菅野のコントロールが乱れるのは……
菅野にはもう一度、正しく体を作ってもらいたい
菅野智之が炎上した。4月25日の
ヤクルト戦(神宮)で
青木宣親、
山田哲人、
バレンティンに3連発を被弾。自己ワーストの12安打を浴び、7失点で4回途中にマウンドを降りた。
前回登板の4月19日、
阪神戦(甲子園)でも味方の援護もあって勝利投手にこそなったものの、7回にルーキーの
木浪聖也に3ランを打たれてイニング途中に降板している。
ここまで5試合に登板して被本塁打が8。これだけホームランを打たれる原因はどこにあるのか。
評論家は、あのボールがいけない、このボールを間違えたと言う。確かに、ヤクルト戦で打たれたボールはすべて真ん中近くに集まっていて、よくなかった。
しかし、私から言わせれば、問題は別のところにある。
体つき、ズバリいえば太り過ぎだ。
菅野は投げ方も攻め方も知っている。打者へ向かっていってから投げるのも素晴らしい。昨季は2年連続最多勝など主要投手タイトルを総ナメ、沢村賞にも輝いた。結果を出せていたのは何よりコントロールが良かったからだ。そのコントロールが乱れる原因は体つきにある。
このままでは2〜3年でパンクするのではないかとの危惧がある。実際に以前は腰と肩に故障を抱えていた。もう一度、正しく体を作っていってほしい。
プロ野球に限らず、いまのスポーツ界ではしなやかさがなくなった。相撲の世界でも、うっちゃりという決まり手が少なくなった。うっちゃりは、体がしなってこそ決まる。しならない体のほうが、パワーが出るという考えは間違いだ。
随所で目につく腹立たしいシーン
ところで4月21日の阪神―
巨人戦(甲子園)では4回表、巨人の無死一塁からショートゴロの併殺プレーの際、二塁に滑り込んだ一塁走者の
ビヤヌエバが両手を広げて、セーフのポーズ。そのビヤヌエバを避けるように二塁手の
糸原健斗が一塁へ送球したため悪送球に(遊撃の野選と二塁の失策)。ボールは一塁側ベンチに飛び込むボールデッドとなり、審判団は協議の結果、ビヤヌエバの本塁生還を認めた。これに対して阪神球団はNPBに意見書を提出したという。
あれがアメリカならランナーの存在などお構いなしに野手はボールを投げていただろう。万が一ランナーの頭をボールが直撃すれば、至近距離だけに死に至る危険がある。糸原は当てたらいけないという意識から暴投になってしまった。これは日本人の良さだ。
ところが、海の向こうでは、送球を阻害する人間が目の前にいるほうが悪いという理屈だ。かつて日米大学野球選手権で、早大の東門明という選手が一塁走者として併殺プレーの際に頭に送球を受けて亡くなる不幸な事故も起きた。
アメリカでは普通のプレーかもしれないが、ここは日本である。ビヤヌエバの行為には、審判が日本球界の誇りにかけて「あれはいけない」と毅然たる姿勢を示すべきだった。
とにかく今季もエラー、暴投など腹立たしいシーンが随所で目につく。打球がフェンスまで届かない外野へのヒットが、なぜ二塁打になるのか。守備隊形に問題があって真剣に構えていない証拠だ。私が監督なら、ビシビシ文句を言っていただろう。
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廣岡達朗(ひろおか・たつろう)
1932年2月9日生まれ。
広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の
西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。
写真=BBM