横浜を沸かせた一発

日本シリーズ第2戦で一時逆転となる3ランを放った筒香
ソフトバンクが強い。10月27日の日本シリーズ第3戦(みずほPayPay)は1点ビハインドの9回二死二塁で
牧原大成が右前適時打。代走で途中出場したイヒネ イツアが好走塁で本塁に生還して同点に追いつくと、延長10回に
正木智也がサヨナラ弾。3連勝を飾り、日本一に王手をかけた。
土俵際に追い詰められた
DeNAだが3試合連続延長戦と粘り強い戦いで、ソフトバンクを苦しめている。ファンのボルテージが最も上がった瞬間は、第2戦(横浜)で
筒香嘉智が放った一撃だろう。2点差を追いかける8回一死一、二塁の好機で、
松本裕樹の外角の直球を左翼ポール際に運ぶ逆転3ラン。CSは5試合出場で12打数無安打と快音が聞かれなかったが、日本シリーズに入ると第1戦で2本の左前打を放って復調の兆しを見せていた。第2戦は値千金の一発の後に、ソフトバンクに再逆転を許して敗れたため試合後に笑顔はなかったが、四番として存在感の大きさを改めて示した。
市場価値が高まる長距離砲
筒香は今年が3年契約の最終年のため、FA権を行使するか去就が注目されている。34歳とベテランの域に入ったが、パワーヒッターとしての実力はまだまだ健在だ。メジャー挑戦を経て2024年のシーズン途中に日本球界に復帰すると、昨年に75試合出場で20本塁打をマーク。今季も故障で離脱した期間があったため規定打席に到達できなかったが、99試合出場で打率.260、20本塁打、49打点の成績を残した。昨年から2年連続20本塁打をクリアしたセ・リーグの打者は
佐藤輝明、
森下翔太(ともに
阪神)、
細川成也(
中日)と筒香の4人のみ。長距離砲の需要が高まっているなか、来季からセ・リーグで指名打者が導入されることも、市場価値をさらに上げることになる。
24年の日本シリーズでソフトバンクと対戦した際に、2連敗から4連勝で26年ぶりの日本一を飾った戦いぶりが記憶に新しい。MVPを受賞したのが
桑原将志(現
西武)だった。打率.444、1本塁打、9打点の大活躍で、中堅の守備でも好守を連発。明るいキャラクターのムードメーカーでファンに愛されていたが、4年契約が切れた昨オフに海外FA権を行使して西武に移籍した。
「苦手だからこそ、挑戦」
桑原は移籍を決断した理由について、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「今回、FA移籍でライオンズという新天地に飛び込みましたが、実は環境を変えることは苦手なんですよ。でも、苦手だからこそ、挑戦したいという思いが芽生えてきました。人間誰しも慣れた環境は居心地がいいですし、プレーしやすい。でも、やっぱり環境を変えることによって新たな自分が見つけられると思います。一皮も二皮もむけ、自分をさらにアップデートさせて、もう一花、二花咲かせたい。のちのち野球人生を振り返ったときに『移籍して良かった』と実感できるのではないか、と」
「ただ、恐怖心もありましたよ。もちろん、セ・リーグからパ・リーグに変わることへの怖さも。セがパより力が劣っているとは思わないですけど、パは投手、野手を含めて力のある選手が本当に多い。そういった環境の中で、自分がどこまで勝負できるのか。相当な強い気持ちと、しっかり準備を重ねなければ到底生き残れないでしょう。怖さはありますが、それに打ち勝つために自分がどう日々を過ごしていくか、その過程がすごく大事になります」
桑原はDeNAへの愛着が強かったが、一人の野球人としてさらなる成長を求めて新天地に移籍した。筒香の場合はどうか。アメリカでプレーしていたときに国内の他球団から獲得オファーが届いたが断り、DeNAに復帰した経緯がある。残留が基本線になるとみられるが、野球人生の節目にどのような決断を下すか。
もちろん、今は日本シリーズに全神経を集中している。ソフトバンクは手強い相手だが、筒香が打てばチーム全体が活気づく。勝負はまだ終わっていない。
写真=BBM