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張本勲コラム

将来の日本球界を背負って立つ選手阪神の佐藤輝明とロッテの佐々木朗希は、大きくたくましく育ってもらいたい【張本勲の喝!!】

 

阪神のルーキー・佐藤輝明。将来は三冠王も狙える打者だ


超一流を目指せ


 メジャーへ挑戦していた山口俊が日本へ戻り、再び巨人のユニフォームを着ることになった。しかも2年契約だ。通用しなかったと帰ってくるのは仕方がないが、帰国してすぐに日本でプレーできるのが不思議でならない。私は納得できない。ある程度の期間を設けるなど規約を作る必要がある。メジャーへ行くのは自由だが、帰ってくるのも自由では、もう何でもありとなって、日本のプロ野球がダメになってしまう。

 自分たちの会社で考えてもらえば分かるだろう。違う会社に行きたいと仲間が言い出したとする。そのために退社することになれば、会社にとっては大きな損失である。しかし本人が行きたいというものは止められない。新天地で頑張れと送り出すことになると思うが、しばらくして「新しい会社では通用しませんでした」と戻ってきたとしたら、あなたが社員ならどう思うか。私が納得できないのはそこだ。それを許す会社にもあきれるし、お帰りなさいと歓迎する気になど到底なれない。

 首位を走る阪神に追いつくためにも巨人が山口を必要とするのは分かるが、それにしても節操がない。巨人の選手たち、特に投手陣はどう思っているのだろうか。貴重な1枠が奪われるのだ。口では「お帰りなさい」と言っても、腹の底では「何しに帰って来たんだ」と思うのが本当のプロだ。今後メジャーに挑戦する選手には強く言っておきたいが、もし挑戦するのであれば、もう二度と日本球界には戻らない、戻れないというくらいの覚悟を持って行ってもらいたい。

 さて、今回は私が気になる選手を取り上げよう。まずは阪神のルーキー・佐藤輝明だ。これまでにも何度か取り上げているが、やはりそれだけ魅力あふれる打者ということだ。将来は間違いなく球界を背負って立つ打者になると思うし、それだけの才能を持っている。

 ただ、やはり私も同じ左打者として、どうしても打撃フォームに目が行く。再三、指摘してきたように右足の上げ方が気になるのだ。現場に行って間近で見ていないから具体的なアドバイスは控えるが、足の上げ方が中途半端でタイミングの取り方に問題があるように思う。三振が多いのも、そこが原因だろう。追い込まれてもしっかりとフルスイングしている証拠だと三振を評価している解説者もいるようだが、私はそうは思わない。タイミングが合っていないから三振するのだ。

 それでも甘い球を逃さず本塁打にできる力が佐藤にはある。だが、私が佐藤に望むのは投手の失投を逃さず打つだけではなく、投手が自信を持って投げ込んだ渾身の一球を打つことなのだ。「あそこにしっかりと投げたのにどうして?」とエース級の投手が思うほどの打撃を見せてもらいたいのだ。それができれば次からの対戦も優位に立てる。エースだけでなく、どの投手にも「少しでも甘くなったらやられる」とより重圧が掛かるようになり、その重圧でコースが甘くなってくるのだ。

 現役時代の王(王貞治、巨人)がそんな打者だった。どの投手も王の一発が怖いから神経質になる。甘い球は投げられないという重圧が投手の指先を狂わせ、ボールが甘いコースへと吸い込まれてしまうのだ。その一球を王は見逃さなかった。世界の本塁打王とルーキーの佐藤を比べるのは酷かもしれないが、それほど佐藤には期待しているということだ。佐藤には正しい打撃フォームを身につけて、一流ではなく超一流の打者になってもらいたい。

合格点はこの打者のみ


 パ・リーグには気になる選手が2人いる。ロッテ佐々木朗希オリックス吉田正尚だ。

 阪神のルーキー・佐藤もそうだが、佐々木もまた将来の日本プロ野球を背負っていく逸材だと思う。大事にし過ぎている、もっとどんどん投げさせるべきだという声も聞こえてくるが、私は反対だ。まだ高卒2年目ということもあり、佐々木の将来をよく考え、しっかりとプロとしての体づくりを優先し、経験を積ませているロッテの指導を褒めてやりたい。無理して肩を壊したら誰が責任をとってくれるのか。

 あれほど話題性のある投手だ。営業面のことを考えれば球団も佐々木を使いたいに違いないが、そこを我慢して大事に育てている。昔なら客寄せパンダ的な扱いで投げさせられていたに違いない。

 私がロッテのOBとして佐々木に注文をつけるとすれば、もっともっと走り込んで強い下半身をつくってもらいたいということだ。投げることも大事だが、とにかくランニングの量を増やしてもらいたい。走って損になることなど一つもない。必ずピッチングに生きるからだ。

 オリックスの吉田は気になるというか、非常に注目している。私が長く保持した日本記録のシーズン打率.383はバース(阪神)やイチロー(オリックス)に破られてしまったが、吉田もその域に到達できる打者だと思っている。うまいバッティングをするし、小柄ながらパンチ力があって長打も期待できる。12球団の中で私が唯一、合格点を与えられる打者だ。昨年、首位打者のタイトルを獲得したのも大きな自信になっているはずだ。今年で28歳になる年齢を考えても、まだまだ伸びるはず。これからも向上心を持って徹底的に打撃を追求してもらいたい。

 しかしこの打高投低の時代に3割を打っている打者の何と少ないことか。人工芝だし、ボールは飛ぶしで打者が有利ではないのか。3割は打って当たり前、もっと高い数字で打者はタイトルを争ってもらいたい。

 交流戦が終わり、再びペナントレースが再開されているが、セ・リーグは阪神が少し抜け出し、それを巨人が追う展開となっている。阪神がこのまま行くのか、原巨人が意地を見せるか興味深いが、セはこの2チームを中心に今後も展開されていくだろう。面白いのはパ・リーグだ。ソフトバンクがやや調子を落とし、楽天が少しずつ上がってきたものの、まだまだ先は長い。交流戦で優勝したオリックスが元気だと、パはさらに盛り上がる。不思議な魅力のあるオリックスが、しばらくは台風の目となりそうだ。

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