週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

坂本勇人の至高の“打撃術”を公開 「フォームよりもボールを捉える『イメージ』を重視」

 

プロ2年目の2008年から読売ジャイアンツの中心選手として活躍し、20年には右打者史上最年少で2000安打を達成。ほかにも数々の記録を残し、長らく球界を牽引してきた坂本勇人選手が9月3日、自身の打撃について語った書籍『坂本勇人のバッティングバイブル』(定価1980円税込)を発売した。今回はその中身の一部を特別公開。レジェンド打者のバッティング技術は必見だ。

インサイドを打つときのイメージは?


球史に名を刻む最強打者である坂本


 僕はこれまで両手を最後まで離さずに振っていたのですが、昨年などはフォロースルーが片手になることもよくありました。ただ、フィニッシュの形はあくまでも結果であって、どれが正しいと言えるものでもないので、あまり気にしていません。インパクトの後は自然な流れでバットが進んでいけば良い。強く打とうとすればガーンと背中のほうまでバットが来ますし、わざわざ「両手で振って体に巻き付けよう」などと意識する必要もないかなと。基本的には、フォロースルーから逆算して「ここに収めよう」と考えたりもしていないですね。ただ1つあるとすれば、ボールを下から持ち上げすぎてなかなか捕まえ切れていないケース。このときはフィニッシュを少し下げるイメージを持って練習し、実際の打席にも同じ意識で入ります。そうすることで自然とヘッドが立ち、ガチッとしっかり返ってくれるのです。

 と、こういったバットコントロールの技術についてはその場、その場で引き出しとして使うこともありますが、通常は「手をこうやって使おう」という意識はありません。心掛けているのは構えの時点から両手の人さし指と親指に力を入れないことと、手を右足に向かって下ろし、45度くらいの角度でボールの軌道に入れていくイメージだけ。そこから先は、基本的には体の動きに合わせて勝手に前へ走っていくものだという認識です。

 それを前提とした上で、打席内でのバットコントロールの引き出しを増やすためには、練習のときからいろいろなイメージで打つことを積み重ねておくことが大切です。そもそもバッティングというのは投手のボールに対応していくもの。理想どおりに打てることはほとんどないので、「こういう動きでこういうふうに打ちたい」と自分のフォームを細かく考えるよりも、「このボールをこうやって打ちたいからこういうイメージで向かっていく。そうしたら結果的にこういうフォームになるよね」という感覚で、ボールを捉えるイメージを思い描いていくほうが良い結果につながりやすいと思っています。

 イメージの作り方で言うと、たとえばインサイドに来たボールを打つときは、僕はボールの内側からバットを入れ、ヘッドを返さずに面をそのまま押し出していくイメージを持っています。しかし、普通にバットを出していこうとすると、真横に切るようにしながら最後は右手をかぶせる形になってしまいます。バットを内側へ入れて面を押し出していくためには、右手を下げて左ヒジを上に抜き、少し下からバットが入るようにしなければなりません。それを追い求めていくと必然的に、右のワキをしっかり締めながら左のワキが大きく空く形になるわけです。最初から「左のワキを空けて打とう」と思っていたのではないわけで、まさに「こういうイメージで打とう」と思った結果、体が動いて自然とそういう形で振れるようになったという典型的な例です。

基本は右手で押し込む感覚だが……


 なお、よく「高めは前のワキを締めないと打てない」と言われますが、決してそんなことはないというのが僕の考えです。もちろん「ワキを締めて叩く」という打ち方が合っている人もいるとは思います。ただ、普段から前のワキが空いた形で打つ人というのは、高めを打つときもやはりワキを空けています。たとえば柳田悠岐選手(ソフトバンク)などは高めでも大きくワキを空けながらガーッと振り上げていますし、僕も実際、2016年に当時日本ハム大谷翔平投手(現ドジャース)から打った通算250本目の二塁打などは、高めの直球に対して左ワキを大きく空けていた記憶があります。これもやはり「形」ではなく「イメージ」が一番大事で、高めの打ち方であっても正解はないのかなと思いますね。

 また、インパクトでの力の伝え方のイメージとしては、普段は右手で押し込んでいく感覚なのですが、状況によって左手で引っ張っていく感覚に変えることもあります。もともと「左軸」で打っていたとき(2015年まで)は左手でリードしていくイメージが強くて、「右軸」にした途端に右手で打つイメージが強くなったという経緯があり、どちらも経験してきたので2つを使い分けられる。この部分は僕の強みかもしれません。ちなみに僕は野球をするときは右投げ右打ちで、サッカーやボウリングや卓球などスポーツ系はすべて右をメインに使っていますが、基本的には左利き。字を書くのも箸を持つのも左手。だから器用に扱えるのかなと思われるかもしれません。ただ正直、そこはあまり関係ないですね。

 これは僕の感覚なのですが、左手で打つイメージを強くするとレフト方向へのヒットが増え、右手で打つイメージを強くすると右中間などに強い打球が飛びやすくなる気がします。そのメリットを理解し、「右手が強すぎてなかなか引っ張れないな」というときは前者に切り替えたりしています。ヒジを支点にして手の甲でパーンと前へ払っていくような感覚なので、手首が立ってヘッドを返しやすくなるのです。ただし、左手で強く打つ場合はダウンスイングになりやすく、逆方向にもあまり飛ばせないという印象。したがって、先ほども言ったように通常は後者です。ボールの内側に右手を落としながらポンッと入れ、面を長くつけて押し込んでいくイメージ。実際にインパクトの局面では「ボールが当たってから押し込む」という意識もありますね。


■書籍『坂本勇人のバッティングバイブル』ご購入はコチラから!

写真=BBM

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング