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【球団の未来を語る】ロッテオーナー代行兼球団社長・河合克美インタビュー・後編 ファンを惹きつける確かな道

 

描く理想の未来はいかなるものか──。直撃取材に答えてくれたのは、ロッテの河合克美オーナー代行兼球団社長だ。全社員の考えを聞くことから始め、新たな“球団理念”を今年3月に策定したロッテは、中長期的なビジョンを明確化させた。だからこそ新型コロナ禍に揺れる中で、再確認したことがあると言う。3回に分けてお送りするインタビューの後編。
取材・構成=鶴田成秀 写真=中島奈津子

優勝争いには若き4番・安田尚憲の成長も欠かせない


行き着いた今季の戦い方


──一方の攻撃の面では。

河合 それが今季のテーマとなるわけです。昨季はチーム打率が12球団で最下位(.235)。それでもリーグ順位は2位だったんです。あとは、どうやって点を取るか、そこをどう強化していくか。ただ、これが難しいんですよね。打者は3割でも一流。2割そこそこの打者が「明日から3割打者になります」と宣言しても、そう簡単にはなれません。でも、3割打者をいっぱい集めてくることもできない。その中で、どうやって勝つのか──。当面のライバルはソフトバンクになりますが、データを見れば、ソフトバンクとマリーンズの昨シーズンの平均失点と平均得点に大きな差があったんです。

──数字に目をやったわけですね。

河合 はい。ソフトバンクの平均失点が3.24で、平均得点が4.63。マリーンズは失点が3.90で得点が3.84でした。平均の数字を見れば1点差もないんです。

──『この1点を、つかみ取る。』のスローガンにつながるわけですね。

河合 そうなんです。3割打者はたくさんいない。でも、目の前の1点は、何とか守り抜けるかもしれないし、1点は取れるかもしれない。その中でデータを見れば、無死、または一死で走者が三塁にいる場面で、犠牲フライが圧倒的にソフトバンクのほうが打っていて、マリーンズは一番少ないんです。同じ場面での見逃し三振はマリーンズが7%で、ソフトバンクが3.5%。強いチームのほうが、最後の最後まで1点を取ることに必死になっているのに、この数字では、勝てるわけがないんですよ。

──その1点の差を埋めていけば、勝機が出てくる、と。

河合 何とかしがみついて、犠牲フライを打ったり、ボールを逃さず、ゴロを打って1点を取ることができれば勝てる。全員の気持ちがその思いになれば、数字は変えられるはずなんです。ノーヒットだって1点が取れるのが野球なんですから。そこからやるしかないんです。

──球団の未来を考え、たどり着いたのが今季の戦い方なのですね。

河合 そのことにみんなが気が付いて、理解して、取り組み始めたら、強いチームになっていくと思います。その間に若手が育ち、本当の意味でのスラッガーが出てくれば、1点、2点ではなく一発で4点取ってくれるような選手が育ってくれば、本当に強いチームになる。それには2年、3年かかりますが、まず今年は『この1点を、つかみ取る。』。これしかない。球団の未来を考えれば、今、どうしていくかも見えてきた。強いチームになるには、まずは目の前の1点からです。そして絶えず優勝争いをし、10年後も20年後も、ワクワク感を届ける球団になっていきたいと思っています。


PROFILE
かわい・かつみ●1952年5月27日生まれ。慶大経済学部を卒業し、75年に株式会社鐘紡、83年2月に株式会社博報堂、2004年7月に株式会社ロッテ・アドに入社。統轄部長を務め、07年9月に取締役に。08年10月からは株式会社ロッテの取締役を務め、10年7月から株式会社ロッテホールディングスの取締役政策本部長経営戦略室室長を兼ねる。13年9月から株式会社ロッテの常務取締役CMOを兼ね、16年6月に同社の取締役副社長CMOを兼ねて、18年に千葉ロッテマリーンズのオーナー代行に。19年12月からオーナー代行兼球団社長を務める。

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