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2021ドラフト候補クローズアップ スカウト熱視線のプロ注目プレーヤー

【2021ドラフト候補】中山誠吾[白鴎大・内野手] パワーと好守が同居する大型ショートストップ

 

関甲新学生リーグに所属する白鴎大は過去に大山悠輔(現阪神)、大下誠一郎(現オリックス)を輩出。パワーヒッターが育つ土壌にある。スケール感のある190センチの遊撃手も、プロの熱視線が注がれる。
取材・文=大平明 写真=長岡洋幸

あこがれの選手はイチロー。2009年のWBC決勝で優勝を決める一打を放った姿を見て、自らも左打ちに変えたほどだ


 190センチ97キロの中山誠吾は大型ショートとして注目を集めている。かつてヤンキースで一時代を築いたショートストップのデレク・ジーターに匹敵するほどのスケール感がある。幼いころからずっと、クラスで一番身長が高かったというが、身体能力も規格外だったという。

「小学2年時に軟式野球チームに入ったんですが、最初のちょっとしたテストで遠投をしたら70メートルくらい投げたんです。あとから聞いたら、すぐに全体集合がかかって『アイツをメンバーに入れろ』と皆で話していたそうです」。また、陸上競技でも好成績を残していた。「宇都宮市の大会で走り高跳びに出場して小5、小6と2連覇。中学生のときには170センチの高さをはさみ跳びでクリアしていました」。

 野球でも高身長を生かして投手へのコンバートを勧められたが、遊撃手のポジションにこだわった。「小4から父が監督を務めるチームに移ったのですが、その父が現役時代にショートを守っていてあこがれがあったんです」。中学時代は父から毎日のように、ノックを受けていたという。「グラウンドが近くにあったので、春休みも夏休みも休んだ記憶がないです。声の出し方やけん制の入り方なども教えてもらったのですが、それはいまだに役立っています」。白鴎大に入学後はチーム事情により2年時は一塁、昨年は三塁を守っていたが、最終学年の今春からは慣れ親しんだ遊撃に復帰している。

「3年ぶりなので、動きを思い出すまでに2〜3週間かかりましたが、やっぱりショートは華があるポジションなので、プレーしていて楽しいです」

 立派な体格だが、動きはスムーズだ。

「ずっと守ってきたポジションですから違和感もないですし、練習をすれば動けるようになりました。逆に体が大きい分、ふつうの選手なら抜かれてしまう打球にグラブが届きますし、肩には自信があるので、三遊間寄りの位置からでもノーステップで投げられます」。その言葉のとおり、送球には安定感がある。また、最近は動画を見る機会も増え「いろいろなプレーを見たほうが、自分の発想も広がると思って、守備では自分と同じ長身でショートの坂本勇人さん(巨人)を参考にしています」と研究にも余念がない。

1日6食もトレーニングの一環


 打撃については、2年秋に急成長。リーグ最多の11打点を挙げ、昨秋はリーグの本塁打王となる4本を量産した。そのカギとなったのは、食トレとウエート・トレーニングによる体重アップだ。

「大学2年のときに(白鴎大で2年先輩の)大下誠一郎さん(現オリックス)から『太らないと、上へ行けないぞ』と言われたのがきっかけで、1日6食。空いた時間はいつも食事をしているような感覚でしたが、『これもトレーニングだ』と思って続けました。同時にベンチプレスやデッドリフトなど部位を変えながらウエート・トレにも取り組んで全身を鍛え、スクワットやダッシュで下半身も強化しました。すると、春季リーグでは87キロだった体重がひと夏で97キロまで増えました」

 効果は秋季のリーグ戦初戦の初打席からすぐに表れた。「フォークボールをすくってホームランを打ったんですが、崩されても外野の後ろまで打球が飛ぶようになったんです。追い込まれてからセンター返しや流し打ちをした打球がフェンスを越えることもあって、ずっとヒットの延長がホームランだと考えていましたが、昨秋はホームランを狙ってフェンスの前に落ちるのがヒットと感じるくらいに意識が変わりました」。

 一冬をかけてフォームも改善した。

「肩が下がるクセがあったので、力まないように軽くバットを握り、トップを下げて平行に回転してスイングするようにしました。低めの変化球に手を出さなくなりましたし、外角のボールに対しても外野の頭を越えるようになりました。インコースについては体が大きい分、苦手だと思われがちですが、もともと、得意なコースなので、外角も打てるようになって打撃の幅が広がると思います」

大学3年間を経て希望進路はプロ一本


 高校時代は同級生の石川翔(現中日)や1学年下の益子京右(現DeNA)を間近で見て「自分も『プロに行きたい』と言うのはおこがましいと感じていた」とプロ志望届は提出せず。しかし、大学3年を経て進路をプロ一本に絞っている。

「石川とは2年秋から3年春まで寮の同部屋で仲が良かったんですが、『先にプロへ行って待っているから、4年後に来い』と言われていて、今もたまに連絡を取ったときは『待っているぞ』と声をかけてくれるんです」。石川とは、忘れられないエピソードがある。「2年春の栃木大会決勝で文星芸大付と対戦して、延長10回に自分がタイムリーエラーをして0対1で負けたんです。イレギュラーしていたこともあって、普段は厳しい宇賀神修監督(当時)もかばってくれましたし、先輩も誰一人として責めることはなかったんですが、悔しくて一人で泣いていて。その後、エラーしたのと同じ三遊間の打球が来ると気持ちが引いてしまったんですが、そんなときに石川が『オマエならできる!』と言ってくれて。それで自分も吹っ切れて人一倍ノックを受けて、直後の関東大会では最初のショートゴロをしっかりとさばくことができたんです」。背中を押してくれた石川とは「お互いプロという立場になって対戦できれば」と話す中山。この4年間の成長を友に見せつけるためにも、NPBの舞台を目指す。

190センチの体格を誇り、昨秋はリーグ本塁打王。長身ながら均整の取れた体格でショートの守備もソツなくこなす


PROFILE
なかやま・せいご●1999年5月9日生まれ。栃木県出身。190cm97kg。右投左打。田原西小2年時から西サンライズで野球を始め、4年から田原中までは栃木ヤングベースボールクラブでプレー。青藍泰斗高では1年秋からベンチ入りし、2年春は栃木県大会準優勝。3年夏は県4強で甲子園出場なし。白鴎大では2年秋に最多打点でリーグ優勝に貢献。昨秋は最多本塁打(4)を放ち、昨年12月には侍ジャパン大学代表候補に選出(新型コロナウイルスの影響で強化合宿は中止)

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