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冷静と情熱の野球人 大島康徳の負くっか魂!!

桑田氏のコーチ就任は巨人にプラスをもたらすでしょう【大島康徳の負くっか魂!!】

 

就任会見での桑田新コーチ補佐。巨人の若手投手陣に何をもたらしてくれるか楽しみです[読売巨人軍提供]


菅野はいい決断では


 菅野(菅野智之)投手が、巨人に残留することを決断しました。こういう状況の時期でなかったらアメリカに行けていたんじゃないか、という気もしますが、でもこれで本当にチャンスが途絶えたというわけではないので、また次のオフという目標を持って、彼だったらしっかりやれると思います。今年32歳になるという年齢を考えれば、早く行きたいということもあるでしょうけど、その中で本人が決断したわけですから、いい決断だったんじゃないかと思います。もう、彼の夢がかなうかどうかというのは、どちらかというと世の中の状勢次第ということなのではないでしょうか。まあ、1年後に状況がどうなっているかというのも、予測がつかないところではありますが。

 ただこの決断は、巨人にとっては大きいですよね。これで、菅野、戸郷(戸郷翔征)、井納(井納翔一)、サンチェスを加えれば先発ローテーションの右の4人が固まったわけですから。あとは左で、C.C.メルセデス、田口(田口麗斗)、今村(今村信貴)、高橋(高橋優貴)から競り合って2人出てきてくれれば先発が埋まる。菅野1人が残っただけで、一気に計算が立つ感じになってきます。もちろん、野球というのはいろんな要素がありますので、やってみなければ分かりませんが、机の上での計算だけだと、「ちょっとセ・リーグのほかのチームは太刀打ちできなくなるんじゃないか?」という可能性もありますよね。

ひたむきさと勝つ方法論を


 巨人の投手陣と言えば、桑田(桑田真澄)さんが投手チーフコーチ補佐で入閣することが決まりました。僕は、彼がプロ入りしたばかりのころに、何度か対戦しています。体は小さいし、150キロを超えるボールを投げるわけでもないんですけれども、やっぱりクレバーというか、ピッチングのうまさというものを、プロに入ったときから持っているピッチャーでしたね。自分の持っているボールを最大限に生かすすべを知っている。これはなかなか、プロ1年目や2年目でできることではないですよ。さすがに甲子園という大舞台でもまれてきたピッチャーだという感じがしました。

 僕は、彼の引退後も、「ドリーム・ベースボール」の野球教室で何度かご一緒させてもらう機会がありましたが、とにかく彼の野球の能力の高さにびっくりしたのをよく覚えています。ピッチャーでスゴいのは当たり前として、打っても、ショートを守ったりしても、瞬時の身のこなし方や、ある場面から次につなげるプレーの判断などがスゴい。その姿を目の当たりにして、「スゲエなコイツは。野手になってもスゴかったんだろうな」とホントに感じました。

 先ほども書いたように、巨人は右ピッチャーが主体の陣容になるでしょうから、桑田さんの起用はいいんじゃないですかね。宮本(宮本和知)投手コーチは左投げですし。特に若い戸郷あたりには、1つのボールの生かし方とか、ゲームの中でのマウンド上でのいろんな場面への対処の仕方といった話が、大いに参考になるのではないでしょうか。伸び盛りの若いピッチャーに対して、桑田真澄というカリスマ性は、絶対に生きてくると思いますね。

 桑田さんは、性格的にはあまり周囲に合わせていくタイプではない、というところもありますが、やはり野球への向き合い方というのは、現役時代からすごいものがあると思います。ですから、例えばボールの握りがこうで、こういうふうに投げて、というような技術的な面よりも、意識の面での期待が大きいですね。野球に対するひたむきさだとか、勝つための方法論だとか、そういうところをチームの後輩に伝えていくことができれば、巨人の投手陣にとって大きなプラスになると思います。聞いてすぐにものにできるかどうかは別にして、何か、選手たちが変われるヒントが見つかるような助言をしてくれる存在なのかな、という感じがします。これまで現場復帰がなかったのにはいろいろな事情があるのかも分かりませんが、今回の桑田さんの復帰は、巨人にとっては英断だったと思いますね。

ラソーダさんと星野さん


 ドジャースの監督を20年にわたって務めたトミー・ラソーダさんが亡くなりました。「私の体にはドジャーブルーの血が流れている」という名言を残した方で、野茂(野茂英雄)がメジャーに行ったときの監督さんでもあります。野茂投手を「息子」と言って迎え入れるなど、人心掌握術に優れている人だったのでしょうね。

 私は、直接は、近鉄のアドバイザーをされているころにホテルで偶然出会って立ち話をしたことがある、という程度なのですが、やはり星野(星野仙一)さんが、ピーター・オマリー元会長からのつながりで親しくされていましたから、ラソーダさんにも何か親近感があり、亡くなられたというのは寂しいことです。

 星野さんが監督になって、中日のユニフォームをドジャースそっくりにしたとき、僕も1年間だけですが、そのユニフォームを着ていまして。「これがあのドジャースのユニフォームか」と思ったのを思い出します。いや、中日のユニフォームなんですけどね(笑)。でも、現役時代に着た中で、あれが一番好きなユニフォームでした。

 それにしても、ラソーダさんが亡くなったニュースでも、やっぱり出てくるのは日本では星野さんの名前ですからね。今回のことをきっかけに、「やっぱり星野さんというのは、並の監督ではなかったのだなあ」と、そのスゴさをあらためて感じている次第です。きっと、ラソーダさんとは、野球に対する情熱という部分で相通ずるものがあったから、意気投合したのではないでしょうかね。

PROFILE
大島康徳/おおしま・やすのり●1950年10月16日生まれ。大分県出身。右投右打。中津工高からドラフト3位で69年中日入団。3年目の71年に一軍初出場の試合で本塁打を放つ。76年にはシーズン代打本塁打7本の日本記録。翌77年に打率.333、27本塁打の活躍で不動のレギュラーとなり、79年にはリーグ最多の159安打、36本塁打、リーグ3位の打率.317の大活躍。83年には36本塁打で本塁打王にも。88年に日本ハムへ移籍、90年には史上最多の2290試合を要して2000安打に到達した。94年限りで現役引退。2000年から02年まで日本ハム監督も務めた。現役通算成績2638試合、2204安打、382本塁打、1234打点、88盗塁、打率.272。

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