松井秀喜こそ真の四番

巨人ヘッドコーチに就任した高橋氏
巨人ファンが長年待ち望んでいたタッグが実現する。
松井秀喜新監督が誕生し、ヘッドコーチに
高橋由伸氏が就任。球団の歴史を振り返ると、一軍監督経験者がヘッドコーチを担うのは異例だが、松井監督から電話でオファーを受けて支えることを決断した。10月30日から始動した秋季キャンプではスーツ姿で現れ、松井監督と話し込む場面が見られた。
三番・高橋、四番・松井のコンビで現役時代に1998年から5年間ともにプレーした。高橋ヘッドコーチは天才的な打撃センスでミート能力と長打力を兼ね備え、松井監督は日本球界の歴史に残るホームランアーチストとして活躍。巨人という枠を超え、球界を代表する強打者コンビだった。
高橋ヘッドコーチは、松井秀喜監督について週刊ベースボールのインタビューで以下のように評している。
「私は現役時代に勝利を背負い、そのバットでとても多くの影響をチームに与えてきた“松井秀喜”を目の前で見てきました。日本球界を見渡せば、
長嶋茂雄(巨人軍終身名誉監督)さん、
王貞治(
ソフトバンク会長)さん、
野村克也(元南海ほか)さんなどチームを背負った四番打者はいっぱいおられますが、やはりすぐ近くで一緒にプレーして、イヤというほどその存在の大きさを感じさせられたのが“松井秀喜”で、彼こそが真の四番打者だと思っています」
和製大砲の育成

松井監督[左]と強力タッグを組んで、チーム力を底上げする
現在の巨人で大きな懸案事項となっているのが、和製大砲の育成だ。高橋ヘッドコーチはその点で監督時代に大きな功績がある。当時若手で一軍の実績がなかった
岡本和真(現ブルージェイズ)を不動の四番に育てたことだ。プロ3年目の17年までは計35試合の出場にとどまっていたが、2018年に大ブレーク。全試合出場で打率.309、33本塁打、100打点と覚醒し、6月以降は四番で試合に出続けた。
「岡本は1年を通して一軍でプレーしたことがありません。我々としては期待の若手選手ですから、誤解を恐れずにお話ししますと、過保護に起用をしていたんです。どうにかして、1年、結果を残させて、次のステップに進んでほしいと願っていましたから。練習を優しくするとか、そういうことではありませんよ。ですから、正直に言うと、できればまだ、四番にしたくなかった。プレッシャーをかけて、彼のリズムも変わって、成績が落ちたらいやだな、と。過保護ですよね。結果的には、そんなこと、まったくお構いなしの子だったんですけど(笑)」
「でも、シーズンが進み、交流戦期間に入ったところで、チーム事情でどうしても岡本を四番にするしかない状況になりました。ただ、ジャイアンツの四番にするからには、そう簡単に動かすつもりはないですし、長くジャイアンツの四番を張る選手に岡本にはなってもらいたかったですから、打ったり打たなかったりで動かすこともしたくなかったので、悩みましたね。いざ四番に座ると、いきなり第1打席でホームラン。6月後半から32打席ノーヒットもありましたが、私は内容が悪いとは思っていなくて、四番を外す理由にはならないと判断しました。体力面の心配も全く感じさせず、精神面でもひょうひょうとしていて、そういうところも松井秀喜に通じるな、と」
選手、コーチとのパイプ役
清水隆行打撃チーフコーチと連携を取りながら、打線強化に思考を張り巡らせるが、ヘッドコーチの役割は多岐にわたる。最も大切なことは松井監督とコーチ、選手のパイプ役になることだ。かつて、巨人でヘッドコーチを務めていた
伊原春樹氏は週刊ベースボールのコラムで力説している。
「監督は孤独だ。チームの調子がいいときは、周囲もチヤホヤしてくれるが一転、不調に陥ると腫れ物に触るような扱いをされる。それはコーチも同様だ。勝利から見放され続けると、自然と監督から離れていき、監督は一人になってしまう。そんなときでも、ヘッドコーチは常に監督に寄り添っていなければいけない。監督の苦悩をともに分かち合うようにしなければ、ヘッドコーチとしては失格だ。言うなれば、監督とヘッドコーチの関係は夫婦のようなものなのかもしれない。例えば、監督がチームや選手に言いたいことがありそうなら、それを察して、先回りしてヘッドコーチが指摘することも重要だ。その逆で、監督がつい選手などに怒りの言葉を発した際は、それをうまくフォローするのはヘッドコーチの役割になる。それは本当に夫婦関係のようなものだろう」
強い絆で結ばれた松井監督と、新たな挑戦が始まる。
写真=BBM