3連覇をめざすオリックスが今年も上位で戦っている。投打ともに力を発揮し、雰囲気も明るい。チームを21年、22年とコーチ兼任投手として支えた能見篤史さん(元阪神、オリックス)は、選手たちから絶大な信頼を得てきた。能見さんはどんな場面で、どんな言葉をかけていたのか。6月に刊行された初の自著『#みんな大好き能見さんの美学』(ベースボール・マガジン社刊)より抜粋しご紹介しよう。今回は、田嶋大樹への言葉。 それマウンドに持っていく?
2018年ドラフト1位でオリックスの一員となった田嶋
純粋で繊細でまじめ。田嶋は基本的にあまりしゃべらず、なんでも黙々と一人でやるタイプです。人とつるんで何かをするのが好きではないんでしょうね。
そういう性格なので、待っていても向こうからは来ない。だから、僕からどんどん声をかけて行きました。野球以外の話もしていると、徐々に心を開いてくれて。
「社会人のとき野球が嫌になって、やめようと思っていたこともあるんです」
そんなことまで話してくれるようになりました。
会話をしていると、いろいろなものが見えてきます。もし、距離を詰めたいと思う相手がいたら、積極的に話しかけてみてください。自分から行くのが苦手なだけなら、何か変化が起きるかもしれません。
田嶋は純粋すぎて、私生活でちょっと嫌なことがあると、それをマウンドに持って行ってしまうことがありました。打ち込まれたあと話をしていると……。
田嶋「ちょっと嫌なことがあったんで」
能見「えっ、ちょっと待って。それマウンドに持って行く?」
田嶋「……」
能見「そんなの持って行かんとって。自分が損するだけやで。オレが聞くから、次からは置いて行ってくれ」
それからは登板前の確認が必須。
「タジ、嫌なことあった? なかった? どっち?」
もしあったときは話してくれるようになりました。
23年のキャンプで「大丈夫?」と尋ねると、「大丈夫です!」とはっきり答えてくれたので、もう僕がいなくても大丈夫そうです。
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