定位置が確保されていない状況

メジャー4年目の今季、87試合の出場に終わった吉田
メジャー挑戦1年目の今季30本塁打をクリアした
岡本和真(ブルージェイズ)、
村上宗隆(ホワイトソックス)と対照的に、悔しいシーズンとなったのが
吉田正尚(レッドソックス)だ。
メジャー1年目の2023年は140試合出場で打率.289、15本塁打、72打点とまずまずの成績だったが、その後は24年が108試合、手術した右肩の状態が思わしくなかった昨年が55試合出場にとどまった。外野陣の層が厚く定位置が確約されていない状況となり、「しっかり信頼を自分で勝ち取っていかないといけない勝負の世界。日本のとき、できていたようなことが今こっちでは正直できてないのが現状で、ステージを自分で上げていかないと相手の対応も変わらない。(今季は)規定打席というのが大きな目標。タイトル争いに絡んでいけるような活躍ができれば」と巻き返しを誓っていた。
与えられたチャンスで結果を出すことが、首脳陣の信頼を勝ち取ることにつながる。4月17日のタイガース戦では延長10回一死一、三塁の好機に代打で登場すると、高めの直球をとらえた打球は大きくはずみ、内野5人シフトの頭上を越えて右前へ。メジャー4年目で初のサヨナラ打に手荒い祝福を受け、「1点取るだけだったので、何とかバットに当てて事を起こしたかった。試合にいつでも行けるように、しっかり心拍数を上げていた」と穏やかな笑みを浮かべていた。
コンタクト能力は健在
チームは春先から低空飛行が続き、アレックス・コーラ監督が4月下旬に電撃解任されたが、7月に球団史上80年ぶりの15連勝を飾るなど一気に上昇気流に。吉田は主に指名打者で出場して快進撃を支えていたが、8月15日のパイレーツ戦で3回に長打を放った際に走塁で足の異変を訴えて交代。「左太腿裏の肉離れ」で戦線を離脱し、プレーオフに間に合わなかった。87試合出場で打率.274、5本塁打、28打点。コンタクト能力の高さは健在だが、長打力の点で物足りさが否めなかった。
5年契約の最終年となる来季に向け、チーム内の立ち位置も微妙になっている。高年俸がネックとなり、他球団にトレードがまとまらないことが報じられ、レッドソックスが年俸を一部負担する形で日本球界復帰の可能性を予測する報道も。12月1日に労使協定が失効することに伴い、ロックアウトに突入した場合は契約交渉がすべてストップされるため、去就が来年以降に決まる事態も考えられる。
もう一度、輝けるか
アメリカで思い描いた活躍ができていないが、日本球界で需要が高いことは間違いない。
オリックスで2年連続首位打者を獲得するなど通算打率.327。19年には自己最多の29本塁打を記録している。セ・リーグ球団の元編成部長は「吉田の能力はNPBのほうが生かされるのでは。外野の守備能力が高いと言えないが、来季はセ・リーグに指名打者が導入される。仮定の話ですが日本球界に復帰となれば、複数球団が獲得に興味を示すでしょう」と太鼓判を押す。
ただ、吉田にとってメジャーは大きな覚悟を持って挑戦した舞台だ。レッドソックスに入団が決まった際、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「僕が自分と向き合って、真剣に求めたのは『大きな夢』を叶えること。もちろん、チームのこと、家族のことなど、たくさんの要素を考えてきましたけど、個人的には『自分が描いてきた夢を叶える』。そのことだけを考えて行動してきたので。良い経験はお金では買えない。もっと言えば、誰でも簡単に手に入るものではない。努力して、そのことを究極に好きになって突き詰めて。そういう人間になりたい。僕にとっては野球でした。誰もが立てる舞台ではない。契約の関係もあるし、タイミングも難しい。特に大卒・社会人出は。結婚をして家庭を持ったら、もっとそう。何人もあきらめざるを得なかった選手を知っていますから」
万全のコンディションを取り戻し、もう一度輝きを取り戻せるか。
写真=Getty Images