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【2026ドラフト】東都22年ぶりのノーヒッターがラストシーズンで開花した理由

 

目指すところは不変


亜大・川尻は国学院大1回戦でリーグ史上11人目のノーヒットノーラン達成。ウイニングボールを手に笑顔を見せる[写真=矢野寿明]


 入学以来、初めての東都大学リーグ制覇。しかも、学生ラストシーズンでの覇権奪還は格別だった。亜大・川尻啓人(4年・高岡商)は国学院大1回戦(10月13日)で22年ぶり、リーグ史上11人目のノーヒットノーランを達成した。9季ぶり28度目の優勝を決めた2回戦(同14日)もベンチ入りし、ブルペンで救援待機している中で、歓喜のときを迎えた。

「うれしかったの一言です」

 亜大は開幕から無傷の8連勝。川尻は勝因を明かす。

「ピッチャーが打たれても野手がカバーし、野手がミスしてもピッチャーがカバーする。助け合いというか、みんなで支え合って最後に勝ち切るというところができたと思います」

 自らの偉業については、あまり多くを語ろうとしない。名門復活優勝へ、勢いをもたらす無安打無得点試合だったはずだが「それは分からないですけど……。少なからず優勝に貢献できたのは充実感があります」。周囲からの反響は「(22年夏に)甲子園に出場したときよりもすごかったです」と明かすが、決して浮き足立つことはない。

 1年春を終え、6月に生田勉元監督が体調不良により退任。同秋は亜大の大学職員で野球部OBの鈴木一央氏が率い、2年春には前年秋まで八戸学院大を率いていた正村公弘氏(東海大OB)が新たな監督に就任した。さまざまな変化の中で下級生時代を過ごした。

「いろいろと環境が変わったり、自分自身もケガ等で思うような野球ができなかったんですが、目指すところは最初から変わっていなかったので、それが叶って良かったと思います」

「正村メソッド」で成長


優勝会見でポーズ。左から前嶋、川尻、正村監督、田崎颯士[2年・興南]、主将・山里宝[4年・神戸国際大付][写真=矢野寿明]


 正村監督は八戸学院大の監督時代、多くの投手をドラフトでNPBに送り込んできた。卓越した指導を求め、全国から高校生が練習参加することもあった。投手育成にあたり、独自の「メソッド」があり、亜大にも落とし込んできた。

「ピッチングを一から教えてくれました。具体的にはフォーム、試合での投球術。正村さんは現役時代に投手だったこともあり、いろいろ配慮してくれ、本当に感謝しています」

 189センチ93キロと恵まれた体格だ。川尻が最も大事にしてきたのは「バランス」。上半身と下半身の連動性など、体のメカニクスをいかに投球に落とし込むか。この3年間は、学びだらけだった。バッテリーを組む前嶋藍(4年・横浜隼人)は、川尻の成長を明かす。

「昨年の齊藤さん(齊藤汰直、広島)と一緒で、チームの柱となって、秋までにしっかり仕上げてくれたので、本当に感謝しています。精神的に大人になったというのもそうですけど、齊藤さんとトレーニングをやっていく中で、試合の中では負ける悔しさ、勝つ喜びも味わってきたと思います。その中でも、勝利へのこだわりが強くなったというのはあります。ボールの質も、春から秋にかけて1段階、2段階は上がったと思います」

人生が変わるきっかけに


 10月22日にはドラフト会議が控える。川尻はこの秋を通じて評価を高め、上位候補に名乗りを上げてきた。優勝がかかった大一番でのノーヒットノーランは「人生を変えた試合」になったかもしれない。そのことについて聞くと、川尻は控えめに答えた。

「昨日より今日のほうが、ノーヒットノーランを達成したんだという実感は湧いています。人生が変わったかどうかは分からないですが、それがきっかけになればいいかなと思います」

 大きな転機になったはず。「自分のできることは、今のところできているのかなと思います」。すべてを出し切った充実感がある。158キロ右腕は満を持して「運命の日」を待つ。

取材・文=岡本朋祐
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