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山崎夏生のルール教室

打席や投げ手は1打席内で変更可? 公認野球規則の索引も便利です/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

MLB通算61試合に登板した左右腕投手のパット・ベンディット[写真=Getty Images、2016年ブルージェイズ時代]


【問】夏の高校野球山形県大会で下記のプレーがありましたので、正しい処置を教えてください。ある打者が打席中(右打席)に2度、球審の後ろを通って左打席に移動しました。いずれも投球後のことです。なお投手は投げ手を変えずに投球しています。打席変更は何度もしていいのか公認野球規則で調べてみましたが、どこに書かれているのか分かりませんでした。また両手投げ投手の場合、投げ手変更を何度もしていいのですか?

【答】まずルールの探し方ですが、公認野球規則の巻末(206〜225頁)にある索引を活用してください。この場合ですと「打者」で調べれば、すぐに該当する項目を見つけることができます。で、結論を言うならば打者は同一打席内でも1球ごとに右打席、左打席と変えることはできます。変えてはいけない、とどこにも書かれてないからです。とはいえ投手が投球動作に入ったならば、そこから変えることはできません。その場合は「6.03.打者の反則行為.a.2」によりアウトとなります。

 では、両手投げ投手の場合はどうか? 長い日本プロ野球の歴史の中で両手投げ登録は近田豊年投手(元南海など)のみでした。野崎進投手(元ヤクルト)もいましたが登録上は右投げで、一軍未登板のまま引退しています。外野手では小久保浩樹選手(元西武)が両手投げ登録でした。で、近田投手は一軍公式戦では左投げのみでの登板でしたから、投げ手変更は想定外のことで当時の公認野球規則にはその項目はありません。ところが2010年の規則改正で、同一打者での投げ手変更はできないことになったのです。

 実はこのルールのできた事件が08年にマイナー・リーグで起こりました。スイッチピッチャー対スイッチヒッターの対戦があり、お互いに投球する腕と打席が決められずにもめてしまったのです。そこで球審は暫定措置として、まずは投手にどちらで投げるかを決めさせ、同一打席内では変えてはならないと通告しました。それが正式に明文化され、「5.07.f.両手投げ投手」の項目となったわけです。その投手の名から「ベンディット・ルール」とも呼ばれています。

 大谷翔平選手(エンゼルス)の二刀流が、先発投手(兼指名打者)の降板後にもまだ指名打者として出場できる「大谷ルール」(5.11.b)を生んだように、こういった特殊ケースに対応するためにまた新たなルールが生まれるのです。

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