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立浪和義コラム

根尾選手には努力して根気よく続けていってほしい。岡林選手のバッティングは実戦向きです【立浪和義の超野球論】

 

根尾[右]に指導する筆者


自分のポイントで打つ


 2月20日がドラゴンズの臨時コーチとしての最終日でした。初日からキャンプに参加していましたが、一言でいえば「試行錯誤の日々」でしたね。伝えなければならないことは明確なのですが、どのようなタイミングで、どのような言葉をかけていけばいいのか。迷いながらも、結果的には直球勝負で、毎日、同じ言葉を繰り返し、繰り返し伝えました。

 今回は、若いバッターを中心に見ていましたが、全体的な印象としてはボールの呼び込み方、タイミングという点が、うまくできていない選手がたくさんいるということです。スイングには、個々の体格、パワーなどにより、いろいろな個性があっていいのですが、ボールを呼び込む間やタイミングの取り方は、共通するベースがあります。その大事な土台の部分に課題があった選手が多いということです。

 練習試合で好調の根尾昂選手も、タイミングの取り方に課題があった選手の1人です。彼は私と同じドラフト1位入団の遊撃手、しかも右投げ左打ちということで、2年前の入団当時から注目してきましたが、なかなか結果を残せずにいました。

 これまで見てきた中で感じていたのは、バットを振る力自体はあるのですが、振り出すとき、捕手側の左ヒジが背中側に入り、バットの出が遅れるという癖です。出が遅くなると、どうしてもバットではなく体を振ってしまい、自分の中ではバットを振れている感覚があっても、実際にはヘッドが走っていないスイングになりがちでした。

 このキャンプで根尾選手に、いかに自分のポイント、間合いで振るかをいろいろな言葉をかけ、いろいろな練習をしながらやってきました。理解力のある選手なので、自分の問題点については、すぐ把握したのですが、感覚的な癖というのは、なかなか1日や2日では直りません。できたと思うと、元に戻る繰り返しでしたし、これからもそれが続くと思います。

 特に実戦になると、どうしても打席結果に左右され、自分がやってきたことを疑い、違う何かがないかと目移りしてしまいがちです。また、投手もいろいろなタイミングで投げてきますので、結果が欲しいと、それに合わすために小手先で自分のスイングを変えてしまうことがあります。そうではなく、どんな投手が相手でも、自分の間合い、ポイントで打つことを考えてほしいと思います。

 今やっていることを、いかに根気よく努力し、続けていくかが、結果的には根尾選手にとって最短距離を行くことにもなります。

実戦向きの岡林


 ほかには、同じく2年目の岡林勇希選手のバッティングは実戦向きですね。タイミングの取り方、間の取り方、下半身の使い方が良い選手です。ただ、ボールが来たとき、投手側の腰が浮いてしまう癖があり、結果的にバットが下から出てフライになることがありました。まずはピッチャーの足元に強い打球、ライナー性の当たりを弾き返す意識を持つことでしょうね。下半身を鍛え、振る力をつければ、レギュラーも見えてくる可能性を持った選手です。

 今回は短い期間でもあり、そこで完全に何かを教え切るということはとてもできませんでした。ただ、きっかけとなるようなアドバイス、練習法については、できる限り伝えてきたつもりです。

 これから本格的に実戦が始まりますが、失敗から分かることもたくさんあります。失敗を恐れず、思い切って挑戦していくこと、そして、もう1つは、先ほど根尾選手について書いたときにも触れましたが、基本的な部分については、根気よくあきらめずに続けてほしいと思います。

PROFILE
立浪和義/たつなみ・かずよし●1969年8月19日生まれ。大阪府出身。PL学園高からドラフト1位で88年中日入団。1年目からショートのレギュラーをつかみ新人王、ゴールデン・グラブに。その後、95年から97年とセカンド、03年にはサードでゴールデン・グラブに輝き、96年にセカンド、04年にサードでベストナインを手にしている。09年限りで引退。通算2586試合2480安打、135盗塁、打率.285。487二塁打は日本球界最多記録でもある。

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