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立浪和義コラム

将来の四番・村上宗隆選手の可能性/立浪和義コラム

 

課題はトップの浅さ


球界を代表する四番打者に成長するだけのポテンシャルはある


 非常に楽しみな若手選手が出てきました。

 ヤクルト村上宗隆選手です。まだまだ三振も多く、粗っぽさが目立ちますが、身長188センチと大きな体から5月2日現在で7本塁打、二塁打も7本。数字もそうですが、高卒2年目の19歳で、あれだけバットを振れること自体が素晴らしいと思います。

 これはあえて言えばの課題ですが、少しだけで気になったのは、ボールを迎える姿勢です。トップが少し浅い気がします。これは左バッターの村上選手がステップした右足が地面に着いたとき、グリップが少し投手に近くなっており、踏み出した足とバットのグリップ部分までの距離がしっかり取れていないということです。

 トップに入ったときの姿勢は、弓を引く動作に似ていて、大きく引き絞ったほうがスピードが出て、遠くまで矢が飛びます。ここの距離が遠くなればなるほど、ボールをとらえるまでの距離が生まれ、上半身と下半身に適度なねじれが自然に作れますので、ボールに強い力を加えることができます。これは「割れ」とも言われるもので、いいバッター、特に長距離打者が共通して持っている技術です。

 さらに言えば、変化球に泳がされたときも、割れができていれば、対応する時間が作れるということになります。

チーム状態もプラスに


 本人から聞いたわけではありませんので、あくまで一般的な傾向からですが、トップが浅いというのには2つの理由があると思います。一つは、空振りをしたくない、バットに当てなければと思い、早めに始動しようとして。もう一つは、おそらく高校生レベルでは、それでまったく問題なかったこともあるでしょう。

 今でも村上選手のスイングスピードの速さから、タイミングが合えば十分な飛距離が出ています。ただ、これから本当の意味でチームを背負う四番バッターに成長するためには、克服すべき課題でしょう。

 その意味では、今のように試合に出られるか出られないかで悩むことなく、使ってもらい続け、思い切ってプレーし続けることが一番の良薬だと思います。本来は、一塁ですからポジション的にも打たなければいけませんし、打たなければすぐ代えられてしまってもおかしくはありませんが、ヤクルトは、村上選手を将来の中心打者として、しっかり大きく育てたい、という思いがあり、かつ打線の調子がいいので、彼を重圧が少ない下位打線で使うことができていたのもあると思います。

 実際、試合を重ねるごとに、トップをしっかり作り、自分の間で打てるようになってきました。今後、調子の波は必ずあると思いますが、ヤクルトの首脳陣には、ぜひこのまま彼を使い続けてほしいと思います。

写真=BBM

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