起用の幅を広げる取り組み

高卒1年目ながらファームで首位打者に輝いた横田
高卒1年目でファームリーグ・中地区の首位打者に輝いた
西武の
横田蒼和。シュアな打撃は大きな武器だが、一軍定着に向けては守備、走塁に課題を残す。2年目の来季、持ち味の打撃を一軍で生かすためには何が必要なのか。鍵を握るのが、起用の幅を広げる取り組みだ。
今季はファームで持ち前のシュアな打撃を発揮し、高卒新人として史上4人目となるファーム首位打者のタイトルを獲得した。だが、1年目の一軍昇格はなかった。チームのレギュラーシーズンの順位が確定したのは142試合目。若手に経験を積ませるための昇格を検討する時間を確保することができなかった。
現在はみやざきフェ
ニックス・リーグに参加中。ここまでの成長曲線を踏まえれば、順調に行けば来季は一軍の春季キャンプに参加する可能性が高い。宮崎・南郷で
西口文也監督ら首脳陣にアピールする機会を得られれば、2年目での一軍デビューへの期待も一段と高まる。
もっとも、ファームで首位打者を獲得したからといって、一軍での活躍が約束されるわけではない。横田が今後、プロの世界で生き残っていくためには、自慢の打撃をどう生かし、出場機会につなげていくかが重要になる。本人も「守備、走塁のところは課題がいっぱいある」と自覚。主戦場とする三塁、遊撃の守備には、まだ改善すべき点が少なくない。しかも、一軍でポジションを確保するには高い壁が立ちはだかる。
三塁には今季、チーム2位の129試合に出場した2年目の
渡部聖弥がいる。遊撃には球界屈指の守備力を誇る
源田壮亮、
滝澤夏央が控える。打撃を武器に勝負するといっても、現状の布陣を考えれば、三遊間で出場機会を得るのは容易ではない。
そこで横田が取り組んでいるのが、起用の幅を広げる取り組みだ。みやざきフェニックス・リーグでは二塁の守備にも挑戦。三塁、遊撃に加えて二塁でも起用できるようになれば、首脳陣にとって選択肢が増える。さらに、外野守備までカバーできれば、出場機会はさらに広がる。
浅村、森は外野でも出場
実際、西武には、その打力を生かすために起用の幅を広げてきた先例がある。2011年、高卒3年目だった
浅村栄斗(現
楽天)は、本来の遊撃だけでなく外野の守備練習にも取り組んだ。その結果、左翼で47試合、右翼で13試合のスタメン出場を果たし、打撃を生かせる居場所を確保していった。
高卒1年目から一軍デビューを果たし、6本塁打をマークした
森友哉(現
オリックス)も同様だ。2年目の2015年には外野守備に取り組み、右翼で23試合にスタメン出場。捕手としての将来を見据えながら、打撃を生かすための選択肢を広げた。
潮崎哲也シニアディレクターも、横田の今後について「出場機会を広げるためには、そういうことも必要になってくる」と、外野守備に取り組む可能性に言及している。もちろん、複数のポジションに挑戦すること自体が目的ではない。あくまで、長所である打撃を生かすために、起用の幅を広げることが狙いだ。
守備から信頼を得た滝澤

高卒1年目と思えない打撃で高い期待を集める横田
その意味では、滝澤の成長が一つの参考になる。身長164センチと小柄な滝澤は、プロ入り後に打撃を向上させてきたが、その背景にはスト
ロングポイントである守備力があった。守備で首脳陣の信頼を得たことで一軍での出場機会を確保し、打撃力を伸ばすための時間を得ることができた。
横田は、その逆の発想で一軍定着を目指すことになる。まずは打撃という最大の武器を生かすために、守れるポジションを増やして出場機会をつくる。守備力で信頼を得て打撃を磨いた滝澤とは異なり、横田は打撃を起点に、守備を含めた起用の幅を広げていく。
まずは課題と向き合い、内野守備の精度を高めることが先決だ。そのうえで、二塁や外野を含めて複数ポジションを守れるようになれば、首脳陣にとっても起用しやすい選手になれる。
高卒1年目でファームの頂点に立った打撃は、横田の大きな武器だ。その才能を一軍で開花させるために、2年目は打撃を生かすための守備、起用の幅を広げるシーズンとなりそうだ。
文=伊藤順一 写真=BBM