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張本勲コラム

【張本勲の“喝”】選手たちの人生が懸かっている。指導者たちには腹をくくってもらいたい/張本勲コラム

 

王をはじめとする昭和の名選手たちが見せていた技術と技術のぶつかり合いを取り戻してほしい


 どのスポーツでも変わりはないだろうが、野球選手にとって必要なものはまず努力、それから自己管理、そして自分に合った技術だ。この3つをわきまえることができるか。それが一軍の選手と二軍の選手を分けることになる。3つのうち何かが欠けていては一軍に上がることはできない。才能がありながら二軍でくすぶっている選手、少し手直ししてやれば絶対に一軍で活躍できるだろう選手はたくさんいる。プロ野球の世界には全国から才能のある選手が集まってきているのだから。本当にもったいない話だ。

 彼らが頼る指導者の問題もある。令和の時代には、これまで以上に指導者にも腹をくくってもらいたい。選手の人生が懸かっているのだ。今日は「バットを立てろ」、明日は「バットを寝かせろ」。そんないい加減な指導をしていいはずがない。故郷を離れて野球に人生を懸けようと必死になっている選手たちの人生を変えてしまうことになるのだ。そのことを自覚してほしい。

 どんな選手にも、直してやらなければならない部分は必ずある。ましてや二軍の若い選手たちであればなおさらだ。そのためには、その場だけではなく、1週間、10日とそれぞれの選手たちをしっかり観察し、その選手にはどういった形が適しているのかを指導者が一生懸命考え、勉強しなければならない。

 平成の間に野球界が間違った道へ進んでしまった部分は多々ある。であれば、令和の時代にしっかり正さねばならない。平成を顧みることなく、ただただ前へ進もうとしてもダメだ。間違った道を歩んでいることに関しては、一度立ち止まり、そして立ち戻る必要がある。そこで再び何十回でも、何百回でも話し合いを重ね、新たな正しい道を見つけなければならない。ボールの反発力もそうだ。球場の広さやアメリカに追従するだけのルールもそうだ。指導者のあり方もそうだ。

 アマチュアの選手たち、そしてファンたちに「なんて足が速いんだ」「あんなに肩がいいのか」「とんでもない技術だ」、そう感じてもらえるような素晴らしいプレーを見せる選手にどんどん出てきてもらいたい。技術と技術がぶつかり合う、本物のゲームを数多く見せてもらいたい。そして、多くのファンを喜ばせてもらいたい。昭和の野球には確かに存在していた“浪漫”を取り戻してもらいたいのだ。

 それこそが、私が令和という新しい時代のプロ野球界に期待することだ。そのために、もう一度、しっかりと正しい道を歩んでいかなければならない。

張本勲(はりもと・いさお)
1940年6月19日生まれ。広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年にロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319

写真=BBM

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