「グラウンドに出るのは恥ずかしい」

GMを兼任する楽天・石井監督
柔和な笑みがなんとも印象的だった。2月13日の
ロッテとの練習試合(金武町)。今季から楽天を指揮する
石井一久GM兼任監督は、笑顔でナインと肘タッチを繰り返していた。試合に8対3で勝利すると「アメを食べすぎた。10個ぐらい食べたかな」と、らしさ全開で振り返った。
今季初の対外試合でも「石井らしさ」が出ていた。ロッテ戦は、
辰己涼介や
小郷裕哉ら、一軍生き残りを目指す若手中心のオーダー。その中で9回を任されたのは、育成左腕の
渡邊佑樹だった。今季からサイドスローに転向した左腕は、期待どおりに9回をピシャリと抑えた。練習試合とはいえ、育成左腕にいきなりストッパーを任されるのも石井流だ。
報道陣に対しては、質問されてもユーモアのある回答ではぐらかす。どこかつかみどころがない指揮官だが、これまでGMとしてチームを支えてきたその眼力は、確かなものがある。2019年のドラフトでは外れ1位で
小深田大翔を指名した。選手の潜在能力を見抜く力は疑いようもない。今キャンプで、一軍に帯同している育成選手は渡邊佑のみ。昨オフに支配下登録から外れたとはいえ、高い期待をかけている。
渡邊佑の登板は5回に
菅原秀が負傷降板したことが影響しているとはいえ、大胆な決断にも「らしさ」を感じる。選手交代について問われると「見よう見まねでやりました。野球をやっていないのに、グラウンドに出るのは恥ずかしい」と、案の定はぐらかした。ただ起用の裏には、確固たる根拠と裏付けがあると思っていい。その裏付けを基に、迷いなくタクトを振るうタイプの監督に映る。
ヤクルト時代には故・
野村克也監督から薫陶を受けた。「野球観というものをすべて教えていただいた。プロで成功していく術を教えてもらって、今に至っている」と神妙な表情で語った。確かな眼力の裏に、野村監督の教えが根付いている。どこかホンワカしているのはイメージだけ。緻密な計算をしながら大胆な策を用いたとしても、ちっとも驚かない。
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