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2021何が変わる? TEAM REPORT

広島東洋カープの場合 伝統の機動力野球復活へ 河田ヘッド就任で走塁の意識が変わる?

 

昨年、2点差以内のゲームでは17勝22敗と苦戦した広島。今季はここ一番での1点を取るための走塁改革を掲げ、新たに就任した河田雄祐ヘッドコーチを指南役に、伝統の機動力野球の復活を推進していく。
文=前原淳


意識、理解、そして徹底


 2年連続Bクラスからの浮上を目指す広島のカギは機動力にある。昨季はリーグ2位のチーム打率.262を残しながら、僅差の試合では勝負弱さを露呈。佐々岡真司監督はキャンプ前から「昨年はあと1点、ここで1本が出なかったことが響いた。そこは徹底してやっていきたい」と機動力をテーマに掲げていた。指揮官の参謀として4年ぶりに広島に復帰した河田雄祐ヘッドコーチが機動力復権の指南役と期待される。

 春季キャンプから河田ヘッドの存在感は際立っていた。初日から精力的に動き、2日目はウオーミングアップ前の円陣で選手たちに1つテーマを課した。「ベースランニングで、ベースを回るときの体の角度を意識してくれ。まだ2日目だからちょっと角度をつける意識でいい。初日は(体の)慣らしもあったかもしれないけど、徐々に上げていこう」。昨春のベースランニングはウオーミングアップの延長のように行われていた印象がある。だが、ベースランニングは走塁の意識改革の礎になる。ベースランニングでの指示は定期的に出され、そして求めるものも段階的に高くなっていった。

キャンプでは、足の速い選手もそうでない選手も例外なく、ベースランニングでも体の角度がチェックされたり、スライディング練習も積極的に行われた



 選手がなんとなく分かっていることでも、理解させるために細かく説明する。言葉で伝えることで意識を高め、実践させることで理解を深め、細かく言うことで徹底を生む。3連覇した広島だけでなく、西武などでも浸透させてきた機動力は、一つひとつの意識の徹底から始まる。

 実戦では積極的なミスには寛容でも消極的なミスや意識の低さからのミスは看過されない。2月16日、ロッテとの練習試合(コザしんきんスタジアム)。2回二死二塁から矢野雅哉の中前打で二塁走者の大盛穂は本塁で憤死した。外野手が前進守備を敷いてたとはいえ、第2リードを含めたスタートの判断が悪かった。「お前がちゃんと2アウト2ストライクのタイミングでスタートを切っていれば、1歩ないし、1歩半早かったはず。1点取れていたはず」。試合後のミーティングではすぐに指摘し、改善を求めた。大盛個人だけでなく、チーム全体で共有した。状況によって頭を整理させることで判断も変わる。だからこそ、日々細かく伝え、説明し、実践させてきた。「意識の差が、結果の差になってくる」と河田ヘッド。その積み重ねが真の機動力を作り上げていく。

3月19日のソフトバンク戦[PayPayドーム]では、7回表に代走の曽根海成が二盗、内野ゴロで進塁して犠飛で生還、河田コーチ[左端]らベンチに迎えられる。シーズンでもこのようなシーンを何度再現できるか


 開幕直前の3月19日ソフトバンク戦(PayPayドーム)では7回無死一塁から盗塁、二ゴロ、犠飛で先制点を奪った。キャンプから徹底してきた形での得点に、河田ヘッドも「理想どおりだね。完ぺき。ああいう形で点が取れれば最高」と目を細めた。盗塁だけが機動力ではない。走塁技術に加え、状況に応じたスタート、自己犠牲の打撃、打席での粘り……すべてが合わさったとき、その威力は増す。磨きをかけた機動力野球とともに、広島が上位へと駆け上がっていく。

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