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デーブ大久保 さあ、話しましょう!

中村剛也通算400本塁打達成。彼なら成し遂げると確信していました/デーブ大久保コラム

 

最初に見たときから、彼の打撃の才能はずば抜けていました。400本塁打達成おめでとう!サンペイ/写真=大泉謙也


 うれしい、という気持ちとアイツなら当然だなという思いがあります。7月19日のオリックス戦(メットライフ)の延長11回裏にサヨナラホームランを放ったサンペイ(いつもそう呼んでいるのですみません)こと中村剛也が、NPB通算400号本塁打を達成しました。

 史上20人目。長い野球の歴史の中で20人しか達成していない大記録ですが、サンペイなら軽々と超えるだろうと思っていました。それだけの才能がある男です。私が2008年に西武の打撃コーチに就任したときから、その思いは変わりません。毎年コンスタントに40本塁打以上を打てるだけの才能を持っていました。

 ただ、7本塁打に終わった07年はミートポイントが後ろの打撃フォームでした。前コーチにそういう指導をされてきたのです。サンペイはすごくナイーブで、あまり多くを語らない。と同時にめちゃくちゃ素直な男なんです。だから、それまでの打撃コーチの指導を素直に聞いてきたという経緯がありました。

 ミートポイントを後ろに置くというのは追い込まれてからするもので、最初から窮屈な打ち方はもったいない、が私の打撃の理論なのですが、それを度外視してもサンペイは絶対にミートポイントを前にしたほうがいいと思っていました。

 しかし、ミートポイントが後ろにある打者に対していきなり前という選択肢を与えるのは酷。直すにはいろいろなポイントがあり過ぎて、一つひとつ直していったらバッティングがダメになると思っていました。そこで特効薬が必要だな、と。しかし、07年の秋季キャンプでは何も言わず、ずっと見守っていました。

 しかし、キャンプの最後のほうであることをやろうと思い、サンペイにその練習を課しました。ロングティーの練習のときに、彼の2メートル先に半円を白線で書きました。「この2メートルより先でボールを打ってみよう」と。もともとミートポイントが前にある打者でも、そこまで前だと不安になりますよね。

 でも、サンペイは私の提案に素直に従ってくれ、しかも1球目からすごい当たりのフライを打ったんです。多分、本人も驚いたと思いますが、一方で手応えをつかんだのかな、と思いました。これをやっていこう、そして前でとらえる練習をしようということになりました。

 明けて春季キャンプに臨んだときには、サンペイはしっかりとその打法できっちりと打てるようになっていました。この年の打撃に関しては以前にも話しましたが、当時の渡辺久信監督(現GM)から任されていましたので、サンペイには打率はいいからホームランを狙うように指導しました。打率2割前半で、6本の安打のうち5本がホームランでいい、と言いながらシーズンに入っていきます。まだまだこの話には続きがあるのですが、それはまた次回お話しします。

PROFILE
大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。

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