勝ち点2の5位で一部に踏みとどまった

リーグ優勝決定後、メンバーと控え部員を含めて集合写真に収まった[写真=福地和男]
昨年3月にオープンしたジャイアンツタウンスタジアムは、筑波大宣揚歌『桐の葉』の大合唱となった。ユニフォーム組とスタンドで応援する控え部員が一つに。日体大との優勝決定戦を制して、2季ぶり6度目の首都大学リーグ制覇を決めた。筑波大の「秋連覇」は初だ。
2000年12月から母校を指揮する川村卓監督は開口一番、こう言った。
「ちょっと信じられないなというのが、いまの心境です」
昨秋は38季ぶりのリーグ優勝。春2位を受けて、手応えをつかんで臨んだ上での頂点奪取だった。しかし、今年は事情が異なった。東海大1回戦まで開幕7連敗。最下位も覚悟しながら同2回戦、3回戦を連勝すると、帝京大との最終カードも連勝し、4勝7敗、勝ち点2の5位で一部に踏みとどまった。川村監督は回顧する。
「昨年の4年生は、しっかりとした学生が多かったんですけど、今年の4年生はいろいろ課題があるというか、自分勝手な部分が当初はあったんです。春の敗戦から自分たちで話し合って立ち直り、良い方向に向いてきました。今日の試合後のミーティングで言いましたが『史上最弱』。私は20年以上率いていますが正直、一番弱いんじゃないかなと思っていたぐらいです。秋の開幕時点で予定していたピッチャーもいませんでしたし、つないでいくしかない状況でした。厳しい戦力でしたが、一つひとつ課題をつぶしていって、今日の試合を見ていても、こんなに成長するんだなと思いながらゲームを見ていました」
川村監督がMVPに挙げたのは小林理瑛(3年・県相模原高)である。リーグ戦では12試合中11試合に登板し、5勝1敗、防御率1.34と
ロング救援もこなすリリーバーとして大車輪の活躍を見せた。日体大との優勝決定戦でも6回途中から救援して、反撃を封じて、胴上げ投手となった。
「ピッチャーのほうは最後、小林につなげばという雰囲気になっていました。実は夏のオープン戦では結構、先発もさせていたんです。でも、なかなか良い結果が出なくて『やっぱり、小林は後ろだよな』と言いながら、何となくそのパターンができたんです。タイブレークも何回も行きましたし、しんどい場面を何回もよく投げてくれたなと思います」
攻撃もセンターを中心とした逆方向の打撃を徹底。走者が出れば、確実にバントで送る。決して派手さはないが、全員で「1点を取りにいく打線」を貫いた。
「団結力」でつかんだ頂点

筑波大は日体大との優勝決定戦を2対1で逃げ切り、マウンド付近で喜びを爆発させた[写真=福地和男]
筑波大の伝統とは何か。「団結力」である。
スタンドを見れば分かる。全部員で統率された応援は、日体大と並んで「首都名物」と言われている。ユニフォームを着られるのは25人。筑波大は個々の能力では、他校に太刀打ちできないと自覚している。登録メンバーは個々の仕事を忠実にこなし、一人ひとりの力を結集することだけを考えてきた。また、筑波大はアナリストが充実しており、科学的根拠に基づいた取り組みが浸透している。練習から意思統一されていた。日体大との優勝決定戦で決勝タイムリー二塁打を放った
長田悠也(3年・国学院栃木高)は言う。
「春5位以降の練習は、グラウンドで汗を流すよりもミーティングのほうが多かったです。秋のリーグ戦開幕以降も週1回ぐらいは全員で集まって話し合っていました。一致団結して、チームで一つになってリーグ戦に向かっていこうということです」
主将・宮澤圭汰(4年・花巻東高)の視点はこうである。
「春も優勝を目指してはいたんですが、各自がどういう役割をしなきゃいけないとか、チームがどういう勝ち方をするのかというところが、あまりよく分からず入ってしまったんです。夏の期間はそこをしつこく言ってきて、秋はチームの勝つ形であるとか、全員が一緒のイメージを持って戦えたのかなと思います。つらかった? キャプテンをやると決まった時点でこんなものだとは思っていたんですけど、同級生やヘッドコーチに支えられました」
首都の代表としての自覚
キーワードは「謙虚」である。
1点差で惜敗した日体大・古城隆利監督は「筑波さん、本当に野球が謙虚だと思うんです」と、したたかな姿勢を評価。川村監督は事前に打ち合わせをしたかのように、こう答えた。
「優勝するようなチームではなかったので、1試合1試合、みんなで謙虚にやってきた積み重ねだと思います」
戦いは続く。明治神宮大会出場をかけた横浜市長杯争奪第22回関東地区大学野球選手権大会が11月4日に開幕。筑波大は国際武道大(千葉県1位)と初戦(2回戦、5日)で対戦する。昨年は神奈川大との初戦で敗退した。
「一戦一戦だとは思うんですけど、最近、関東大会に出ても負けていることが多く、恥ずかしい試合しているなと思っているところです。首都の代表として、またチーム作っていくぞということで、ここから上げていければなと思っています」(川村監督)
地に足を着けた戦いを展開する。準決勝(11月6日)を突破すれば、明治神宮大会への出場が決まる(決勝の勝者は第1代表、敗者は第2代表)。試合会場のサーティーフォー保土ヶ谷球場で再び、部員全員で声高らかに筑波大宣揚歌『桐の葉』を歌う。
取材・文=岡本朋祐