2025年は3年連続となる2ケタ勝利を挙げ、パ・リーグの先発トップのWHIP0.89をマーク。球威十分のストレートと良質なスライダーを武器に好投を続けてきた今井達也投手は、今や日本を代表する投手と言えるだろう。そんな右腕が12月2日に書籍『今井達也のピッチングバイブル』(税込定価1,980円)をベースボール・マガジン社より発売。最高峰の投球の感覚を一部抜粋で先行公開する。 意図せずに自然と高めへ浮き上がるボールが理想

今季、3年連続2ケタ勝利を挙げた今井
2025年はストレートが自己最速の160キロを計測しましたが、そもそも僕はスピードについてまったくこだわりがありません。また、ボールの回転数や回転軸、回転効率といったデータなどに関しても「自分がどういう性質のボールを投げているのか」を把握するためのものだとしか捉えていないので、数値を見て「もっとこういう回転にしたい」という想いもありません。ストレートの質として僕が理想としているのは、低めを狙って投げながら高めに浮き上がったときに空振りが取れるボールです。(5月24日の
ロッテ戦で)160キロが出て空振りを取った
ネフタリ・ソト選手への1球などは、まさに右打者の外角低めを狙ったものが高めに行ったストレートで、球質としては理想的でした。
なぜ「高めを狙って高め」ではないのかと言うと、捕手が高めのゾーンにミットを構えるということは、最初から「空振りを取ろう」とか「ファウルを取ろう」といった意図があるケースです。つまり、投げるほうとしても自分である程度コントロールしたボールになる。一方で「低めを狙って高め」は何も意図せずに自然と浮いたボールであり、純粋に打者が思っている以上に伸び上がったからこそ空振りが取れているわけです。結果的にコントロールミスではあるのですが、投手にとって一番大事なのは打者を抑えていくこと。高めに浮いた球に力があってしっかり空振りが取れているのであれば、わざわざ「低め(狙ったところ)にコントロールしなきゃいけない」と考える必要はないと思います。
なお、一般的にはよく右対右(あるいは左対左)の状況で「外角低めにコントロールすることが大事だ」と言われています。ただ、そもそも右打者の外角低めというのは体の構造を考えたとき、右投げの猫背タイプの人が最も力を入れやすく、一番質の良いボールが行くところ。日本人は6〜7割が猫背タイプなのでそれが当てはまる人が多く、だから右投手に対して「右打者の外角低めに投げるのが基本」という考え方が主流になっているのだと思っています。逆に僕も含めた反り腰タイプの人にとってはそれが当てはまらず、右打者の内角高めにふけていく球が一番質の良いボールになります。無理に外角低めを狙うと腕を押さえ込むような状態になって引っ掻いてしまいやすいですし、さらに言えばリリースの位置が低いというのも僕の特徴なので、低いところから高いところへ向かって投げ上げていくようなイメージは大切にしています。
背中の張り具合によって出力を調節する
投球動作において、僕が土台として考えているのはセットポジションです。僕の中ではセットポジションに入った時点でもう半分くらい、そのバランスで投げたらどういう動きになってどういうボールが行くのかというのは決まっています。まず重要なのは、正しい場所に重心を置けているかどうか。それによってボールが抜けてしまうのか引っ掛けてしまうのかは自分でも分かるようになってきましたし、バランスが悪いときなどは、マウンド上で立っているだけでも「何かちょっと気持ち悪いな」と違和感を覚えます。
2025年のシーズン前半などは、実は構えた時点で「このまま投げたらボールが暴れてしまいそうだな」と思うことが多かったので、ちょっと出力を落としてコントロールを意識しながら投げることがよくありました。力を入れればスピードはもっと出るのですが、それではコントロールが定まらなくて投球が大きく崩れていたと思います。

背中側に軸を作った上で両肩を素早く入れ替えて回り、リリースでは背中を反っている状態が理想。最後は背中でボールを押し出していく
出力を調整するのは(セットポジションとリリースでの)背中の張り具合です。僕はもともと反り腰タイプなので背中側に軸を作り、背中にも少し張りが出るように構えているのですが、力を入れてスピードを出したいときはさらにその反り感をちょっと強め、グッと張るようにしています。だからと言って骨盤の前傾を強めるというわけではなく、意識するのはあくまでも背中のみ。おそらく、見た目だけでは違いがまったく分からないでしょう。そして、投げるときには背中側の軸を中心に体が回っていき、リリースのタイミングで背筋が使われて腕が押し出されていく。感覚的には左肩と右肩をその場で瞬間的にパッと素早く入れ替えて回り、最後は背中でボールを押し出すというイメージです。これはどの球種も一緒で、ストレートでも変化球でもすべて背中の張り具合によって出力を変えています。
PROFILE いまい・たつや●1998年5月9日生まれ。栃木県出身。180センチ80キロ。右投右打。小学1年のときに北光スポーツ少年団野球部で野球を始め、鹿沼市立西中学時代はクラブチームの鹿沼ポニーリーグの鹿沼レッドソックスに所属し、全国野球大会にも出場した。作新学院高では2年夏からベンチ入り。3年夏の甲子園では150キロを超えるストレートを武器に、チームを優勝へ導く。U18アジア選手権でも決勝で好投し、2大会ぶり5度目の優勝に貢献した。2017年ドラフト1位で埼玉
西武に入団。2018年6月13日の東京
ヤクルト戦でプロ初登板初先発を果たすと、6回1失点でプロ初勝利をマーク。19年5月5日の東北
楽天戦ではプロ初完封勝利を挙げた。21年には先発ローテーションを守り、自身初めて規定投球回に到達。チームの柱としてフル回転した。24年は3年ぶりの規定投球回に達し、自身初タイトルとなる最多奪三振(187個)を獲得。今季は開幕から圧倒的な投球を続け5連勝をマークするなど、5月の月間MVPを受賞した。6月17日の横浜
DeNA戦では
松坂大輔が記録した1試合16奪三振を更新する球団新となる17奪三振をマークした。3年連続2ケタ勝利も達成した。
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