2024年以来となるDeNAとソフトバンクの日本シリーズは3試合連続で延長戦。どちらに勝利が転んでもおかしくない状況の中、栄冠をつかんだのは4連勝のソフトバンク。2年前に2連勝からの4連敗と屈辱を経験した指揮官が試合の流れを読み、1勝をつかみにいく采配を見せた。 文=井上満夫[スポーツニッポン新聞社] 
本拠地で初の胴上げとなった小久保裕紀監督[写真=BBM]
自らの手で手繰り寄せた栄冠
前回とは敵将は違う。ただ相手は同じ。変わらない。2年越しの雪辱。完全に黙らせ、ねじ伏せた。小久保裕紀監督はリーグ3連覇達成時より2度多い、現役時代の背番号と同じ9度の浮遊を堪能した。
「すごいシリーズだった。ポイントは? と聞かれても全部なんですね。1戦目から最終戦まで。分岐がなかった。分岐が。ただ。監督になって……。すみません、ずっと目標にしていたみずほPayPayドームでの胴上げ。3年目にしてやっとできました。常に天井を見ながらの胴上げを常日頃からイメージしていた。そのイメージが出ました」
話す途中で感極まって、途切れるときがあった。そのくらい嬉しかった。ほっとした。忘れもしない、2024年11月3日。第6戦を2対11で大敗し2連勝後4連敗。就任1年目でパ・リーグ王者に導いたがセ・リーグ3位に日本一を奪われた。終戦直後、横浜の宿舎で選手、スタッフ全員を集めて訓示をした。
王貞治球団会長が「技のレベルアップ、取り組む姿勢、あとは決断。こういう要素を振り返ってほしい」と復習を促したあと、指揮官は選手に向かって謝罪を続けた。「24年型のホークスを最高の形で終わる事ができなかった。シリーズの勝敗、負けの責任は俺にある。来季、当たり前のことを当たり前にできるチームをまた最初から目指していく。勝たせ無くて、勝たせられなくて申し訳ない。お疲れ様でした」。沈黙と間が悔しさを助長した。
前回は心の隙をさらけ出し、つけ込まれた。「3つ、負けられる」と余裕を口外にした。本拠地で3連敗し2勝3敗となった第5戦後に「まあ、まあ。3つ負けられると言って3つ負けてしまった」と平静を装いながらも明らかに窮地を感じ取っていた。同戦で相手は第1戦で敗れた先発
ジャクソンを中4日で再登板させてやられた。逆王手をかけられて、一気に押し出されていた。
もやもやしたままオフに突入。福岡市内でのリーグ優勝パレード参加後の24年11月30日、故郷の和歌山県に帰郷した。和歌山市で支援者、後援会にホール内で労われたが横浜でのDeNA日本一パレードと日にちがかぶった。「福岡ではうれしかったけど、リーグ優勝おめでとうとの声が多かった。やっぱりパレードは日本一になってからですね」。そして翌25年に
阪神を倒してパレードでは沿道のファンから日本一おめでとうと言われていた。
日本一奪回後の再戦では口は災いのもと、との言葉通りに余裕を示す発言をやめた。横浜で2連勝した25日の勝利監督インタビュー。遠征に来ていた在福アナウンサーのあおりをクールにかわした。「これで敵地2連勝スタート。2年前と同じパターンです」。前回と同じをにおわせて、場内のファンのボルテージ、声をたかぶらせていた。それでも、苦笑しながら「そうですね…。あと2つ勝つことだけ」と返した。本拠地に戻っての第3戦後も「どっちに転んでもおかしくない試合ばっかりしていますが、とにかくあと1つ勝つだけ」。己に言い聞かせるように数字を1つずつ減らすカウントダウンを冷静に口にし続けていた。

1戦必勝で2年前の雪辱を果たした[写真=BBM]
CS、日本シリーズを通じて無敗で日本一になったのは20年以来6年ぶり2度目。この快挙は常勝軍団ソフトバンクだけ。まさに横綱相撲だった。「プロ野球の最後の試合、最高峰。セ・リーグ、パ・リーグの代表の試合でね。両チームのファンがハラハラドキドキした試合だったと思うね。そこは、良かったですね」。頂点に登ったあとに少し安どした。
土俵際までは、ほぼ互角。追い詰められるががっぷり四つで組み合って最後は競り勝った。最後まで隙を与えなかった。史上初めて開幕から3試合連続で延長戦。第1戦は同点の11回に2年目
庄子雄大が決勝二塁打。2戦目は代打・
山川穂高が9回に同点ソロ、10回に守備固めから出場の
川村友斗が決勝ソロ。第3戦目は2死からの代走・
イヒネイツアの神走塁から
正木智也のサヨナラ本塁打。川村ではなく代走イヒネ。その理由を「代走起用は僕の判断。周東の次に足が速いから」と明かした。第2戦前からフェ
ニックス・リーグ中の二軍から第2戦前に召集していた。「準備力というのもホークスの伝統でもあるし、そこが一番の強みではあるんですけどね」と明かした。戦況を冷静に見ながら切るカードが、バチバチとはまり続けた。
次なる目標はリーグ4連覇、そして3年連続の日本一。「球団自体が目指せ! 世界一で、もし世界一を決定する舞台があったとすればホークスだよねと言われるチーム作りをしていかない限りはリーグ優勝、日本一との目標設定をせざるを得ない」。また、さらりと、黙って、達成しそうな勢いが小久保ホークスにはある。