“野球愛”を明かしてもらう新連載。第2回に登場するのは、大阪の名門府立高野球部の同期で、大阪大会準優勝の実績を持つお笑いコンビ、ロングアイランドの2人。特技がゴスペルで「歌ウマ」な松尾侑治さんと、いま売り出し中の巨人・松原聖弥を弟に持つ松原ゆいさんに、野球に打ち込んだ高校時代から、“ジャイアンツ愛”まで、たっぷりと語ってもらった。
取材・構成=坂本匠　写真=福地和男、BBM

いつのまにか巨人の虜

──お二人は阪神・矢野燿大監督の母校でもある大阪府立桜宮高出身で、野球部の同期だそうですね。

松尾　そうなんです。僕らが高校生のころ、矢野さんは現役晩年で。僕はキャッチャーだったんですが、矢野さんが阪神で使われていた防具などを寄付していただいて、それを練習で使わせていただいていました。それがすごくうれしくて、感謝もしているんですが、今、ちょっと複雑なんです。矢野さんの阪神を応援していいのか、はたまた巨人なのか……。

松原　矢野さんの『阪神監督就任記念桜宮高野球部OB会』では、先輩たちの前で漫才をさせていただいています。でも、弟(巨人・松原聖弥)の存在もありまして、そのころから巨人関連のお仕事をいただくことも多かったので、かなり複雑でした。どちらも優勝してほしいけど、そういうわけにはいかないですから。

──確かに複雑な立場ですね。でも、大阪出身のお二人ですから、子どものころは阪神ファンだったのでは？

松尾　親が阪神ファンで自然に。僕は新庄(新庄剛志)選手が大好きで、赤いリストバンドをしたりしていました。


松原　分かる。あのころは大阪の野球好きの子どもたちは、みんな赤いリストバンドしてたもんな。僕も父方の祖父、母が阪神ファンで、自然な流れで。やっぱり、新庄選手が大好きでした。野村(野村克也)さんが監督になってもチーム自体はずっと弱くて、新庄選手が希望の星でしたね。

松尾　遊びみたいな感じでピッチャーに挑戦したりね。僕、槙原(槙原寛己)投手の敬遠球をサヨナラヒットにした巨人戦(99年6月12日)を甲子園のライトスタンドで見てたんです。お立ち台で「明日も勝つ」。めちゃくちゃカッコ良かった。でも、翌日はボロ負けでしたけど。

松原　キャラクターが最高よね。あらためて気づかされるけど、子どものころは“阪神”だったんだよな〜。

松尾　初めて公の場で言えたんちゃう？「昔は阪神ファンでした」って。

松原　本当のことやもんな。

──今回、巨人ファン代表として登場いただいたのですが……。現在は『巨人ファン』ということで大丈夫ですか？

松尾　きょ、巨人ファンです。

松原　なんかウソくさいな(笑)。

松尾　でも、今は阪神の選手よりも巨人の選手のほうが詳しいしね。

松原　弟が入団して最初は聖弥だけやったんですけど、二、三軍の試合を見る機会が増えて、一緒に泥だらけになって一軍を目指すほかの若い選手を見ちゃうとね。自然と気持ちが入っちゃう。

松尾　相方の弟が巨人に入ったのがきっかけではありますけど、大阪から上京してきて、東京ドームに行く回数のほうが多くなりましたから。ライトスタンドで一緒に盛り上がると、いつのまにか巨人の虜に。あと、僕はヴィーナスがすごい好き。今年も可愛い娘が入ったのもチェックしてます。もう、巨人ファンというよりも、ヴィーナスファンです(笑)。

ティモンディがライバル？

──ちなみに、高校時代、お二人はどんなタイプの選手だったのですか。

松尾　部員が全体で約120人。僕らの代もスタートは60人くらいおったかな？僕は体育科でスポーツエリート。相方は普通科。差別的な目で見てました。

松原　エリートって、自分で言うな。でも、確かに学校の伝統なのか、体育科がスゴイというのはあったね。

松尾　その教えを受けて「普通科のヤツなんて」と思っていたんですが、入部から2カ月は体力作りのメニューしか与えられない中、最初に上の学年の練習に参加したのが松原でした。「うまいヤツ」というのが初めのころの印象ですね。

松原　そこがピークだけどね。僕の相方の印象はひどくて。入部してすぐ、誰にも言われていないのに、勝手に1年生の中のキャプテンをやり始めたんです。めちゃくちゃ調子乗ってるヤツがおるな、と。でも、野球に自信はあるんやろなと思っていたら、6月ころにキャッチボールが解禁となって、投げ方を見ると、めちゃくちゃヘタ。ゆっくりキャプテンをフェードアウトしていきました。

松尾　(笑)キャッチャーは喋(しゃべ)りも必要やから。監督にも「よく喋る」って理由で気に入ってもらえたからね。

──最上級生になり、2年秋に大阪4強。3年春は1学年下に山田哲人選手(現ヤクルト)がいた履正社高に勝って、大阪大会で準優勝します。

松尾　決勝はPL学園高に2対8で負けました。準優勝、興奮しました。僕はスタンドで応援団長してましたけど。ちなみに相方はランナーコーチ。

松原　4強の秋のときは背番号「4」をつけさせてもらっていたんですが、出たのは1回戦だけです。

松尾　僕はケガとかいろいろありまして、残念ながら最後はスタンドに。

松原　カッコつけ過ぎや。相方は万全の状態で出られませんでした。

──春に勝った履正社高に3回戦で敗れて最後の夏を終えます。松尾さんは大阪芸術大の音楽科へと進みます。野球は続けなかったのですね。

松尾　プロを目指していましたが、ケガもありまして……。

松原　どこも痛めてない。健康や。

松尾　高校で音楽と出合い、そちらの道に進むと決めました。野球は高校3年間真剣にやってきましたので、意地でもやらないと決めました。

──もったいない気もしますが。一方の松原さんはスポーツ推薦で阪神大学連盟一部の関西外語大へ進みます。

松尾　いいように言っていますが、彼というよりも、チームが良い成績を残したから、ですから。

松原　この話、書けるかな？　1学年で10人、スポーツ推薦の選手がいるんですが、みんなと話が合わないんです。僕以外の9人はセレクションを受けているのに、僕は書類選考のみ。ルートが違う(笑)。いまだに理由は分かりません。ただ、4年間、真剣に打ち込みました。

──最近は野球に関連するお仕事も増えているようです。

松原　ありがたいです。同期でもある『ティモンディ』(※愛媛・済美高野球部出身のコンビ)から、根こそぎ仕事を奪ってやろうと思っています。

松尾　あきらめた野球に形は違えど関われて親が喜んでいると思います。でも、逆に聖弥がオフにバラエティ番組に出まくっていたんです。だから、弟に聞きたい。バラエティ番組の立ち回り方を。

松原　弟が『ジャンクスポーツ』に出演する前に、「(ダウンタウンの)浜田雅功さんにどう絡んでいったらいいかな？」と聞いてきました。知ってるわけがない。まだ絡んだこと、ないんやから。元木(元木大介)コーチに聞いてくれ。

ロングアイランド的 2021推しメン！　松原聖弥「僕らの仕事が掛かっています」

　血がつながっているから、当然です。今年は梶谷隆幸選手がFAで加入し、これからE.テームズ選手にJ.スモーク選手も加わります。出場機会、相当減るな。弟、ヤバいなと思っていたんですが、悲壮感もなく、レギュラーを張る気マンマンなんです。その勢いは大事。あと、彼の働き次第でロングアイランドの仕事量も変わるので、絶対に活躍してほしい。彼は第3のロングアイランド。運命共同体だと思っているので、頑張ってほしいです。(松原ゆい)


PROFILE
まつお・ゆうじ<本名と同じ>●1992年3月1日生まれ。大阪府東大阪市出身。右投右打。捕手。B型。桜宮高(体育科)では硬式野球部所属。大阪芸術大に進み音楽科ヴォーカル専攻で特技はゴスペル。
Twitter：@uyuji0301
Instagram：yuuuuji.matsuo


まつばら・ゆい<本名／松原侑潔>●1991年12月11日生まれ。大阪府大阪市出身。右投右打。内野手。O型。桜宮高では硬式野球部所属。関西外語大に進み、阪神大学野球連盟1部でプレー。
Twitter：@yuihahaha3
Instagram：yui.longisland