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立浪和義コラム

立浪和義氏が送る高校球児へのアドバイス【前編】

 

打撃はシンプルに


立浪氏はPL学園高の主将として春夏連覇(写真はセンバツ)


 今夏の甲子園は大阪桐蔭高が史上初の2度目の春夏連覇を果たして幕を閉じました。

 私自身も、かつては高校球児。この真夏の舞台がどれほど過酷で、どれほど多くの実りがあるのかは分かっているつもりです。

 ベンチ入りした選手の皆さん、残念ながらできずに応援に回った皆さん、そして学校関係者、地元の皆さん、父兄の皆さん、暑い中、本当にご苦労様でした。

 今回の出場メンバー、また惜しくも甲子園に届かなかった選手の中で、多くの人たちがプロ野球の世界に進みたいという希望を持っていると思います。おそらく、どうすればプロで活躍できるのか、バッターであれば、金属から木製バットになって、どのようなことを修正すればいいのかなど、あれこれ思い悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

 実際、プロの素晴らしいバッターをマネしようと思っても、みなそれぞれ構え方や足の上げ方、タイミングの取り方が違います。筋力の問題、スイングスピードもありますから、誰もがエンゼルスの大谷翔平選手やソフトバンク柳田悠岐選手のようなスイングができるわけではありません。

 私自身も、体が決して大きくなかったこともあり、さまざまな試行錯誤を繰り返し、うまくいったこともいかなかったこともあります。

 その中で、現役晩年に気が付いたことは、「シンプルに考えたほうがいい」ということです。実際、バッティングの基本はそれほど複雑なものではありません。シンプルに考えたほうが、調子を崩したときも、比較的簡単に修正することができます。

 これから説明していくことは、打撃理論を研究されている方なら「そんなのは基本じゃないか」と言われるかもしれませんが、私はプロの世界で、いいバッターで共通していることはないかと必死に観察し、自分の体で試した末での結論でもあります。

 加えるなら「悩んだときこそ、基本に戻ってシンプルに考える」というのは、野球以外のスポーツでも共通するものではないでしょうか。

3つのポイント


 では、私が現役時代に大切してきたポイントについて説明してみたいと思います。皆さんも、ぜひプロ野球のバッターのスイングをこれらのポイントで見てみてください。

 3つ挙げます。それが「間(ま)」と「割れ」と「軸回転」です。

 この3つはリンクしていますので、バラバラに説明するのが難しい面もあります。多少、説明が重複するかもしれません。

 皆さんが一番分かりやすいのが「軸回転」ができているかどうかだと思います。

 これはバッターの調子の良しあしを判断するポイントでもありますが、できていない選手は体が前に流れてしまいがちです。

 特に足を上げるタイプの選手が、足を上げた後、体がすっと前に動くシーンを見たことがあると思います。多少は仕方ないと思いますが、よくないのは、頭が先に倒れるように動くことです。いわゆる「ボールを迎えにいくスイング」になりやすく、内角に詰まり、外に逃げるボールには体が泳いでしまいがちです。

 もちろん、そのような動きがありながらもヒットやホームランを打てるバッターはいますが、確率は決して高くありません。繰り返しになりますが、難しいスイングではなく、よりシンプルなスイングのほうが絶対に楽です。

 これを防ぐには、足を上げるよりは、すり足のほうがいいとは思いますが、足を上げる利点もたくさんあります。一度軸足に重心を乗せるので体重移動やタイミングが取やすいことが挙げられます。より遠くに飛ばすためには必要な技術だと思います。

 プロの選手であれば、ヤクルト山田哲人選手は足を大きく上げる選手ですが、今季のよくないときは、頭がすっと前に動いていました。いまはほとんど動かなくなりましたが、トリプルスリーを2度やってのける山田選手でも、どうしてもこうなってしまうことがあります。

 次回へ続きます。

写真=BBM

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