2026年プロ野球開幕から約1カ月。阪神タイガースの技巧派・大竹耕太郎は、チームの連覇に向けてやるべきことを常に見据えている。ソフトバンクでの最後の2年間で0勝だった左腕は、現役ドラフトで阪神に移籍後、3年間で32勝。進化の原動力は何か? 独特の練習を行うことでも知られる大竹の取り組みと投球イメージを、発売後たちまち重版が決まった大竹初の自著『覆す』(ベースボール・マガジン社刊)より抜粋、編集してご紹介しよう。 
大竹耕太郎の著書『覆す』©阪神タイガース
変人と言われても嫌じゃない
迷ったらまずはやってみる。僕の考えの根底には、そんな思いがあります。チャレンジしない後悔より、チャレンジしてみての後悔を僕は選びたいです。
僕の練習法は独特です。木刀を携えて球場に入り、外野の芝生でやり型の器具やサッカーボールを投げて体を動かす。裸足のウオーキングや下駄を履いたトレーニング、平均台を使った投球練習、たくさんの針がついているマット上に立つ……。
ほかにも独自の練習法がたくさんあります。周りの選手やスタッフからは、「大竹は変わってる」とよく言われますし、そんな自覚もあります。でも、変人って言われても嫌な気持ちはまったくしません。捉え方を変えると、変わっていないのは「みんなと同じですね」と同義ですよね。僕はみんなと同じは嫌です。常にオリジナリティーと、常識を疑うことに重きを置いています。
「変なこと」をするには根拠がある
「こいつ何してるんだ?」と、周囲からは理解されなくても、僕の中では、一つひとつのトレーニングや言動にはしっかり根拠があります。周りや世間の常識に流されず、自分の頭で考えたうえで自分自身の考えを貫く。
やる前から「自分には関係ない」「意味がない」と決めつけるのは、もったいないと思っています。あるときの失敗が、のちのちどこかで役に立つというシーンが、野球人生では多々あります。どう役に立つかわからないことであっても、それら点と点が線となって、つながるのではないか――。そんなふうに考えて生きてきました。
合気道トレーニングで自分の体に起きていることを感じる
2022年オフ、阪神への移籍直前に福岡で合気道に基づいたトレーニングに出合いました。それから今日まで、シーズン中は毎週1回、必ずマンツーマンレッスンを受けています。合気道トレーニング? どんなことをするのか、大半の方はまったくイメージが湧かないかと思いますが、基本概念は「自分の身体に起きていることを感じる」ことです。
大まかに分けると、脱力、骨の感覚、意識の方向などなどを意識しながら、身体を動かします。マットの上に立ち、木刀を握って先生と押し合ったり、互いの体を持ち上げたり、回転させたり。足元から手の指先まで、神経を研ぎ澄ませながら、さまざまな動きに挑戦しています。体を動かしながら、肉体、意識、環境の関係性を感じ取り、それらが統合されていくことが目的です。
それぞれの動きや意識は相関しているので、一つひとつを切り取って考えるのは難しいですが、ここでは特に大切にしている合気道トレーニングから学んだことを一つ紹介したいと思います。
意識の矢印を自分ではなくキャッチャーやバッターに向ける
まずは意識を外に飛ばす、自分から外すというものです。「打たれたらどうしよう……」「投球フォームが気になるな……」。これらは意識の矢印が内側に向いている状態です。
僕は内側に入ってくる矢印を同じだけ外側に飛ばすイメージを常に持っています。球を受けてくれているキャッチャーへ、相手のバッターへ意識を飛ばす。そして、その意識を切ることなく、毎球投げています。わかりやすく言えば、細い糸がキャッチャーとつながっていて、集中が切れたらその糸もプツッと切れてしまうようなイメージです。この感覚がピッチングにおいてはかなり大切です。
この感覚はあらゆる場面で養うことができます。自分で何かターゲットを決めて、そこから意識を外さずにいることです。これは身体を動かさなくてもできることで、あいさつを口にするときにちゃんと相手に意識を向ける、お辞儀をするときも相手に対して気持ちを向ける。そんなことを積み重ねることでトレーニングになります。
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