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チームに勢いをもたらすRELIEVER INTERVIEW

ソフトバンク・泉圭輔インタビュー 無意識に力を込めて 「点を取られずにかえっていくのがリリーフの仕事」

 

12球団屈指の安定感を誇るリリーフ陣の中で、三振の山を築くセットアッパーのL.モイネロ、タフネスクローザー・森唯斗にも引けを取らない存在感だ。普段は笑顔いっぱい、あどけない表情を見せる24歳。だが、マウンドに上がれば、ピンチにも動じない頼もしさが光る。
取材・構成=菅原梨恵 写真=小山真司、湯浅芳昭

4月17日、18日の西武戦[メットライフ]でも連投。17日の登板では二死一、三塁のピンチを招いたが後続を断ち、18日は3者凡退でピシャリ


少しずつ“プロの投手”に


 4月25日現在、登板数14試合は、チームメートの嘉弥真新也と並んでリーグトップ。しかも、失点はゼロだ。得点圏での被打率.091(11打数1安打)という数字も、今季の泉圭輔の頼もしさを物語る。このままのペースで投げ続ければ、球団記録のシーズン72試合を超えることになるが、「いけるところまでいってみたい。投げさせてもらえるなら投げます」と、右腕は力強く言い切った。

――開幕から無失点登板が続いています。

 1戦1戦、目の前の試合を全力で投げていく中で無失点が続くというのはいいことだと思います。どこまで続くかは分からないですけど、どんな状況でも自分がやることは一緒。調子も今はいいですし、少しでもこの状態をキープできたらいいなと思います。

――ここまでは勝っている、負けている、イニングの頭、途中など、試合の展開に関係なく投げてきています。泉投手自身は、中継ぎでの自分の役割をどうとらえていますか。

 昨年もそうでしたが、さまざまな場面を任せてもらっています。自分として目指しているのはやっぱり勝ちパターンではあるんですけど、まだ定着し切れていないというのが正直なところです。ただ、僕みたいな僅差で負けている場面とか、勝っている状況での5回、6回で投げる投手というのは、チームにとっては必要になってくるので。それに、うちのリリーフ陣はとても層が厚い。簡単にはやりたいポジションを任せてもらえるわけではないからこそ、今の自分の役割には満足しているわけではないですが、頑張りたいなとは思います。

――緊迫した場面での登板もあり、試合に入っていくのは難しいのではないかと思うのですが。

 リリーフでやっている以上は、ある程度、試合の流れができている中で入っていきますからね。確かに難しいときもありますが、そこはもう割り切って。

――マウンドへは、どういう意識を持って上がっていますか。

 あまりマウンドの上で考えるのはやめようと思っています。考え事はマウンドに行く前に済ませるようにして。特に調子が悪いときだと、今日はこうやって投げていこうとか、いろいろ頭の中でシミュレーションしちゃうんですけど、それでもなるべく無心で入れるように心掛けています。

――今季の泉投手は、特にランナーを背負ってからが粘り強いです。ピンチの場面では投球の内容や意識に変化はあるのでしょうか。

 自分が出してしまったランナーはもちろんかえしたくはないですし、ほかの投手のランナーも絶対かえしちゃいけない。そういう思いがすごくあるので、ギアはかなり上がっていると思います。とはいえ、自分で上げている意識はない。自然と上がっている感じですね。

――自分としては無意識。

 そうですね。やっぱり点を取られずにかえっていくというのがリリーフの仕事だと思うので、ピンチになれば勝手にギアが入るようになっているのかなと。ここまではいい流れで来ているので、あとはどれだけ勝ち試合で投げられるかが大事だと思います。

――連投もありますが、その際に気をつけていることはありますか。

 試合前のキャッチボールで投げ過ぎない、ということですかね。あとは、疲労をため込まないように。まだまだシーズン長いので、もっと、試合を重ねる中で体力をつけていかないと、です。シーズン通して一軍でやれるように。

――細身な泉投手ですが、プロに入ってから体の変化は?

 体重自体は増えてはいないので(入団時82キロ→現在76キロ)、あれですけど(苦笑)。でも、大学時代はずっと先発をやっていて、完投もしていた。プロでは中継ぎで連投もしていますし、1年間一軍で戦う体力は昨季、1年間一軍にいたことで少しはついてきたなというふうには感じていて。あとは、体以外の部分でも、生活リズムや登板間隔というところで、少しずつ“プロのピッチャー”になれてきているのかなとは思います。

――登板後は、ベンチで工藤公康監督と話をしている場面も見かけます。どんな会話をしているのでしょうか。

 だいたいいつもその日のピッチングを振り返っての「球が高い」とか「球が良くない」という話を最初にされますね。でも、最終的には「ナイスピッチング」という言葉をいただけるので、いつもそう言ってもらえるように頑張っている部分もあります。

――細かい指導もあったりしますか。

 試合中はないですが、練習では細かい部分まで教えてもらうこともあります。キャンプ中は特に。技術的なところはもちろんですが、体づくりや体の使い方など、一番は基本的なところです。シーズンに入ってからは逆に体の状態を気にしていただいています。

体の変化に敏感


 経験というのは、実に大きい。2年目の昨季、泉は40試合に登板。自他ともに認めるぶ厚い選手層のリリーフ陣に身を置きながら、1年間、一軍で戦い抜いた。だからこそ、2021年も“やってみせる”。昨季以上の働きで、チームをリーグ連覇、5年連続の日本一に導いていく。

――昨季は新型コロナウイルスの影響もあって難しいシーズンでしたが、一度も出場登録を抹消されることなく完走しました。どんな学びがありましたか。

 一番大きかったのは、「1年間一軍でやれるんだ!」というのを自分の中で形に残せたことですね。それは今も自信につながっているのかなと思います。あとは、試合、登板が続いていく中での自分の体の変化などに気づけた。この部分は今年に生かせると思います。

――体の変化とは、具体的には?

 シーズンが進むにつれて体のいろいろな場所が張ってくるんですけど、序盤と中盤、終盤とではその場所もどんどんと変わってくる。やっぱり終盤になればなるほど疲れがたまってきて、あちこち張ってきます。昨年そういう経験をしたことで、今年はうまくケアしていければいいかなと。そこも学びの一つですね。

――ケガなく1年間やれた一番の要因は何だと思いますか。

 う〜ん、何だろう……。もともと体が強いほうではないんです。でも、これまでケガをしたことってないんですよね。ケガに鈍感で、気づいてないだけなのかなとも思いますが(照笑)。

――ケガへのリスクヘッジは?

 球団のトレーナーさんに治療してもらうというのはもちろんあるんですけど、あとはセルフケアですね。ストレッチとかもそうです。毎日、自分の体の状態を、自分で確認することが大事。体の可動域だったりを、例えばどのくらい角度が出ているかなとか、ちゃんと測って記録することもしています。数字にして、目に見えるようにするんです。

――昨季見えた課題についてはいかがですか。オフシーズンやキャンプなどで取り組んできたこともあるのでしょうか。

 課題というか、先ほどもお話ししたとおり、うちのリリーフ陣は層が厚いので、勝ちパターンに入ろうにもなかなか入り切れない。そうなると、まだまだ自分の武器になるものを磨いていかないと難しいのかなと思います。

――泉投手から見たときに、自身の一番の武器は何だと思いますか。

 やっぱりストレートですかね。ボールの力強さであったり、ボールの角度であったり。いろいろな細かい体の使い方とかは、その日、その日で見直したりして、どんなときでも質の高いストレートが投げられるようにしたいです。

――将来的にはどんな投手になっていきたいですか。

 中継ぎで、勝ちパターンの一角に入るのが理想ですね。試合の後半で1イニングを任せられるような選手になりたいです。

――そのためにも、まずは今季の具体的な目標は?

 チームの日本一ももちろんですけど、個人的には50試合以上を目標にしています。昨季より試合数も多いですし、しっかりクリアしたいですね。

――目標に向けて、さらに力が入る理由の一つに、昨オフの契約更改の席で口にしたことから実現した、自身のグッズが発売されたこともあるかと思います。

 スタンドを見ていて最近よく目にするなって思っていますよ(ニッコリ)。今までなかなかない経験だったので、すごくうれしいです。

――「いずみん」グッズを手に熱い応援を送ってくれるファンに、どんな姿を見せてくれますか。

 今季は昨季以上にたくさん投げると思います。イニングの頭から登板してきっちり抑えることだけでなく、チームのピンチを救うのも大事な役割だと思うので、どんな状況でも1つでも多くの勝ちに貢献できるように。そんな姿を見ていただきたいです。

自らも監修に携わった念願のグッズ。スタンドで見かけるたびにパワーをもらっている (C)SoftBank HAWKS


ソフトバンクリリーフ事情 だから泉圭輔が必要だ!


■集中力と勝負強さで増す信頼

 L.モイネロが開幕こそ二軍スタートとなったが、すぐに復帰。今季も8回・モイネロ、9回・森唯斗の鉄壁コンビがドンと構える。固まり切らない7回も、現状では岩嵜翔、嘉弥真新也といった実績ある2人が基本線に。だが、調子に波がある岩嵜の状態を考えると、セットアッパー候補がもう1人は欲しいところ。その筆頭と言えるのが泉だ。どんな状況でも高い集中力を発揮して勝負強く、チームが抱える課題の一つ、四球を出してペースを乱すこともない。心配される体力面に関しては、インタビューのとおり、昨季の経験を生かしていければ。目指す“定位置”は見えている。

長身を生かして、高いところから投げ下ろすボールは威力十分だ


PROFILE
いずみ・けいすけ●1997年3月2日生まれ。石川県出身。188cm76kg。右投右打。金沢西高から金沢星稜大を経て2019年ドラフト6位でソフトバンク入団。1年目は大卒・社会人出ルーキーで唯一春季キャンプB組(二軍)スタートも、シーズン序盤に一軍登板のチャンスをつかみ、初勝利も挙げる。昨季はシーズンを通じて一軍で過ごして40試合に登板。その経験を自信に変え、今季はさらなる活躍、50試合以上登板を目指す。

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