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ピンチに強い菅野智之とピンチを未然に防ぐ大瀬良大地

 

セ・リーグ防御率1位の広島大瀬良大地と2位の巨人菅野智之が、ともに8月17日に勝利を飾った。ここでは、2人を記録面から比較してみたい。

別次元にいる菅野


菅野は走者一塁で被打率.309とピンチを広げる傾向にある


「ギアを上げる」という言葉が普通に使われるようになった。要は、ピッチャーがピンチの場面で、それまでとは比べものにならないほど強い球を投げ込むという意味だ。高校野球でも、金足農のエース・吉田輝星は「三段階ある」と話していた。

 昔は結構、微妙な言葉だった。要は「では、それ以外は力を抜いているのか」という話である。かつて、下位打線とクリーンアップ、走者ありとなしでギアの上げ下げをした巨人・江川卓(1979〜87)が「手抜き」と批判を浴びた時期もあった。

 ただ、実際には、先発完投で全球全力投球などできるはずがないし、ここぞの場面でギアアップできるかどうかは、エースの必須条件でもあった。

 地上波の視聴率20パーセント以上を誇った巨人戦だけに、エース・江川が実際以上に目立ったとも言えるし(手痛い一発も多かった)、野球ファンの中で、江川に対し「もっとすごいはず」という幻想があったからでもある。

 現在の球界で「ギアを上げる」典型は、巨人・菅野智之だ。

 しかも、この男、パワーだけではない。8月18日、10勝目を挙げた完封ゲーム(対中日=東京ドーム。被安打わずか2)では、4回まで球数が70球と多かったことで“四隅を狙う勝負”から“ストライクゾーンでの勝負”に切り替え、球数を一気に減らすという離れ業を演じた。

 いまの菅野が立ち上がりから飛ばしたら100球前後、6回程度を完璧に抑え切ることは、そう難しいことではないのではないだろう。

エースの役割


大瀬良の被本塁打はリーグワーストの16本、失点は23


 10勝7敗、防御率2.63の菅野を上回り、2部門ともリーグトップに立っているのが、広島のエース・大瀬良大地だ。18日のDeNA戦に勝利し、13勝5敗、防御率2.31となった。

 データを調べると、大瀬良と菅野は、かなり傾向が違う。顕著なのは得点圏被打率だ。大瀬良は、.292と高く、対して菅野は.153。ただ、イニングが菅野が144回、大瀬良が132回2/3ながら得点圏の打席数を比較すると菅野の145に対し、大瀬良は81。さらに得点圏で許したヒットも菅野26本、大瀬良19本だ。

 満塁を調べてみても、大瀬良は4打席(被打率.000)、菅野は12打席(被打率.125)。あくまでリーグ1、2位の防御率を誇る高いレベルでの比較であるが、菅野は「ピンチを作るが、しっかり抑えるタイプ」、大瀬良は「ピンチを未然に防ぐが、ピンチを招いてしまうと意外と弱いタイプ」になる。

 チーム事情もある。大瀬良の完投は2。“それなり”ながら、整備されたリリーフ陣の中で、7回前後が役割となっている。対して菅野は完投6(完封4)。抑えが安定しないチーム状況の中で首脳陣から「完投」を求められ、ピッチングにメリハリをつけながら、それにしっかり応えている結果でもある。

 つまりは、ともにチーム事情の違いの中でエースとしての役割を果たし、かつ大瀬良の13勝5敗、菅野の10勝7敗が、チームの成績にはっきり影響しているとも言える。

写真=BBM

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