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舞台裏の仕事人

1日がスムーズに終るように時間を管理する 阪神・清水誉一軍担当サブマネジャー/舞台裏の仕事人

 

試合前練習から試合までスムーズに事が進むことが、実は一番大切なことかもしれない。阪神のサブマネジャーの清水誉さんは、元阪神捕手。今季で現職2年目を迎えた。選手たちが何のストレスもなくプレーに集中できるかを考え、環境作りに試行錯誤する日々を送っている。

周囲を生かしながら


阪神一軍担当サブマネジャー・清水誉さん


 用具係として遠征前、後の荷物の管理。練習前の準備から、ユニフォームの配布など、細かい作業を行っている清水さん。この作業がなければ球団も選手たちも試合に向け、大きなストレスを抱えるかもしれない。それくらい重要で、なくてはならない仕事なのだ。

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 この仕事に就いて2年目になりますが、現役時代にサブマネジャーがここまでいろいろなことをやるとは分かっていませんでした。仕事の内容は本当に多岐にわたるんですよ。

 ホームゲームで、遠征から帰ってきたときは、遠征先から帰ってきたチームの荷物や道具を積んだトラックが甲子園に着きますので、その到着を待って、荷物おろしから1日が始まります。

その後は、試合前練習で使用するボールや用具をグラウンドに出し、センター方面に打球を防ぐための投手用ネットを張り、打撃ゲージ2カ所分を設置するなど、観客や報道陣の目に見える部分での仕事もあります。これなどは、打撃投手の方々に手伝ってもらいながら設置していますので、皆さんには本当に感謝しています(笑)。

 皆さんに手伝ってもらわないと仕事がうまく回らないことも多々ありますので、どういう段取りでお願いするのがいいのか、どういう声掛けをすれば気持ちよく動いてもらえるのか、ということも考えますね。これはかなり自分自身の勉強にもなっています。練習中の作業でいえば阪神の練習が終わった後、ビジターチームが打撃練習をするために、打撃ゲージを2カ所から1カ所にすることも仕事の一つです。

 試合中ですか? 基本的にはマネジャー室で試合のモニターを見ています。甲子園の場合、選手たちのロッカーもそうですが、マネジャー部屋が球場に隣接した建物にあるので、離れているのです。例えば、試合中に選手のユニフォームズボンが破れたとします。このとき私がベンチの近くにいたら、替えのズボンを取りに帰るまで時間ロスになってしまいます。マネジャー室にいれば、即替えのズボンをベンチ裏へと迅速に持っていけます。雨の試合などでもそうですね。

 そしてもう一つ重要な仕事があります。それは試合中に折れたバットがどういう感じで折れたのか、ということをNPBに報告しなくてはいけませんので、その報告書を作成するということです。さらにもう一つ。前日に使用したユニフォームがクリーニング屋さんから上がってきますので、試合中に各選手のロッカーに配っています。

 クリーニングの話が出ましたが、ビジターのときは試合用のユニフォームの洗濯の手配をします。そのため各遠征先で契約しているクリーニング屋さんがいます。彼らとのやりとりもまた重要な仕事です。

いかにスムーズに進行させるか


ホームチームは打撃練習で打撃ゲージが2カ所のため、どの位置にホームベースを置くかも清水さんの仕事だ


 サブマネジャー、用具係として多岐にわたる仕事の中で、「管理」することも重要な仕事の一つ。用具の管理だけでなく時間を管理することで、球団によって組まれたスケジュールがスムーズに進行されるのだ。
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 この仕事を始めて一番驚いたことといえば「1年間で使用するボールの数」です。1試合で使用する「公式球」の数というのは、現役時代に考えていた数よりも格段に多かったですね。これには本当にビックリしました。公式球も入れ一、二軍、キャンプも含めてかなりの量を使用するんです。このボールをどういうふうに使用しながら、やり繰りするかも需要な仕事です。

 1年目の昨年。先輩の方に仕事についてさまざまなレクチャーを受けていました。その中で「高校生の夏の甲子園大会期間中は甲子園の中に入れない」という話がありました。それでも私の中では「ホームチームだから少しくらいは大丈夫でしょう」と甘い気持ちがあったのです。しかし、経験してみると用具やボールを取りに行くだけでも困難でした。この大会期間中に2度、京セラドームで阪神のホームゲームを開催しますので、練習用具やボールが必要になるんですね。そういう経験もしましたから、今年はあらかじめ、京セラドームで使用するボールなどは別の場所を確保し、保管しておくようにしていました。

 また、ホームゲーム終了後の翌日にビジターで試合があるときは、荷物出しの時間に気を配っています。翌日の練習前までに荷物が届かなかったら、チームに迷惑がかかります。そして何より出発時間が遅れることで、ドライバーさんに大きな負担がかかります。そこは選手の中にも時間に対する個人差がありますので、個人個人の荷作りの状況を見極めながら、時間に間に合うようにやり繰りしています。

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 この仕事のやりがいといえば、チームが試合に勝つこと。でも私が一番に考えていることは、何のトラブルもなくいつものように練習が始まり、いつものように試合が成立することです。選手やチーム全体が何のストレスも感じることなく1日を終えることが大事だと思うんです。そのためには私が、準備段階でどういう動きをすればいいのか、そしてみんなが気持ちよく行動するにはどう声掛けをしていけばいいのかを常に考えています。

 それと同時に、選手たちの要望には適度な範囲で応え、なるべく選手たちでできることはやってもらえるようにしています。すべて私がやってしまうことで、負担が大きくなり逆に運営に支障がでてしまう可能性がありますので。その塩梅を見ながら、何事もなくスムーズに1日が終わるように心がけています。その中でチームが勝ったら最高ですね。

写真=BBM

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