ペナントレースに向けて重要な意味を持つ春季キャンプも終盤を迎えている。ここではセ・リーグをリードするであろう巨人&阪神に注目。まずは一軍本隊と主力&ベテラン中心のS班を分けてキャンプをスタートさせた昨季のセ王者から。沖縄2次キャンプ序盤、対外試合3試合を中心にリポートしよう。“突き上げ”が期待された一軍本隊だったが……。 文=坂本匠 写真=小山真司 ![](https://cdn.findfriends.jp/img.sp.baseball/show_img.php?id=4724&contents_id=p_page_101)
2月17日の広島戦で対外試合開幕投手を任されたドライチ・平内龍太は、3回を無失点に抑える上々のデビューを飾った
チェックポイント
◎投手は先発5,6番手と盤石ブルペン組に“新戦力” ▲200cm新人が話題の中心で野手にS班脅かす力なし ドライチが高評価 4位の伊藤も「実戦的」
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2月1日のスタートから前半は若手主体の一軍本隊と、主力組の一軍S班の2班に分かれてのキャンプとなった。宮崎で2月14日までの3クールを終えた一軍本隊は、その後、沖縄・那覇で独自調整を行っていたS班と合流するのだが、“本隊”とはいえ、宮崎から沖縄に移動できたのは投手11人、野手10人の21人のみ。1次キャンプでふるいにかけられ、2試合の紅白戦で結果を残し、アピールに成功した若手たち(一部S班以外の20代の主力も含まれる)である。2次キャンプ地の沖縄では11日間(休日除く)の活動中、7日間で練習試合が組み込まれており、17日に行われた今春初の対外試合から3試合は、主力組は出場せず。引き続き、実戦の場で“本隊組”の力がテストされた。
目立ったのが投手陣で、17日の広島戦(沖縄・那覇)、翌18日の
中日戦(同)と2戦連続のゼロ封(1勝1分)。中でも2人のルーキーが首脳陣を喜ばせた。まずドライチ・平内龍太だ。対外試合開幕投手を任され、3回1安打2四球無失点3奪三振の好投で上々のデビューを飾る。最速150キロを計時したストレートは、受けた
小林誠司に言わせると「スピード以上に力がある」。加えてこのストレートと同じ軌道から鋭く落ちるスプリットが良い。3回にそのスプリットで
曽根海成、
矢野雅哉から空振り三振を奪っているが、全47球中23球のストレート主体の配球も相まって、打者が反応できないほどのキレ、低めへのコントロールだった。
「同じセ・リーグなので『これくらいは投げられるんだぞ』というのは、一発目に見せてやろうかなというのはありました」と頼もしい右腕に、
原辰徳監督も「初登板であれだけ腕が振れるというのは大きな武器になる。いいスタートを切ったと思います」と合格点を与えた。
菅野智之、A.
サンチェス、
戸郷翔征、
井納翔一と、先発陣は4枠が固まっており、5、6番手をこの日、3回無失点の
桜井俊貴、最終回を無失点の
今村信貴、翌日の中日戦先発で4回1安打の
高橋優貴らとともに、争うこととなるが、楽しみな新戦力といえる。
もう1人のルーキーはリリーフでの起用が考えられている
伊藤優輔(4位)。広島戦、20日の
日本ハム戦(同)と2試合に計3イニングを投げて、許した走者は死球の1人のみ。「NPB球に合っていなかった」という宮崎での紅白戦でこそ
若林晃弘に本塁打を許したものの、短い期間で修正して名誉挽回。最速は148キロで、カット気味に動かしてファウルを稼げるのが良い。原監督は「打者をちゃんと見ながら投げている。実戦的な投手」と評価した。
一軍は結果がすべて 野手は二軍と入れ替えも?
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故障で昨季は一軍登板のなかった戸根千明。2月18日の中日戦に2番手で登板、力強いボールで2回をゼロ封
中継ぎ陣では昨季は左ヒジ故障のために一軍登板のなかった戸根千明が中日戦に2番手で登板し2回をゼロに。ブランクを感じさせない力強さを見せた。また、日本ハム戦では下半身のコンディション不良で育成契約となっていた
高木京介が背番号「057」で登板。2点を失いはしたものの、一軍復帰登板を果たし、支配下再昇格に弾み。故障者の復帰、新戦力の台頭で、もともと盤石だったブルペンは一段と厚みを増すこととなる。
誤算があるとすれば、先発ローテ候補の
横川凱か。日本ハム戦に先発するも3回6安打4失点。制球が甘く、ストレートを簡単にはじき返される力負け。この1試合で判断が下されるわけではないが、次の失敗は開幕一軍に向けては致命的といえる。
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2月17日の広島戦で見逃し三振を喫し、原辰徳監督から叱咤された北村拓己は、翌18日の中日戦で汚名返上の一発
そんな190cm左腕以上に苦しいのが攻撃陣だ。2試合を終えた時点で奪った得点は、中日戦で北村拓己が放ったソロアーチによる1点のみ。日本ハム戦にいたっては、9回二死までノーヒットで、「あわや〜」の赤っ恥を回避するのが精いっぱいだった。2試合を終えた時点で指揮官は「S班はあぐらをかいて笑っているんじゃないかな。S班を脅かすようなプレーをもっと出してほしい」と苦言を呈していたが、日本ハム戦後には「S班は(若手の存在を)見てもいないんじゃないの?」と評価を下方修正。
元木大介ヘッドコーチにいたっては、「一軍は結果がすべて。S班に挑戦できるような選手は見当たらない。これならば、全員、二軍と入れ替えを考えてもいい」とさらに手厳しい。
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今春キャンプの主役はドラフト5位の新人・秋広優人。対外試合初安打も放ったが、高校生新人が目立っているようでは……
紅白戦で(二軍投手相手に)7打数5安打し、話題を独占した200cm新人の秋広優人も、打球速度やスイングスピードなどデータが一軍クラスのポテンシャルを裏付けてはいるが、いざ対外試合になると3試合で内野安打1本のみ。速球系で簡単に追い込まれ、最後は落ちるボールに空振り三振というシーンが繰り返される状況だ。この段階で秋広に多くを望むほうが酷で、彼以上に目立つ選手が出てこないのが問題。新助っ人が来日時期を含めて未知数であることを考えれば、現有戦力からの突き上げはチーム力アップには不可欠なだけに、首脳陣は答えの見当たらない問題に頭を悩ませている。
練習試合結果と巨人の先発
2月17日@沖縄・那覇 巨人0×0広島 1[二]△
吉川尚輝 2[右]△
松原聖弥 3[中]
陽岱鋼 4[三]
岡本和真 5[指]△
大城卓三 6[左]□若林晃弘
7[捕] 小林誠司
8[一]△
秋広優人 9[遊]
湯浅大 〈投手リレー〉
平内龍太、桜井俊貴、
伊藤優輔、△今村信貴
2月18日@沖縄・那覇 巨人1×0中日 1[右]△松原聖弥
2[中]△
八百板卓丸 3[左]
石川慎吾 4[三] 岡本和真
5[捕]△大城卓三
6[遊]□若林晃弘
7[一]△
秋広優人 8[指] 陽岱鋼
9[二]△吉川尚輝
〈投手リレー〉△高橋優貴、△戸根千明、
田中豊樹、△
高梨雄平 2月20日@沖縄・那覇 巨人3×7日本ハム 1[二]△吉川尚輝
2[右]△松原聖弥
3[指] 北村拓己
4[三] 岡本和真
5[左]□若林晃弘
6[中]△八百板卓丸
7[捕] 小林誠司
8[一]△
秋広優人 9[遊] 湯浅大
〈投手リレー〉△横川凱、
伊藤優輔、
畠世周、△高木京介
※△は左打ちまたは左投げ、□は両打。赤字はルーキー