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2024プロ野球シーズン大展望

【インタビュー】ロッテ・安田尚憲 「もう2位は飽きました。チーム内の競争に勝ち、今年こそ優勝へ――」

 

昨年前半はパ・リーグ首位に立つ日が多かったが、終わってみれば2位に終わったロッテにおいて、打線のキーポイントとなりそうなのが安田尚憲だ。今季、「内野シャッフル」という名の大コンバートによって、三塁では中村奨吾と、一塁ではネフタリ・ソトとポジション争い。ドラフト1位で三塁、一塁を守れる上田希由翔という巧打者も入団してきた。安泰ではない立場だからこそ危機感も人一倍強く持っている安田に、開幕を前にした心境を聞いた。
取材・構成=落合修一 写真=高塩隆

ロッテ・安田尚憲


ドライチ・上田希由翔は「タイプが似ている」


──今年もシーズン開幕が迫ってきました。自主トレ、春季キャンプ、オープン戦と段階を踏んできていますが、ここまでは順調ですか。

安田 そうですね。毎年この時期になると気持ちが高ぶってきます。長い1年が始まるぞ、となりますね。その中で自分ができることの準備をするために、体や気持ちをつくってシーズンを戦える態勢を整える作業中と言ったところです。ケガもなくできていますし、自分のやりたいこともできているので、順調にここまで来ていると思います。特に今年は一塁手へのコンバートもあったので、そのへんの守備の練習にも時間を使うことできています。

──では、その話を早速聞かせてください。今まで三塁手としてずっとやってきたのが、「内野シャッフル」というチーム方針で中村奨吾選手が二塁から三塁へコンバートされ、安田選手は一塁手をすることになった。そのコンバートの話を最初に聞いたときはどう思いましたか。

安田 あるんじゃないかなとは思っていました。奨吾(中村奨吾)さんが三塁に来ると聞いて、僕は僕なりにこれまで三塁を守ってきたこだわりがあるのでその競争に勝ちたいなという気持ちもありつつ、一塁も守れるというオプションがあるのは自分にとってもプラスになるのではないかという気持ちもあります。今は、三塁でも一塁でも、必要に応じて両方こなせるようにという意識で練習しています。

──今まで三塁のレギュラーとしてやってきたのに、選手間での競争を強いられる。それについてはどうですか。

安田 競争があるのは毎年のことです。一塁にはソト選手が移籍してきたし、晴哉(井上晴哉)さんもいます。三塁は奨吾さんだけでなく、上田(上田希由翔)もいます。競争相手がいるのは今年だけの特別なことではなく、プロ野球選手である限りは来年以降もずっと続いていくのだと思います。まず自分ができることをしっかりとやっていき、その中で自分のポジションをしっかりとつかめたらいいですね。

春季キャンプの守備練習の写真から。昨年までの本職・三塁に加え、今年は一塁手としても試合に出場する機会が増えそうだ[写真左は井上晴哉]


──上田選手の名前が出ましたが、世代が近くて、一塁、三塁を守れる左打者ということで安田選手と共通点が多いように見えます。そのような選手がドラフト1位のルーキーとして入団してきて、どのような思いですか。

安田 はい。タイプ的に似ていると、僕も感じています。チームから求められる仕事も、近いものがあるでしょうね。そこはやっぱり、彼はルーキーですが負けないようにしないと。希由翔(上田)だけではなくてほかの選手もレベルは高いので、自分もしっかりと首脳陣にアピールをしていかないと、と思っています。

プロ野球選手である以上、競争は常にある


──一塁手にはソト選手が加入しました。どういう印象ですか。

安田 DeNAであれだけの実績のある打者ですからね。僕がプロに入ったときから日本でプレーしていますよね?

──そうですね。2018年からNPBでプレーしているので、安田選手とは「同期」ですね。

安田 同じタイミングなんですよね。それだけの実績のある選手ですし、本塁打王のタイトルも獲っています。実績で負けるのは仕方がない。仕方がないと言ってはあれですけどそこで争うのではなく、今はしっかりと自分のできることをやって、勝っていけるようにしないと。三塁と一塁、どちらで争うことになるのか、現時点で僕もよく分かっていないですが、どちらにしても競争に勝たないといけないことに変わりはないので、「安田じゃないと」という自分だけの良い点をしっかりと見せていきたいと思っています。

──チームとしては選手同士の競争による全体のレベルアップ、底上げを狙っているのでしょうね。

安田 そうだと思います。その意図を汲んで自分の実力を上げてずっと試合に出たいですし、レギュラーとしてチームに貢献したい。そのためにはチーム内の競争に勝つ必要がありますが、それはプロ野球選手である以上はどのチームでも同じだと思いますので、競争に勝つ。何度も言っていますが、今はこれしか考えていませんね。

──今シーズンの具体的な数字的な目標はありますか。

安田 まずは1年間試合に出続けて、規定打席に到達すること。そこは最低限の目標として、プラスアルファで言うなら「打率2割8分以上」「20本塁打以上」というラインを設定し、そこを目指して頑張りたいです。

──昨年を振り返ると、どういうシーズンでしたか。

安田 夏場以降、一気に調子を落としてしまいました。結果を残せなかったことがもったいなかったし、自分でも不甲斐なさを感じました。やはり7月くらいまでの成績を、シーズンの最後まで残し続けられればそれなりのシーズン成績を残せたと思うので、そこを自分からは崩さないようにしたいです。好不調というものはどうしてもあると思いますが、不調になったときにズルズルと行かず、速やかに自力で取り戻すことが自分の課題ですので、そこは昨年の反省点ですね。逆に良かった点は、決定機でチームの勝利を決める一打を何度か放ったこと。チャンスに強い打撃は、監督の吉井(吉井理人)さんからもよく「頼むぞ」と言われますので。と言っても、打点の数はまだまだ物足りないです(昨年は43打点)。そこも課題の一つとして、数字を増やしていきたいですね。

──確かに昨年はチームの野手として唯一オールスターに出場したくらいで、4、5、7月の月間打率が2割7分を超え、数字は悪くなかったです。それが8月から閉幕までは130打数25安打、打率.192。何が起こったのでしょうか。夏場の疲れですか。

安田 いいえ、疲れというよりも、自分で打撃の調子を崩してしまいました。考え過ぎると良くないですね。相手チームのバッテリーも当然、対策をしてくるのですが、そういうところでうまく対応できなかったな、というのが反省点です。

──今年は不調になってもすぐに対応したいと。

安田 そうですね。昨年までは配球など、自分1人で悩んで考えていたのですが、チームにはアナリストさんもいらっしゃるので、今年からはちゃんと話し合いながらやっていきたいですね。僕はもう少し頭を使いながら打席に入りたい。吉井さんからも去年からそういう話をされていました。今年は自分自身と向き合い、相手バッテリーとも向き合いながら、打撃をしていきたいと思っています。

マリーンズで幸せだと感じた瞬間


──その一方で、先ほどもおっしゃいましたが「決定機」に強いという面もあります。昨年はクライマックスシリーズ(CS)も含めるとサヨナラ打を放った場面が4回。

安田 シーズンの最終盤からCSにかけての時期は打撃の状態が良かったというのもあります。大事な場面で結果を残せて、良かったです。ただ、結果を残せたのはシーズンの積み重ねです。そういうときだけ打てばいいというものではないですし、普段からコンスタントに良い成績を残さないといけないですよね。

──そうなんですけど、1勝1敗で迎えたCSファーストステージ第3戦(10月16日、対ソフトバンク、ZOZOマリン)は延長10回表に3点勝ち越され、その裏に藤岡裕大選手の3ランで追いつき、という劇的な試合展開でした。二死一塁からの安田選手のサヨナラ二塁打は、名場面だったと思います。

安田 裕大(藤岡裕大)さんが本塁打を打っていたのでその勢いで行けたというのもありますけど、あの試合は自分にとっても興奮しましたし、マリーンズでプレーできて幸せだなと感じる瞬間でもありました。いい経験をできました。

昨年10月16日のCSファーストステージ第3戦の延長10回裏、ファイナルへの勝ち抜けを決めるサヨナラ二塁打を打った安田を吉井監督も祝福


──ただ、CSファイナルステージでは優勝したオリックスに勝てず、日本シリーズには出場できませんでした。昨年のチームは6月までは首位にいることもありましたが、終わってみるとオリックスと15.5ゲーム差。

安田 今年はもっと上に行きたいですね。ここ数年間、リーグ2位は何度か(昨年までの4年間で3回)あるのですが、3連覇しているオリックスに離されているところはあるので、そこはわれわれチーム全体として「2位はもう十分だね」という気持ちがあります。今年こそ、何とか一番良い順位で終われるように。そこはもう、チームのみんなで戦っていくしかない。一つひとつ、勝っていくしかないですよね。

──もちろん、プロ野球選手は目指すところは1つでしょう。しかし、ほかのチームもそれは同じなわけで、他球団より上に行くにはどうすればいいと思いますか。

安田 他球団を見るともちろん3連覇中のオリックスはすごく強いチームですがほかのチームも強いので、どこにも負けないようにやっていかないと。マリーンズの投手力は昨年もそうでしたし、チームとして良いものがあると思うんですよ。あとは僕を含め、打線がもう少し援護できたら、勝ち星を増やせると思います。とにかくミスのないように野球をする。それがマリーンズの持ち味でもあると思うので、そういったことを継続しながら、シーズンを進めていければと思います。

昨年7月6日の西武戦[東京ドーム]で延長10回裏二死一、三塁の場面で自身プロ初のサヨナラ安打。これがCSも含めた昨年の4回のサヨナラ打の2回目[1回目は犠飛]だった[写真=井田新輔]


もう若手ではないチームを引っ張りたい


──安田選手は今年が7年目のシーズン。若手から中堅という年齢になってきましたが、自分がチームを引っ張っていくんだ、という気持ちはお持ちですか。

安田 確かに僕はそろそろ若手ではなく中堅となってきました。良い選手はたくさんいると思いますが、僕や山口(山口航輝)といった選手がしっかりと数字を残して、チームを引っ張っていきたいと思っています。僕たちがチームを盛り上げていきたいですね。

──秋には胴上げ、ビールかけをやってみたいですよね。このチーム、シーズン勝率トップでリーグ優勝したのは1974年以来、50年間ないんですよ。

安田 そうですね。優勝して、ハワイ旅行とか行きたいですよ。そういう話はチームのみんなともよくするんです。ほとんどの選手が味わっていない経験なので、優勝してハワイに行けるように、何とか頑張りたいですね。

──外から見ているとチームの雰囲気が良いというか、良い意味でリラックスして野球をしているように感じます。その点はいかがですか。

安田 監督の吉井さんがすごく気さくに話しかけてくれますし、チーム内の雰囲気は良く、良い意味で仲が良いですよ。チーム内のコミュニケーションが良好で、投手と野手、ベテランと若手の間にも溝はなく、チームが一体となって戦う準備ができています。特に澤村(澤村拓一)さん、益田(益田直也)さんといった精神的支柱となっている方々がチームをまとめてくれているので、僕たちにとってもプレーしやすい環境ができています。

──澤村選手、益田選手は投手ですが、野手にも影響が及んでいるのですね。

安田 そうですね。多くのチームは投手は投手、野手は野手で食事会とかで集まると思うのですが、澤村さんと益田さんは投手も野手も分け隔てなく誘ってくれて、チーム全体でどうやっていくかという話をしてくれるので、僕たち野手にとっても支えてもらっているんだという安心感があります。

──最後に、マリーンズ・ファンへのメッセージをお願いします。

安田 チームとして、今年は何とか優勝できるように。それが一番の目標になりますので、その中でも自分自身が優勝に貢献できるような数字であったり、バッティングで結果を残したりできるように、頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。

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