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2021ドラフト候補クローズアップ スカウト熱視線のプロ注目プレーヤー

中川智裕(セガサミー・内野手)攻守走の三拍子そろう可能性秘めた大型遊撃手【2021ドラフト候補】

 

4強へ進出した昨年の都市対抗では、優秀選手に選ばれた。遊撃手では唯一の受賞選手だった。右打ちで188センチの長身。プロも待望するショートストップである。
取材・文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎

近大付高、近大を経て入社2年目。大学4年時は実力不足を理由にプロ志望届を提出しなかった。今季は本気で挑戦する


 ドラフト1位とは一般的に、各球団とも投手を最優先で指名する。野手補強はある意味で、突き抜けた“超逸材”でないと、最上位で獲得するケースは少ない。そんな“投高打低”の傾向にあるスカウト戦線において、近大出身者は2020、21年と2年連続ドライチを輩出している。

 中川智裕が「尊敬する人物」に真っ先に挙げるのは、近大で2学年先輩の楽天小深田大翔だ。神戸国際大付高から近大、大阪ガスを経て20年ドラフト1位で入団。ルーキー年の昨季は112試合に出場し、二塁と遊撃を守った。新人王は西武の3年目右腕・平良海馬に譲ったが、2位の得票であり、ベストナイン遊撃手部門でも西武・源田壮亮に次ぐ票を集めた。

 1年秋から遊撃の定位置を獲得した中川は、小深田と二遊間を組んでいる。

「2個上の主将なんですが、面倒見の良い先輩でした。黙々とメニューをこなしていた姿が印象的です。朝練習のノックでは、いつも一緒に受けてくれました」

 昨年10月のドラフトでは近大・佐藤輝明に4球団が1位競合の末、阪神が交渉権を獲得した。中川にとって1学年後輩であり、三遊間を守ってきた仲だ。

「春季キャンプから報道を見てきまして、自分にとっても刺激になります。佐藤の打撃を、参考にしたことがあるんです。脇を開けて、低めをすくい上げる打撃フォームを試しましたが、ダメでした……」

 188センチの大型遊撃手・中川も大きな可能性を秘めている。近大からセガサミーに入社し、今季はドラフト解禁の2年目。希少な右打者で、NPBスカウト注目の存在だ。小深田、佐藤に続く3年連続でのドラフト1位の期待も高まる素材だ。

「打てるショートを目指しています。巨人・坂本(坂本勇人)選手が理想です。上位指名?行けたら何よりです」

手足が長い188センチでも、身のこなしは軽やかであり、守備でも魅せていく


多くの場数を踏むもプロ志望届の提出回避


 投手だった2歳上の兄・雅裕さんの背中を追い掛け、小学1年時からソフトボール(佐堂どんぐり)を始めた。大阪八尾ボーイズ、近大付高、近大を通じて同じチームでプレーしてきた。近大では1年秋から7シーズン遊撃を守ってきた。「田中(田中秀昌)監督にはずっとショートで使ってもらいましたが、打撃の部分で貢献できなくて……(87試合出場、打率.214、5本塁打、31打点)。最後のシーズンは、初めて打率3割(.326)に乗せられましたが……」。大学日本代表候補合宿にも3度招集。2年時の大学選手権、3年時の明治神宮大会と全国舞台も踏んだが、プロ志望届は提出しなかった。

「自分の実力ではまだ、プロレベルではない。社会人で経験と実績を積んでいくことが必要と感じました。セガサミーの練習に参加させていただき、恵まれた環境で自分にプラスになると思いました」

コロナ禍でも前向きにレベルアップを追求


 入社1年目は新型コロナ禍と向き合った、緊急事態宣言が発出された4月7日以降は、チームとしての活動は休止。セガサミーはグラウンド、合宿所、室内練習所とすべての施設が八王子市内の同社敷地内にある。6月1日に練習が再開されるまで原則、外出禁止であったが、中川はこの期間を前向きに捉えていた。

「自分のやりたい練習ができました。ラダートレーニングにより、守備における足さばきを鍛えました。身のこなしで、あと一歩で追いつける打球も出てくる」

 好きな言葉は「凡事徹底」。グラウンドと合宿所の往復であり、日常生活では感染予防対策を徹底。「当たり前のことを当たり前にする」と、自室もこまめに掃除して、落ち着いた時間を過ごした。

 都市対抗東京二次予選では一番打者として、2年ぶりの出場権奪取に貢献した。東京ドームでの本戦を通じて10試合で1失策と、持ち味の鉄壁のディフェンス力を見せた。50メートル走6秒0と遠投110メートルの強肩を武器に、広い守備範囲を誇り「捕ったら、アウトにする」と胸を張る。遊撃手の見せ場である三遊間、二遊間の打球を処理するのが、中川の醍醐味だ。

 一方、課題の打撃は予選では6試合で23打数2安打(4打点)と苦しんだ。本戦ではNTT西日本との準々決勝、7回表二死満塁から貴重な追加点となる走者一掃の左越え二塁打。9回表にも適時打を放ち、4打点の活躍を見せた。惜しくも延長10回タイブレークで敗退した、ホンダとの準決勝でも2安打。2年ぶりの4強進出が評価され、大会の優秀選手に遊撃手として唯一、選ばれている。

「守備でもノーエラーで行けたので、良い経験をさせてもらいました」

 都市対抗で11年ぶりの優勝を遂げたホンダ・檜村篤史をライバルとして挙げる。早大出身の同級生に、遊撃手として負けられないプライドが見えてくる。

 就任2年目の西田真二監督は、入社2年目の中川を攻守のキーマンに挙げる。

「プロからも注目されている。絶対的な中心選手としてやってほしい。身長があるが、細かい動きもでき、スローイングも安定している。打撃面では、凡退しても下を向かずに、たくましい姿を見せてほしい」

 つまり、名実ともにセガサミーの「顔」となるべく、期待を寄せる。「打てる遊撃手」を目指す上で、課題は打力強化。年間を通じたトレーニングの成果により「右方向へ飛距離が出るようになりました。あとはミート力を高め、確率を高めていけたらいいです。技術的には体の前でヘッドをかえす意識です」と手応えを口に。都市対抗では七番だったが、今季は「クリーンアップを任されるようになりたい」と意欲的にバットを振っている。

 チームの勝利に貢献した上で、個人的にはプロへの思いを当然、持っている。

「自分に与えられた仕事をしっかりやっていけば、行けると思います。まずはプロ野球選手になって、一軍で活躍して、“億プレーヤー”になりたいです」

 自身の性格について「おとなしいほうだと思います」と分析するが、グラウンドに立てば勝負師に変貌する。大型遊撃手が攻守走で、グラウンドを駆け回る。

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