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北山亘基(京産大・投手) 151キロ右腕が見据える主将兼エースの矜持

 

関西六大学リーグで2018年秋以来のV奪還を目指す京産大は21年、主戦投手が主将を務める。名実ともチームの“顔”が5年ぶりの全国舞台へと燃えている。
取材・文=沢井史 写真=毛受亮介

関西六大学リーグの主将ナンバーは「1」。大きな責任を背負ってマウンドに立つ


 すらりとした長身から投じられるストレートは、大学2年秋に151キロを計測。京都成章高時代から潜在能力の高さは、注目の的だった。3年夏は主将として同校19年ぶりの甲子園へ導いた。神村学園高(鹿児島)との初戦(2回戦)で、2対3で9回サヨナラ負けしたが、最速142キロのストレートを武器に11奪三振。プロ志望届を提出したものの、ドラフト会議が近づくにつれて、不安が募ってきたという。

「あのころは体も細かったですし、当時のままの実力では、プロへ行くのは厳しいのかなと、考えるようになったんです。現にドラフトでは指名されませんでしたし、自分はプロに行くにはまだ早かったのかなと思いました」

 京産大への進学が決まると、2年生以下のチームに交ざって練習を継続し、体力強化を図ってきた。1年春から関西六大学リーグでデビュー。1年秋には主にリリーフでマウンドに立ち計9試合、18回2/3を投げ、規定投球回には不足ながら防御率0.96と好成績を残した。

 高校までは、先発がほとんどだった。救援はイニング途中から登板する機会もあり、コンディショニングの難しさを痛感。先発投手からの思いを、継いでいかないといけない。冷静さを意識した。

「打たれたら練習で追い込みたくはなりますが、追い込み過ぎたら、逆に沼にはまってしまうこともある。それで、ケガをしてしまっては元も子もないです。もちろん課題は真摯(しんし) に受け止めますが、そこを段階的に考えて、自分にはまず、何が必要かを考えるようにしました。高校時代は力任せに投げていたので、大学ではフォームから見直して、体づくりを第一に頭に入れています」

先輩・平野を参考にスプリットを習得


 素顔は実直な22歳だ。さすがは高校、大学と投手ながら主将を任されただけのことはある。質問時は相手の目をしっかり見つめ、理路整然と表現。言葉にできる考える力がある。昨年の新型コロナウイルス感染拡大の影響による活動自粛期間は、自身を見つめ直す時間に費やした。

「足首などを柔らかくするために、足裏、足首などのストレッチに興味を持っていたんです。ある動画サイトでは足首の神経伝達系のトレーニングがあり、正しい体の使い方を勉強して、自分に合うコンディショニング法も試しました」

 勉強熱心さは、チームでも一目置かれる存在だ。京産大・勝村法彦監督がエースとして負担がかかることも承知の上で、主将へ任命したのには理由がある。

「人間性が高い。最適任者でした」

 2001年秋に監督に就任して以降、初となる「主将兼エース」は、心技体においてチームの支柱的存在となっている。

 北山が常に追い続けるのが京産大の先輩である平野佳寿(現オリックス)だ。

「大学進学時から、監督から平野さんの話をよく聞いていました。平野さんは関西六大学リーグ最多の通算36勝に加えて、404奪三振という記録を持っていて『どうしたら、こんな数字を出せるのか……』と驚かされることばかりでした」

 平野はMLB2球団を渡り歩き、今季から古巣・オリックスに4年ぶりの復帰。北山にとっては身近な存在であり、ストレートを軸にスプリット、フォークなどを操る投球術を参考にする。そして、最もあこがれるのは、ストレートで空振りが取れる部分だ。質の良い真っすぐを低めへ集めることを意識する。さらなるレベルアップのため、3年秋のシーズン後に着手したのがスプリットである。真っすぐと同じ腕の振り、また、同様の軌道から打者の手元で変化する“勝負球”により、投球の幅が広がっている。

 故障が少ない平野のコンディショニングにも着目し、日々のストレッチなど、体のケアにも強くこだわるようになった。

開幕戦で2安打完封V奪還へ好発進


3年秋までにリーグ戦通算8勝。今春の大院大との開幕カードでは完封し、チームも連勝と好スタートを切っている


 昨春のリーグ戦中止を受けた同秋は、星一つの差で優勝を逃し、2位だった。北山は2勝にとどまり、防御率3.41と優勝に貢献できなかった。3年秋の終了時点で通算8勝。勝村監督は「ポテンシャルから見れば、もっと勝っていてもいい投手」と、最終学年の奮起を期待している。ただ、北山に焦りはない。

「変に先を考え過ぎないように、その日にできること、その日に最大限にやることをやるだけです。これからも、そういう姿勢は変えずにいきます」

 今春の開幕カードとなった大院大1回戦では先発して、2安打完封勝利を挙げた。3回までは1人も走者を出さない完璧な投球を披露。4回には連続四球などで満塁とするも、キレのある真っすぐで一邪飛に打ち取り、このピンチを切り抜けた。5回以降に出した走者は安打の1人のみで、9奪三振と好発進した。

「前半は抑えようと気持ちが先走ってストレートが上ずっていたのですが、後半は何とか低めに集められました」

 投手としてよりも、主将として開幕戦の白星に貢献できたことを心から喜んだ。NPBスカウトは、140キロ中盤のストレートをコンスタントにマークする球質の良さを高く評価している。

「一戦一戦を大事に戦いたい。その先に、リーグ優勝やプロへの道が見えてくる」

 主将兼エースの矜持――。まずは、チームリーダーとして18年秋以来のリーグ優勝、そして、16年以来となる大学選手権出場を目指している。全国舞台で自身をアピールすることにより「高校のときからずっと目標にしている」と話す野球最高峰の世界も近づいてくるはずだ。

PROFILE
きたやま・こうき●1999年4月10日。京都市出身。182cm 80kg。右投右打。京北第一小3年時、京北ファースト少年野球クラブで内野手として野球を始める。5年から投手。周山中では軟式野球部でプレー。京都成章高では1年夏から背番号10でベンチ入り。2年春からエース。3年夏に甲子園出場。京産大では1年春から登板し、3年秋までに関西六大学リーグ通算8勝。最速は151キロ。変化球はカーブ、スライダー、ツーシーム。チェンジアップ、スプリット。

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