1980年代に絶大な人気を誇った元巨人の助っ人、ウォーレン・クロマティ氏による『月刊ベースボールマガジン』の連載。巨人に在籍した7年間を通して関わった監督、コーチ、チームメート、ライバルなどとの交友録だ。第1回は84年に来日したときの監督、王貞治さんについて綴る。 「君の腕はストロングだねえ」

巨人・王監督[左]とクロマティ
王貞治さんのことは、アメリカにいたころから知っていた。甲子園で活躍し、巨人では世界新記録の868本塁打を放ったスーパースターで、アメリカの人気スポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙にもなった人。写真で見た王さんのバッティングフォームは、あまりに衝撃的だった。故郷・フロリダに生息するフラミンゴを、私は真っ先に思い出した。
1984年、巨人への入団が決まった。王さんに初めて会ったのは、宮崎キャンプが始まる前々日の、多摩川グラウンドだ。チームの全員が、そこで練習していた。カメラのシャッター音が鳴り響く中、私は真っ先に王さんの元へ向かった。王さんはニッコリ微笑むと、英語でこう言った。
「日本へようこそ」
それから私の腕を見て、言った。
「いやあ、君の腕はスト
ロングだねえ」
私はたちまち、王さんのことが大好きになった。
デービー・ジョンソン、
クライド・ライト、
レジー・スミス、
ジョン・シピン……私も含め巨人に来た外国人選手は、みんな王さんのことが好きだ。なぜなら彼はわれわれ外国人選手が心地よく日本でプレーできるよう、常に気を使ってくれるからだ。彼は外国人選手のメンタルも、考え方もよく知っている。われわれの心の機微も、理解してくれる。王さんのところに行けば、必ず助けてくれるのだ。
「クレージー・ライト」と呼ばれたクライド・ライトなんか、いつも王さんに「落ち着け」と言われていたらしい。私は毎朝、王さんと顔を合わせるたび、「おはよう、今日も元気?」と、確かめるように声を掛けてもらった。
『月刊ベースボールマガジン』2025年7月号より 写真=BBM 『ベースボールマガジン』10月号「1976-81江本孟紀と阪神タイガース」ご購入はコチラから