来春以降は遊撃手で起用

筑波大の四番・長田は6回裏の好機でバットを短く持つ工夫で決勝打。阪神2位指名の日体大・馬場対策が実った[写真=福地和男]
10月27日【優勝決定戦】
筑波大2-1日体大
試合を決めたのは、主砲のバットだった。
1対1の6回裏二死三塁。筑波大の四番・
長田悠也(3年・国学院栃木高)が右越え二塁打。阪神からドラフト2位指名を受けた日体大の先発右腕・
馬場拓海(4年・福岡大大濠高)のストレートをたたき、これが決勝点となった。
2対1。筑波大が2季ぶり6度目の優勝を決めた。
「4年生がつくってくれたチャンスだったので絶対、決めてやろうと思って打席に立ちました。追い込まれましたが、馬場さんはおそらく、真っすぐを投げてくるだろうと思っていたので、張っていたボールをうまく流せたので良かったです」
この場面、長田は通常よりもバットを短く持った。
「どうしても、三塁走者をかえしたかったんです。よく川村先生からも言われるんですけど、好投手を相手にしたときは工夫をしないといけない。何とか出てやろうという気持ちで、短く持ったりはします。ケースバイケースで対応するようにしています」
筑波大・川村卓監督は手放しで褒め称えた。
「馬場君だったので、なかなか点が取れないだろうというところで、スコアリングポジションに行くと、一つギアを上げてくるので、なかなか難しいなと思っていたんです。そこで長田が逆方向に打ってくれた。ずっとやろう、と言っていたことを実践してくれました。『彼がやってくれないと』と思っていましたので、今年はずっと我慢して使ってきました。今年はサードを守らせていますが、この秋で主将の宮澤(宮澤圭汰、4年・花巻東高)が卒業しますので、来春以降はショートとしてチームを引っ張ってもらいたいと考えています」
2年夏の甲子園で7打数連続安打

今春と今秋はサードを守ったが、最終学年は本来のポジションである遊撃手を見据える[写真=福地和男]
高校2年夏。長田は甲子園のヒーローとなった。日大三島高との1回戦では第2打席から四球を挟んで3安打。智弁和歌山高との2回戦では4打数4安打と、2年生ながら、打線をけん引していた。九州学院高との3回戦の第1打席で三ゴロに倒れ、歴代最多の8打数連続安打に並ぶことはできなかった(この試合は4打数無安打)。チームは3回戦で敗退も、強肩強打の遊撃手は相当なインパクトを残した。
大舞台で脚光を浴びて以降、長田は苦しんだ。甲子園では、あまりにもすべてがうまく行き過ぎた。周囲からの期待も重なり、結果が残せないと、そのギャップに悩んだ。一度歯車が狂うと、立て直すことができなかった。大学4年間での飛躍を誓い、筑波大へ進学した。
指揮官は「プロ」を視野に

高校、大学と数々の試練を乗り越えて成長してきた[写真=福地和男]
長田はつくば市出身。筑波大・川村監督は中学時代からチェックしており、縁あっての野球部入部だった。「生まれ育ったところで学び、プレーしているというのが、彼にとっては非常に良いんじゃないかなと思います」。1年春はレギュラーで出場も、その後は定着できなかった。2年冬に取り組みを改め、3年春のシーズン中盤から定位置を再奪取。今秋は2本塁打9打点と打線をけん引し、日体大との優勝決定戦では馬場から決勝打。ドラフト指名投手からの一打に「自信になりましたし、自分も行けたら行きたいなとは思っています」と、卒業後の進路志望について自ら触れた。「プロ志望」に関しては、慎重に言葉を選ぶ。
「まだ先のことは分からないですけど、上を目指せるように頑張りたいです。昨年は岡城(
岡城快生、阪神3位)さん、今年は田代さん(
田代旭、4年・花巻東高、
広島育成2位)と2年連続でドラフト指名されて、こういう選手がプロに行くんだなという勉強になりました。来年は遊撃手をやりたいと思っていますが、大型ショートというのはあまりいないので、自分はそこを武器にしていけたらと思います」
川村監督は「ロマン砲」のポテンシャルの高さを認める。
「この秋の2本塁打はレフト、左中間と完璧な当たりでした。ショートの守備も上手いんです。しかも、肩が強く、スローイングが安定している。右打者の大型遊撃手というのは、稀有な存在だと思いますので、大きく育てていきたいと思っています。私見ですが、プロを視野に入れてもいいのではないかと見ています」
野球人生には必ず、ターニングポイントとなる試合がある。長田にとって「10.27」は分岐点になったかもしれない。
取材・文=岡本朋祐