
選手たちと向き合い、監督としての「あり方」を示す/写真=BBM
「二軍でプレーするためにプロに入ったんじゃない」
昨年二軍監督に就任した
矢野燿大は、ファームの選手たちにそう語った。
監督は選手たちの可能性を広げてくことを一番に考えている。選手たちのポテンシャルを信じ、積極的なプレーを導き出す。そのために3つのテーマを掲げた。
『超積極的野球』
『諦めない』
『誰かを喜ばせる』
矢野監督の考えは勝つことよりも“育成”が先だった。勝つことを優先させると選手たちのパフォーマンスや成長の妨げになる。だからこそ、超積極的なプレーでの“失敗”は許すという育成法を取った。
「アウトになったことを次につなげる、準備力を高める。オレら(首脳陣)がそれを許さないと選手を押さえつけてしまう」と常にこの言葉を矢野監督は口にした。
同時に攻守交代では“全力疾走”を求め、三振やゲッツーを打ったときに落ち込んだまま守備に就くのではなく、気持ちを切り替え、“全力疾走”をすることで、スキのない選手を作り上げていくことを狙った。
本拠地で勝利試合終了後、ファンにあいさつをするときには、指名制で選手がマイクを持ちスピーチをすることも習慣づけた。
「選手自身が考えて話をすることで、お客さんも喜んでくれる。この経験で一軍を目指す力にも変わる」と矢野監督。選手たちもこれらを実行し成長させ、8年ぶりの優勝へと突き進んだ。
一軍監督に就任した今季、キャンプでは選手たちと積極的にコミュニケーションをとり、選手の「自主性」を重視した練習を行ってきた。
その意図を矢野監督は「プロとしてやる以上は『自分がどういうふうになりたいか』『どうありたいか』を考えたときに、自然と何をやるべきか見えてくるし、それが自主練習に現れていると思います」と語る。
選手個々がそれぞれの「あり方」を思い描いたとき、矢野監督率いる猛虎軍団は旋風を巻き起こす。