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立浪和義コラム

柳田悠岐選手への内角攻めはなぜ有効だったのか?/立浪和義コラム

 

左投手の内角攻め


日本シリーズ第2戦でジョンソンの内角攻めに苦しんだ柳田


 前回に続き、ソフトバンク柳田悠岐選手のバッティングについて書いてみようと思います。

 編集部から柳田選手の打撃データをもらいました。左打者ながら対右投手が打率.350、対左が打率.355と、ともにハイアベレージであり、しかも左投手をまったく苦にしていません。さすが首位打者です。

 ただ、コース別で見ると、左投手のインコースの打率は、高めが.000、低めが.000、真ん中がようやく.333とあまりよくありません。対右投手のインコースのデータでも低めは苦手にしているようですが、真ん中、高めはむしろ得意にしています。左投手のインコースは彼のウイークポイントと言っていいでしょう。

 ただ、それでも対左投手の打率が高いのは、インコースでヒット、三振、凡打となった数自体が少ないことがあります。

 理由は2つあると思います。

 1つは、柳田選手が真ん中から外寄りの球に極端に強く、相手投手がそれを怖がり、インコースに投げ切れていないことです。加えて、左投手と左打者の場合、どうしても角度が背中からになりますから、インコースを狙っても少しの狂いで真ん中付近に来てしまいます。

 力のある左投手が柳田選手の内角にきっちり投げ切ったのが、日本シリーズ第2戦での広島の左腕・ジョンソン選手でした。第1戦でも右腕の大瀬良大地選手らのインコースが効きノーヒットでしたが、ジョンソン選手はツーシームをうまく使って、柳田選手を単打1本と、ほぼ完ぺきに抑え込みました。

頭は動くクセ


 柳田選手だけでなく、もともとバッターにとって、インコースは非常にやっかいなコースです。距離が取りづらいので芯に当てるのが難しく、詰まりやすく、自打球も増えます。いくらスイングスピードが速いと言っても、特に柳田選手のように球をギリギリまで引きつけるタイプは大変だと思います。

 一つ気になるのは、柳田選手の頭の動きです。足を上げて着くときにわずかですが、頭が前に動くクセがあります。反動をつけて後ろに戻すというタイミングの取り方かもしれませんが、どうしてもタイミングが遅れてしまいがちです。柳田選手はスイングスピードが速いので、それでも間に合うことが多いのですが、本当に厳しいインコースに対しては、そのわずかなずれで、さらに難しい球になってしまいます。

 頭が動かなくなれば、インコースをもっと楽にさばけるはずです。そうなれば、日本球界では松中信彦(元ソフトバンク)君以来の三冠王も見えてくるのではないでしょうか。

写真=BBM

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