喜びよりも、人のため、皆のためにやるんだ、と。そう思って野球をやって成功したり、勝ったりするときの喜びのほうが大きいというのが、13年の優勝であらためて感じることができました」
太田は楽天でプレーした8年間で優勝経験がない。29歳と捕手としてこれから円熟味を増す。1人の野球人として、優勝争いができる環境でプレーしたいという思いはあるだろう。今季の推定年俸は5800万円で、金銭、人的補償のないCランクと見られるため、国内FA権を行使した場合に捕手陣が手薄な球団が獲得に動く可能性が考えられる。愛着の強い楽天で気心知れた仲間と共にリーグ優勝を目指すという選択肢もあるが、野球人生の岐路でどのような決断を下すか。
写真=BBM