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堀内恒夫コラム

堀内恒夫「なぜ佐々木朗希は163キロを投げれるのか?」

 

体全体の力で投げるフォームは粗削りではない/写真=BBM


 センバツ大会が終わってまだ1カ月、大学野球も始まったばかり。社会人野球の最高峰、都市対抗野球大会までもまだ2カ月ある。この時期に今年のドラフトの特集を組むというのは早いと思うが、それにはちゃんとした理由があるに違いない。そう、超目玉がいるからだ。

 先日、所属しているスポーツ報知から頼まれて、岩手・大船渡高の剛腕、佐々木朗希投手の連続写真を見て解説した。詳しくはスポーツ報知を見ていただきたいが、間違いなく言えるのは、彼が今年のドラフト会議の超目玉になるということ。12球団すべてが指名するなんて夢のようなことが起きるかもしれない。

 連続写真を見る前には、粗削りな投手だろう、体全体の力でなく、上背で投げるフォームをしているのだろうと想像していたが、そうではなかった。連続写真を見ると彼への印象が変わった。いかにも速い球が投げられそうな投げ方をしている。高校生レベルとしては今のままで十分だ。

 江川卓の高校時代よりも速いだろう。かく言う私も、ボールの速さでは高校時代から自信があった。今でも高校2年生の秋の関東大会のときが一番速かったと思う。155キロは出ていたはずだ。佐々木君は高校日本代表合宿で高校生史上最速の163キロを記録したらしいが、そのときの動画を見ても、ボールがストライクゾーンか、またはそのあたりに来ているのがすごい。私は、ボールは速かったが、ストライクゾーンになかなか行かなかったからね。県立高校でバックに恵まれないから、夏の甲子園大会の本戦に出て来るのは大変だと思うが、頑張ってもらいたい。

 佐々木君の登場前には、春のセンバツ大会で石川・星稜高の奥川恭伸投手が話題になった。1回戦の履正社高戦で150キロを超えるストレートを投げて17奪三振。一気に注目された。佐々木君と比較するとスケールの大きさでは若干劣るかもしれないが、ストレートのスピードに加えて変化球も結構投げる。超高校級であることに違いはない。完成度では佐々木君より上かもしれない。佐々木君がいなければ、奥川君が今年の高校生No.1になっていただろう。

 実際に数字は知らないが、速い球を投げる彼らに共通しているのは腹筋と背筋の強さだろう。2人とも腹筋と背筋が強いはずだ。私も背筋は240キロくらいあった。あの松井秀喜もそれくらいだった。速い球を投げたり、打球を遠くへ飛ばしたりする原動力になるのは腹筋、背筋なのだ。佐々木君などはトレーニングすればもっと速い球を投げられるだろう。伸びシロはいっぱいある。

 それにしても、大谷翔平菊池雄星、佐々木朗希と、岩手県からなぜこんなすごい投手が次々に出現するのだろうか。かつて、東北地方からはなかなかいい選手が出なかったのだが。専門家がいろいろとその分析をしていると思うが、私が考えるのは、東北地方という土地柄。冬が長く、雪が多いから、冬の間は野球以外のスポーツも経験しているはずだ。その動きの中からピッチングをやる上で大切なバランスのいい体が出来ていくのではないか。というのが私の想像。いずれにせよ、佐々木君が夏には岩手大会を勝ち抜いて、甲子園に顔を見せてくれることを願っている。夏の高校野球、岩手県大会が待ち遠しい。

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