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岡田彰布『強いやろ虎、そらそうよ』

阪神・岡田顧問が分析 佐藤輝明さらなる飛躍への「簡単な話」〜今年ももちろん本塁打王の本命。「まだまだ信用できんけど」〜

 

2025年、圧倒的な強さで優勝した阪神タイガース。2026年は、2リーグ分立後では球団初となる連覇をかけて戦う。カギを握る一人が主砲の佐藤輝明だ。25年は40本塁打、102打点で2冠に輝いた。プロ生活6年目となる2026年は、さらなる進化を遂げるのか。タイガースの前監督でオーナー付顧問の岡田彰布氏の見方を、12月に発売された岡田顧問の自著『強いやろ虎、そらそうよ』(ベースボール・マガジン社刊)より抜粋、編集してご紹介しよう。

岡田顧問の著書『強いやろ虎、そらそうよ』


こんなバッターはなかなかいないわ


 佐藤輝明の2025年の変貌ぶりについて書く。まず監督が交代したこと。これが佐藤輝にとってプラスになるという論調が、スポーツ新聞の記事になっていた。マスコミはそういう見方をするんや……と不思議な気分になった。監督が代わろうが、コーチが代わろうが、選手としてやることは一緒。それを角度を変えて論ずるところには違和感があったけどね。

 それが佐藤輝の飛躍的な成長につながったのかどうか。本人に聞いてないから、分からないが、「野球」「打撃」という点において、間違いなく成長した。これは間違いない。そのキッカケになったのはなんだったのか。例えば3月のメジャーリーグ、ドジャースとのプレシーズンマッチ。サイ・ヤング賞二度のスネル(ブレイク・スネル)から東京ドームでホームランを放った。成績には残らぬ一発だが、間違いなく脳内に残る当たりやったと思うね。スムーズなバットの出方だったし、力みのないスイング。それでホームランになる。相手投手の格を考えても、自信がついたに違いない。

 それから約2週間後、シーズン開幕戦の第1打席よ。広島で12球団の本塁打第1号を放った。「これや」というものをつかんだんやないかな。ここからシーズン40本の道が開けていくのだが、自分の特質に合った打撃ができるようになった。軽くスイングしても、打球は飛んでいく。こんなバッターはなかなかいないわ。天性のものなんやろな。ただ、それに気づかずに振り回して三振。そんな繰り返しを経ての本塁打量産。過去の経験を生かしたということなんよね。

打席で「泳ぐ」ことを恐れなくなった


 技術的に詳しく解説すると、打席で「泳ぐ」ことを恐れなくなった。これが大きい。いまの若いバッターは「詰まる」より「泳ぐ」ことが嫌なんよ。でも詰まったら、何が起きる? バットを折られるかファウルよ。それよりも泳ぎながら、対応する。佐藤輝はこれを身につけた。例えば外角の変化球。そこを振りにいく。バットは泳ぐけど、体はしっかりと残る。これでいいのよ。佐藤輝のポテンシャルなら、ボールは飛んでいくってわけよ。

 ここで珍しい記録を紹介する。佐藤輝の死球がなんと「0」だった。パ・リーグの本塁打王レイエス(フランミル・レイエス/日本ハム)も同様だが、これってホンマに珍しいわ。というか他球団の対策に「?」って感じやった。

 佐藤輝のウイークポイントとされるのは内角への攻めである。ここをうまくさばけない。プロに入ってからのテーマだったのだが、その内角攻めをまったくしてこないのだ。強打者に対し、外中心の配球になれば、そらいずれやられる。内を意識させることを捨てては勝負にならない。死球0はその証明である。

 試合を重ね、内角を攻めることの重さを確認するが、時すでに遅し。いまさら攻め方を極端に変えることができない。佐藤輝は余裕を持って打席に入り、時に来る内角球に対処できるようになっていた。2025年、佐藤輝のペースで物事が運んだ……というわけよ。

甲子園を本拠にしての40本はホンマに値打ちもの


 それにしても甲子園を本拠にしての40本はホンマに値打ちものやと思う。神宮、横浜、東京ドームを本拠にしての40本とは訳が違う。特に左バッターよ。立ちはだかる「浜風」という難敵。それを克服した佐藤輝を見るたびに思い出すのがオリックス監督時代に出会ったT-岡田だった。

 伸び悩むT-岡田にノーステップ打法などの技術改造と同時に考え方を変えてみることを伝えた。それが「ショートの頭を越えるヒットを打つイメージ」やった。まずはヒットを打つ。必然、打率が上がる。その確率を高めていけば、おのずとホームランは増える。T-岡田はそれを体現し、本塁打王になった。

 佐藤輝にもオレは同じイメージを抱いていた。軽く打ってもホームランになるポテンシャル。まずは率を上げること。そうすれば本塁打数は伸びる。2025年シーズン、佐藤輝は三冠王を狙える位置まで打率を伸ばした。プロ5年目で描いた成長曲線は理想的やった。

追い込まれたら、合わせにいけばいいんよ


 最初は三番でスタートし、のちに四番に座った。藤川(藤川球児)監督が認めた四番。チームのだれもが四番として認めた。四番バッターとは、こうでなければならない。そんな中、テレビの解説でオレが「まだまだ信用できんけど」と言ったのが、ファンのお気に召さなかったようだ。でも、これはいまも変わりない思いよ。相変わらず三振が多い。簡単な話よ。追い込まれたら、合わせにいけばいいんよ。それにベンチに三振の多さを注意する人間がいない、となれば、これはアカンよね。

 これからは本塁打王の本命となり続けるやろな。佐藤輝時代が間違いなく続くやろ。そのスタートとなった2025年シーズン。オレはそこであえて言う。「実績といってもまだ1年。信用はまだできん」とね。

写真=BBM

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