「キュータ」が登場

東京消防庁のマスコット「キュータ」が始球式を終えて自己採点は定番の「119点」。満点のポーズを取った[写真=BBM]
いつ災害が起こるか分からない。防災への意識を高める貴重な1日となった。
早大の取り組みから派生

VR防災体験車が登場し、災害を疑似体験した[写真=BBM]
東京六大学リーグ戦第6週第1日が行われた10月17日、明治神宮野球場と同球場の敷地内で「東京六大学防災フェア」が開催された。今年の2月15日には早稲田大学野球部と西東京消防署が連携した防災イベント「野球場が、防災の学び場になる1日。ワセダ防災×スポーツチャレンジ!」が、同市内にある安部球場で開催。この取り組みから派生する形で、東京六大学野球連盟と東京消防庁による初のコラボが実現したのだった。
今回が初開催

まちかど防災訓練車で放水体験が行われた[写真=BBM]
全国各地で災害が発生している昨今、野球を通じて防災に関心を持ち、いざという時に行動できる力を身に付けてもらうことが目的だった。学生野球観戦を楽しみながら、防災に触れることができるイベントは今回が初の開催だった。
動機づけとなる有意義な時間

バイク型の電動トライクに体験乗車もでき、子どもたちは消防士になりきってポーズを取った[写真=BBM]
神宮球場正面の7番入口付近には3つの体験ブースが開設された。VR防災体験車が登場し、災害を疑似体験。バーチャルリアリティ技術を活用した360度の立体映像と揺れ・風圧・水しぶきなどの演出で、地震・火災・風水害を疑似体験した。また、消火栓等の水源がないところでも放水訓練をすることができる、まちかど防災訓練車で放水体験。さらには、ミニ防火衣を試着し、バイク型の電動トライクに体験乗車もでき、子どもたちは消防士になりきってポーズを取り、写真撮影を楽しんでいた。さまざまな防災訓練車両を通じて、災害の際の行動力を高める上での動機づけとなる有意義な時間となった。
「火の取り扱いには十分注意」

東京消防庁のマスコット「キュータ」が見事な始球式を行った[写真=BBM]
第1試合(慶大-明大1回戦)前には東京消防庁のマスコット「キュータ」が始球式を行い、得意のストレートで見事なストライク投球を披露した。キュータは東京消防庁職員を通じて「超気持ちいい! 119点!」と定番の自己採点。始球式はこの日で4回目であり「もう、お年寄り!」と報道陣を笑わせた。最後に「火の取り扱いには十分注意してください!」と呼びかけた。
緊急地震への対応策

第1試合後は東京消防庁職員が防災への関心を高めることを目的とした「防災トーク」が行われた[写真=BBM]
第1試合と第2試合の間には、東京消防庁職員が防災への関心を高めることを目的とした「防災トーク」が行われた。神宮球場で大地震が起こったことを想定。4つの選択肢を紹介し、スタンドの観衆に手を挙げてもらっていた。
「素振りをされた方、さすがにいないですね(苦笑)。続いてAIにどうすればいいか聞いた方は? 続いて、出口に向かって走った方? 揺れが収まるまで身を守った方は?」
正解を語った。
「皆さんがやっていただきました通り、揺れが収まるまで姿勢を低くして身を守りましょう。素振りをする人はさすがにいないと思うんですけれども、AIはとても便利ですから、何でも聞いて、判断してもらう部分はあると思うんですけど、災害のときは自分の目で耳で聞いて、自分の判断で行動することがとても大事です。そして、出口に皆で集まってしまうと何が起こるんでしょうか? 走ります。ぶつかります。転びます。そして、ケガをします。この野郎ってなります。そして、喧嘩になって、どんどんパニックになっていってしまうんです。皆さん、まずは揺れが収まるまで姿勢を低くして頭を守りましょう」
さらに、こう呼びかけた。
「熊本地震の後には、火災が発生しました。東京でも大きな地震が起きた時、さらにそれよりも火災が起きるかもしれません。そういった時、皆さんお一人、おひとりが初期消火をしていただくことで、被害を大きく軽減できると言われています。皆さんも人の命、そして財産、思い出、たくさんのものを守ることができるんです」。そこで消火器の使い方を指導した。「ピン・ホース・レバー」の掛け声がポイント。「家庭にも消火器を備えて、安全安心に過ごしていただきたいと思います」と訴えた。
「防災訓練等延べ参加人数1400万人以上」

東京消防庁四谷消防署・諏訪消防司令は初めての試みとなった同フェアを総括した[写真=BBM]
東京消防庁四谷消防署の消防司令である諏訪雅哉氏(警防課 防災安全係 地域防災担当係長)は初めての試みとなった同フェアを総括した。
「東京六大学野球連盟様のご協力をいただきまして、神宮球場で防災体験イベントを開くことができました。首都直下地震は、いつ起こるか分かりません。ご自宅で家具転倒対策、消火器の準備、感震ブレーカーの設置を、この機会に促進していただければと思います。東京消防庁ではこうした防災訓練を推進しているんですが、なかなか
大勢の方々が足を運ぶ場所で開催する機会が少なく、今回は連盟様のお力添えがあり、貴重な機会を設けさせてもらいました。東京都では2035年に向けた政策目標として『防災訓練等延べ参加人数1400万人以上』を掲げています。東京消防庁ホームページなどでも防災体験、さまざまなイベントの案内もしていますので、機会があればぜひとも参加していただければと思っております」
VR防災体験車で災害を疑似体験した立大・渡慶次太介マネジャー(1年・興南高)は感想を語った。
「(1995年の)
阪神・淡路大震災をイメージとした画像だったんですが、あまりにリアル過ぎて正直、怖かったです。実際に大地震が起きた際は、パニック状態になるかもしれないので、こうした疑似体験はありがたい機会であったと思います。マネジャーは多くの部員が生活している野球部の寮を管理・運営する立場であり、不測のアクシデントでこそ、冷静に行動することが求められます。防災への理解を深める意味でも、有意義な時間になりました」
防災という社会的課題について向き合った1日。第1試合は1万5000人、第2試合は1万2000人が詰めかけた。観衆にとって、かけがえのない体験となったはずだ。
取材・文=岡本朋祐