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ダンプ辻コラム

「来たね、はい、打つ」の中田翔。笑う門には福来る、です【ダンプ辻のキャッチャーはつらいよ】

 

中田翔の満塁弾


また予感が当たった!


 また、予感が当たりました! 打つんじゃないかって思ったんですよ。あと出しと言われんようにすぐ電話したのに出なかったですね。忙しかった? いつも忙しい言ってますね。いいな、こっちはもう暇でならんのに。そんなに働いたら蔵が3つくらい立つんじゃないですか(笑)。

 巨人の中田(中田翔)の満塁ホームランです(5月14日、東京ドームの中日戦)。打つ前に「こりゃ、あるぞ」と思ったんですよ。なぜか分かりますか。あいつは打席で少し伸び上がって重心を一度、ストンと下げるでしょ。今までは、そのとき力が下に抜けず、下半身が硬かったんですよ。そうすると体に余計な力が入って、反動というのかグリップもガッと硬くなる。それが二軍から帰ってきたら、ふっと尻から下に抜けるようになって、手の引きに余裕があって柔らかくなったんですよ。それで間ができて、「来た! 打つぞ」じゃなく、「来たね、はい、打つ」となった。分かりますか、この例えで(笑)。

 僕がこんなことを話すと、「通算418本しかヒット打ってない男に、そんなこと分かるわけがないだろ」って思うかもしれんけど、キャッチャーを長くやっていたヤツは大抵、そういう感覚があると思いますよ。「あ、打たれる、ヤバイ」というのを察知する力ですね。それがなきゃリードはできません。

 でも、中田には誰が教えたんかな。二軍といっても、そんなに長くいたわけじゃないでしょ。自分で、というのは難しいと思います。小笠原(小笠原道大)あたりが怪しいと思うんですが、どうでしょうね。いや、怪しいと言うと、なんかの犯人みたいだな(笑)。

 あと打ったから当たり前かもしれんけど、表情が柔らかくなりました。よく笑ってますしね。いいことです。笑う門には福来る、です。あなたもそんな面倒くさそうに電話を取らんで、「はい、ダンプさん!」って楽しく笑って出たほうが、絶対にいいことありますよ(笑)。

 巨人と言えば、小林(小林誠司)がオープン戦のころに打撃開眼をしたという記事があって、気にして見ていたことがあります。そしたら体全体のバランスがすごくよくて、関節が柔らかいというか、力配分ができて、すごく柔らかい動きになっていた。自信を持った打席に見えて、よかったなと思っていました。

 ここ何年かは守っていても打っていても自信がなさそうに見えましたしね。打席で笑えとは言いませんが、ピッチャーの球を受けているときは、もっと喜びを出したほうがいい。「いい球! よし、もう1球来い!」ってね。そういうコミュニケーションでピッチャーを乗せて、力をもっともっと引き出せたりしますからね。

もっと思い切って!


 もう一つ大事なのは自分がどうやって不振から抜け出せたのか調べて整理することです。そうすることで次に不振になったときに役に立つし、バッターの勉強にもなります。こうやっておけば、このバッターは調子の悪いまま眠らせておけるかもしれんぞ、とかね。え? 418本のクセに? ダメですよ。そういうことは自分から言うからいいんです。人に言われたら腹立つ(笑)。まあ、確かに自分ができていたかというと分かりませんが、もうこっちはじじいなんだから好きに言わせてください(笑)。

 で、小林に戻りますけど、シーズンに入ったら、またさっぱり打てなくなって、また何だか自信がなさそうになってきた。大城(大城卓三)が打つから仕方ないけど、腐らんでやってほしいですね。見ていると、なんだか田淵(田淵幸一阪神ほか)が出てきたときの自分を思い出すんですよ。こっちのほうが守りは上なのにって、ついつい思っちゃうんですね……うん? 言いたいことは分かりますが、ここは自分で言わせてください。僕は、あんなかわいい顔はしてませんでしたけどね(笑)。

 前置きの話が長くなったけど、今回は見ていて不思議になるコリジョンルールの話をしようかと思っていたんですよ。あれを見ていると、腹が立って仕方がないんです。

 キャッチャーが必ずホームの左側を広々空けて、そこに走者が気持ちよさそうに頭から足からと滑ってくるでしょ。左手でさっと流すようにベースにタッチして。キャッチャーはボールを持っても、その滑ってくる選手に手だけでおそるおそるタッチに行くから、タイミング的にはアウトでも、滑っている途中の腰くらいに当たって微妙になる。あれってもったいなくないですか?

 捕ってタッチに行く中でランナーに当たっても何の問題もないんですから、もっと思い切っていかんと。捕ったら滑ってくるところにポンと置いて待てばいいじゃないですか。向こうは必ずそこに来るんだから。走者の体当たりだって禁止なんでしょ。なのになんで逃げるのかな。

 今はできんのでしょうが、僕はいつも捕ったら足をポンと出して走者を引っ掛けました。ちゃんと審判とも話して、どこまで大丈夫か確認してやってましたよ。向こうが滑ってきたらダメだから走者を見ず、ぼうっと立って待って、ボールを捕った瞬間に足を出すんです。コツは最後の最後、ベースを踏もうと足を上げたときに出すこと。必ず引っ掛かるか滑っていく。巨漢のチャーリー・マニエル(ヤクルト)がきれいにすっ飛んだこともありました。これは太極拳の先生に褒められたこともありますよ。

 このもう一つのコツは我慢です。ハーフバウンドでもなんでも体の前で捕る。簡単じゃないですよ。練習でもずっとやっていたんですが、やっぱりどうしたってバウンドが合わんときがありますよね。後楽園の練習でライトからの送球を捕り損ねたら、その球がつっと滑って、三塁側の入り口からまともに通路に飛び込んだことがありました。人がいたら大ケガしてましたね。あのときはほんと怖かったです。

【ダンプ・ノート】#03 シュートが苦手な打者の攻め


※1はストレート、4はスライダー、2、3はシュート。捕手からの視点


 今回はシュートや内角球が苦手で、アウトサイドの変化球にバットが出やすいバッターが相手のときです。まず初球は真っすぐの体寄りの球で脅かし、そのあとその近辺に2球シュートを投げる。あとはもう外にスライダーを投げたら絶対バットには当たりません。

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