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川口和久コラム

無観客なら12球団一緒にすべきだ!【川口和久のスクリューボール】

 

2013年広島キャンプの新人休日雑感[左から鈴木誠也高橋大樹上本崇司]


オリの中の猿?


 年明け、各球団で新人合同自主トレが始動した。ジャージに名前が書かれたビブスを着けた初々しい練習風景は、プロ野球の1月の風物詩となっている。

 彼らは、会社で言えば、新入社員だよね。寮生活も含め、会社の決まり事をこれから覚えていく時期というのかな。俺の遠〜い昔のカープの新人時代を思い出すと、電話当番とか今の人に説明し出すと長くなりそうなことがたくさんあったが、これは今と同じじゃないかなと思うのは「ああ、これから毎日野球をやるんだな」と毎朝、思ったことだ。

 高校生なら授業があって部活でしょ。俺は社会人だけど、結構、ガッツリ働いたほうなので、会社の仕事があって、野球だった。それが授業も仕事も何もなく、1日中、野球だけの生活になる。

 最初はそれが幸せと思ったけど、何日かすると、逆に、これからはもう野球でしか評価されないと思って不安になった。サラリーマンと違い結果が出なきゃクビの可能性もあるわけだしね。

 俺のときは、広島での自主トレから大分の湯布院での合同自主トレに移った。山本浩二さん、衣笠祥雄さんもいて、すごく緊張した記憶がある。僕ら昭和はタテ社会だから、先輩へ直立不動での「こんにちは」を1日何十回も繰り返した。ただ、あとで思うと、この1カ月ほどは、プロ野球は何かというのを体の五感を全部使って吸収していた貴重な時間でもあった。

 自主トレの後がキャンプだ。当時の日南キャンプは、そんなにお客さんが多かったわけじゃないけど、前の年(80年)日本一だからそれなりに来てくれ、ドラフト1位の俺もそれなりに注目された。

 そのときコーチから言われて覚えているのは、「お前たちはオリの中の猿だから」という言葉だ。見られていることを力にしなきゃいけないし、見ている人を楽しませなきゃいけないという意味だったと思う。それはシーズン中も同じだし、あとアマチュアは頑張っていれば、「よくやったな」だけど、プロは敵のファンにヤジられ、広島の場合は味方のファンだってヤジる。キャンプはその予行練習みたいなものでもあった。

NPBで統一見解を


 ただ、今年は政府から首都圏中心に2月7日までの緊急事態宣言が出された。その中には入っていないが、宮崎は独自に緊急事態宣言を出していて、県と球団が協議のうえ、宮崎でキャンプをする球団は、7日まで無観客とすると発表された。新人にとっては“予行練習”がなくなり、選手もファンの声援がなく寂しいとは思うけど、これだけ感染が広がったら仕方ない。むしろ、俺が疑問というか、考えてほしいと思うのは、なんで12球団一律にしなかったか。

 現時点(1月16日)では、沖縄は制限しながらも入れる方向で進めている球団が多い。これはダメじゃないかな。俺はNPBで統一見解を出したほうがいいと思う。確かに地元の経済効果という問題はあるけど、沖縄でやるほとんどの球団は「自分たちも、7日までは無観客でいいんだけどな」と内心思っているんじゃないかな。ただ、当事者の球団は、毎年お世話になっているキャンプ地との付き合いもあって、なかなか言えないのかもしれない。NPBが「今年のキャンプの有観客はすべて8日以降」と決めてくれたら、みんなほっとすると思うよ。

 あと、もし、それでも有観客でキャンプをスタートするなら、感染した選手を絶対に責めないでほしい。リスクがある中で、あえてやったんだからさ。

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